オチが淡泊と思ったら・・2013年02月16日 08時11分39秒

平素、読み物はほとんど文庫本を買っている私ですが、宮崎旅行にあたっては読む時間が多くなると考え、分厚い単行本を買いました。久しぶりに宮部みゆきで、『ソロモンの偽証』です。タイトルに惹かれた面が多分にありますが、自分が女性作家ばかり読んでいることに、自分で驚きます。

ディテールが愛嬌豊かにふくらんでいくのが宮部さんの特徴。それは出来事のめぐりを遅くする場合があり、今回も最初、その感なしとしませんでした。しかしひととおり布石を打ち終わって、それらが、すなわち一連の登場人物かみ合って回転し始めると、怒濤のような迫力。舞台が学校で感情移入しやすいということもあり、文字通り、読みふけってしまいました。

741ページもある大著。謎が次々に解き明かされるのを期待して最後を読みましたが、案外淡泊です。あのことはどうなったんだ、この人のことは書いていないな、などと、思いが残ってしまう。でも全部説明しないでそれを読者の心の中に残しておくのもスマートなのかな、と思ってふと気がつくと、「第一部 事件」となっているではありませんか!空恐ろしいほどの大きな構想があるようです。次が待ち遠しい。

コメント

_ T.K. ― 2013年02月16日 12時23分17秒

文庫といえば、こんな書き込みをすると「今さら何を」「当たり前じゃないか」と、このブログの読者の方には思われてしまうでしょうが、先日疲れた頭に活力と休息を与えたくて何気なく?手に取ったのが、師の「バロック音楽名曲鑑賞事典」(講談社学術文庫)でした。

20年余りの長きの間、音楽そのものと音楽書から離れてしまっていた私には‘浦島太郎的な’見当外れの意見と思われるでしょうが、この文庫はもっと沢山の人に読まれるべきだと思いました。
逆に言わせてもらうと、私が20年余り音楽と離れていたからからこそ、見えてくるものや理解できることがあります。
師の音楽に伴う言葉の造詣の深さを思い知らされる結果になりました。この間の音楽ソフトの発達により、音楽のビジュアル的な情報が解説に加えられたことも見逃せません。

さらに言わせてもらえば、この学術文庫は、言うまでもなく、単なる「名曲鑑賞事典」ではなく、立派な音楽史の本であるということです。1曲ごとの解説文をつなぐ確かな流れが(あえて通奏低音のようなと形容させてもらいますが)この‘事典’にはあります。
私の古びた棚にあるCDは、この本の解説文を読むことによって、また光が与えられたような気がします。そして、言葉を勉強することによって、音楽の核心にもっと近づけるのだということを知らされました。

こういう文庫を著わされたI教授には、あらためて御礼を申し上げたいと思います。20数年の時を経て、こうした刺激を与えて下さるのは、さすがにI教授だなと感じた次第です。ありがとうございました。

_ I招聘教授 ― 2013年02月17日 08時19分25秒

T.K.さん、励ましのお言葉ありがとうございます。まさに、書いてくださっていることを目標としました。こういう本は、本当はこまめに改訂して新録音を取り入れなくてはいけないのですが、斯界の事情もあり、なかなかそういかないのが残念です。

_ ルビー ― 2013年02月20日 02時13分28秒

お話の名曲鑑賞事典…ここ談話室でのふとしたお喋りがキッカケで最近やっと手にし、とても重宝しています。載っていない曲にまで大いに参考になる広がりがあり、感激します。例えば・・・
気分で新しく聴いてみたフックスのレクイエム…このCDには他に、ヴァイオリンソナタやオルガン曲なども色々と入っていて、そのどれもが、洗練された対位法の線が際立ち情緒にも豊かに訴えかけてきて快いのです。事典にはどれも登場しないのですが、唯一ご紹介のオラトリオ《癒やしの泉》の頁を読んでみました。フックスが対位法の理論書も物するような名匠だとわかり納得。しかも私が聴いていたCDは正に、頁に補記されているクレマンシック・コンソートの『皇帝レクイエム』そのものでした!
確か、たまたま雪の日に激安ワゴンで衝動買いした中の1枚、また雪で思い出しました(笑)。

音大時代、先生が授業で語られる選び抜かれた一語一語には、正確さにプラス豊かな実感がこもっていて、心が生き生きとしてくる共感に満ちたお気に入りの教室でした。あんなに若くして人の心理にも通じ人生経験豊富に思えたのは不思議でしたが・・・ここでよく話されるように、小説などの読書量も莫大だからなのかな。。。
国立音大ですばらしいI先生に出会えた偶然はほんとうにラッキーな幸せで、特に悩み多き青春の心は日々救われていました(笑)。つくづく神様に護られているのを感じます!

広く浅くのルビー

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