コンサート回想(3):休憩 ― 2009年12月11日 11時59分59秒
モテットが終わると、私はすぐ、ホールを飛び出しました。第140番のためのトークで聖書の朗読をしようと思い立ち、研究室に、取りに戻ったのです。カンタータ演奏はバッハの時代にも聖書の朗読に続いて行われたわけですが、140番の場合はマタイ福音書の「10人の乙女のたとえ」が密接に踏まえられていますので、読んでおくと、鑑賞の助けになります。時間の進行が思いの外速かったため、朗読が可能と判断しました。
ホールと研究室は、急いでも5分かかります。聖書を携えて戻ってゆくと、もう後半の開始直前。演奏者に声をかけることもできませんでしたが、モテットを終わって戻ってきた声楽の人たちがたいへん高揚していたという報告を、裏を取り仕切っている永田美穂さん(助手)から受け取りました。
で、聖書をもってステージへ。最近細かい字が見えませんので、メガネを外して朗読しました。しかし聖書を読み、情景を説明しなどしているうち、歴然と、ノリが出てきたのです。私は平素さまざまに配慮を巡らしながら取捨選択をしつつトークし、そのあげく大事なことを忘れてしまったりするのですが、まれに、そうした配慮が心を離れ、言葉に集中した状態になることがある。それがこのときに起こり、お客様の耳が全部こちらに来ている、という気配を感じました。前半の演奏に熱気があったために違いありません。私がコンサートの成功を確信する瞬間でした。
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