名作は時代を超えて2010年06月21日 11時36分18秒

名作。それは人々に記憶され、長く、心に住みつきます。私は、そうした名作の研究と紹介に、人生を捧げてきました。そうしたら、なんと、私の書いたものが、(たのもーさんによれば)人の心に住みついたというではありませんか。そう、フランクフルト駅、931番のコインロッカーをめぐるお話です。

開かないコインロッカーの前で立ち尽くした血の凍るような感覚は、いまでも私の心に、生き生きとよみがえってきます。目的地は、バッハの国際学会。私の人生を左右するような分かれ道でした。その深刻きわまる体験を、当時の私は、かつてのホームページに連載したのです。

反響は、かつてないものでした。次々と寄せられる反応に接して、私は、人間とは何かに関する理解を、格段に深めました。それでどうしたんだ、早く次を書け、という大合唱。その中に、「でも帰国しているんだから、何とかなったんじゃないの?」というメッセージがありました。もちろん、その言葉に込められた真意は、私に伝わっています。コインロッカーが開かないことをこれだけ喜んでいただければ、私も本望です。その味は、「蜜の味」であったにちがいありません。

たのもーさんのように、コインロッカーの番号まで覚えてくださっている方もいらっしゃる。ありがたいことです。性善説の人であればここでショックを受けるのかもしれませんが、私は幸い性悪説なので、励みになりました。あと何年生きられるかわかりませんが、皆さんに楽しんでいただける人生を送りたいと思います。

最後に。東京駅の荷物は、日曜日の夕方、百円玉を12枚入れて取り出してきました。すぐ開きましたよ。

コメント

_ N市のN ― 2010年06月23日 09時24分29秒

名作は読まれ続けなければなりません。
是非とも再掲載、お願いしますm(__)m

_ Clara ― 2010年06月23日 11時12分28秒

名作は大抵ハッピーエンドです。だから安心して何度でも読めるのです。先生の「名作」も、多分ハッピーエンドであろう事を信じて、是非、未読の者にもご紹介いただきたいと切望します。
かく言う私は、アンネ・フランクが日記の最後の方で、人間の善意というものを信じると書いていることに、胸を打たれ、性善説を採りたいと思いながら、実際には、性悪説かもしれません。
「蜜の味」は嫌いではありませんし、いずれ自分も他人様に返せるであろうことを想像しつつ。(性悪説の方へのコメントは難しいですね)

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