ドイツ旅行記(4)--2つのコンサート2012年06月20日 23時00分58秒

ライプツィヒ・バッハ祭6月9日のハイライトは、聖ニコライ教会で20:00から始まるコンサートでした。ニコライ教会は《ヨハネ受難曲》を初演したところで、バッハのカンタータ演奏においてはトーマス教会以上の重要性をもっていた教会です。


コープマンの出演が人気を呼び、チケットは発売と同時に売り切れたそうですが、私は、一抹の不安を感じていました。コープマンはいま一番活躍しているバッハ演奏家ですが、とにかく出来不出来がある。私が日本で聴いたコンサートは、あいにく全部不出来でした。優秀なオーケストラと合唱団を擁していますから、鍵盤のソロはともかく、指揮ならばそうなるはずはないのですが。

しかしこの日は、登場から闘志満々。さすがハイレベルの、生気にあふれた演奏でした。曲目は管弦楽組曲第1番ハ長調、カンタータの第51番、第199番、第202番というものでした。えっ、ソプラノのソロ・カンタータが3曲?と思われますよね。その通りで、3つの難曲をすべて、ドイツのソプラノ、ドロテー・ミールツが歌ったのです。若々しい魅力的な女性で、歌唱も輝きにあふれて完璧。こうしたプログラムで起用されるだけのことはあります。51番のトランペットも、たいしたもの。沸きに沸く会場をあとに、終電車でドレスデンに帰還。

翌10日は日曜日。午前中にゼンパー・オーパーで、ドレスデン・シュターツカペレのコンサートが組まれていました。大統領(←ドイツでは儀礼的な役割のために存在している)の主宰するチャリティで、国歌の吹奏、大統領とザクセン州知事のスピーチのある、晴れがましいコンサートです。曲目はブルックナーの第8交響曲で、指揮はクリスティアン・ティーレマン。じつに幸運なタイミングで、このコンサートに飛び込めました。


壮麗な演奏でしたね。ホルン、ワーグナー・チューバ、トロンボーンなど金管陣の厚みはすばらしく、ブルックナー・サウンドがホールを包んで圧巻。最後、各楽章の主題が同時的に結合されるクライマックスが訪れますよね。響き終わったあと、私は大きな拍手とブラボーの嵐が来ると思っていました。

ところが、演奏の余韻を噛みしめる静寂が、私の感覚では15秒ほど、訪れたのです。さすが熟した聴衆と、私は本当に感心しました。taiseiさんがヴィンシャーマンのコンサートに対して同じ感想を書かれていますが、やはりコンサートはこうあるべきいう確信を新たにしました。すぐ拍手したのではその時点で日常に戻ってしまいますが、余韻を楽しむ時間をもつことにより、すばらしい演奏を聴いた体験を、心に深く刻むことができるのです。皆さん、ぜひそうしていきませんか。

コメント

_ ルビー ― 2012年06月21日 23時57分50秒

数年前のコープマン来日コンサート、気になりながらも聴きに行けなかったのが心残りでしたが、つい最近、バッハの管組全曲CDをたまたまついで買い‥近代的で優秀なセンスのイメージ。その同じ時に、フルトヴェングラーのバッハ・アルバムも見つけてしまい‥ブランデンブルク協5番では自らピアノも弾いていて、古い録音を超えて、すべてがグッとくる音の連なりのバッハでした。やっぱり好き!

この間サントリーで、ヒラリーのメンコンとバッハ・アンコールを聴いた後のプログラムが、やはりブルックナーの8番。パーヴォ・ヤルヴィ率いるフランクフルトの楽団で、胸深くまで強烈に響く華麗なサウンド…終わったと慎重にキャッチするや否や、ワォーッと拍手の大嵐でした!

ところで今朝は、ラジオのオルガン特集最終回。ヴィヴァルディやマルチェッロの華やかで立体感に満ちた編曲宇宙は驚きでした。多様な魅力のご紹介シリーズ、ありがとうございました。

ドイツ旅行記を読んでいると、先生の背後霊みたいになって自分もその場に居る気分…キモ~イなんておっしゃらず、ジャンジャン続けて続けて!

空想旅行のルビー

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