人を動かす本 ― 2009年12月22日 12時45分38秒
鶴我裕子さんと言えば、名エッセイストとして知られた、元N響ヴァイオリニスト。新装版のエッセイ集『バイオリニストは目が赤い』(新潮文庫)を手に取ってみましたが、抱腹絶倒のおもしろさです。同時に、音楽の世界、オーケストラの世界の裏側をたくさん覗くことができ、勉強になります。
面白いエッセイを書く条件は、どうやら、正直に書く、思い切って書く、ありのままの自分をさらけ出す、というあたりにありそう。鶴我さんの筆遣いは歯切れがよく天真爛漫、愛すべき女性の魅力がいっぱいです。ついいろいろなことに配慮して思い切りがにぶりがちな私としては、反省させられます。
オーケストラのヴァイオリニストというと華やかなようですが、大変なようですね。むずかしい曲の至難なパートを弾きっぱなしになることが多く、それを家で譜読みするのが、(音楽の全体がわからないだけに)難行苦行であるとか。本当にそうだろうなあと思いました。この本を読んだ人は、みなそのことをインプットしてコンサートを聴くようになります。それは、こういう面白い本に人を動かす力があることの証明ではないでしょうか。
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