ロビンソン・クルーソー2011年07月25日 23時10分47秒

新しい本ばかりでなく、ずっと昔、若い頃に読んだ本を、少しずつ再読してみたい、と思うようになりました。そこでまず選んだのが、デフォーの『ロビンソン・クルーソー』。この本には、少年時代に熱中しました。無人島に暮らしたい、と本気で思い、父に一笑に付されていたことを思い出します。もちろん今では、無人島生活にもっとも不向きな人間であることを自覚しています。

再読してやはり面白く、しかし面白がり方が全然違うことを実感しました。この小説、冒険の1つ1つは要するに表面で、真髄は、18世紀の西洋文明とキリスト教文化に対する、徹底した検証にあるのですね。1から独力で築きあげる生活、原住民フライデーの教育といった設定ほど、当然と思い込んでいることを根本的に問い直すのに適したものはありません。神の摂理とはどういうものか、聖書のこの言葉はどういう意味かといった、事実上の神学的議論も随所に綴られていて、読みがいがあります。

こういう発想を、本当の意味で「啓蒙」というのだなあと思います。現代の多文化主義の先取りも、しっかり行われている。鈴木建三さんの翻訳(集英社文庫)がすごく、日本語プロパーの語彙が自在に駆使されて、翻訳とは思えません。こうした名著の再読を、ときどきやっていきたいと思います。