久々のワーグナー講演(1) ― 2010年01月25日 22時10分44秒
24日(日)は、早稲田の東京国際大学のキャンパスで、日本ワーグナー協会と新国立劇場の共催による講演を行いました。新国立劇場が「トウキョウ・リング」と呼ばれる公演を行うに先立ち、《神々の黄昏》を勉強しておこう、という趣旨です。
ワーグナー協会からのオファーは、じつはあまり受けたくなく、お断りしたこともあります。それは、最近ワーグナーの勉強をちっともしていない私にとって、私よりずっと勉強しておられる先生方が何人もいらっしゃる協会での講演は荷が重く、気が引けるからなのです。それでも今回お引き受けしたのは、理事にしていただいているのにまったくお役に立たないわけにはいかないという事情と、「入門講座」という割り切った目的設定のためでした。3回ある講座の第1回を、私が担当するのです。
持ち時間90分といえば、授業1回分。概要とあらすじを話すだけで、終わってしまいそう。それだけではいけないので、自分ならではの話題も用意しなくてはなりませんが、この時間ではできなくても仕方がない、なにしろ「入門」なんだから、ととらえることにしました。
「あらすじ」はずっと昔書いたものがあったので、それを配布して読み合わせることに決定。使えるかどうか読んでみると、これがなかなか、できあがった文章なのです。「バイロイト百年」というレコードのために書いたものなので、1976年ですから、私はドクターコースの学生。当時に比べれば文章は大いに上達したつもりでいましたが、今書けるいちばんいい文章と比べても五分五分ではないか、と思うほど。結局水準は昔と同じで、進歩していない、ということなんでしょうか。
入門だからわかりやすい話ができれば、という一念で準備していると、電話あり。なんと、協会大幹部の高辻知義先生からで、「楽しみにしていたが、仕事がはいって」という丁寧なお断りです。私は驚いて、「先生、入門講座なんですから、先生のご存じないことなどひとつも申し上げませんよ」と答えました。この調子では誰が聞きに来るかわかったものではない、と、にわかに不安になってきました。
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