これぞミュンヘン!2013年04月19日 09時45分06秒

18日(木)。早朝に起き、まず原稿の仕上げ。バッハのチェンバロ協奏曲ニ短調の国内盤楽譜が出るので、その解説に、かなりの時間を費やしました。

原稿を送り、芸大の授業準備に入った10:11に、元同僚の知人からメール。土曜日の「たのくら」に欠席するという連絡の終わりに、「今夜はミュンヘン・フィルに行きます」と書いてあります。えっ、ミュンヘン・フィル?!

思い出しました。2月に朝日新聞社で講演したご褒美に、チケットをいただいていたのです。2枚いただいたので、1枚をお世話になった方々の抽選に委ね、開演前にサントリーホールの入り口でお渡しすることになっていました。それをすっかり忘れ、夜は打ち合わせで、NHKに行く予定になっていたのです。急いで連絡し、NHKの方にはコンサートの終わる21:00に、サントリーホールに来ていただくことにしました。

分刻みで準備して飛び出し、授業。それから本郷のアカデミアに回って、支払いと資料購入。重い荷物でサントリーホールに着いたときにはもうへとへと。というわけで、マゼール指揮、ミュンヘン・フィルの感想は、アンコールに絞らせていただきます。

ブルックナー第3が終わると、ただでさえ大編成のステージに、ぞろぞろと奏者が入ってきました。これは《マイスタージンガー》をやるのではないか、と思い、もう20分もお待たせているNHKの方に手を合わせつつ、座席で待ちます。果たして《マイスタージンガー》の前奏曲が、ひときわ荘厳なテンポで始まりました。

でも何か、普通と違う。あれっ、どうしたの、と思うところが随所にあります。しばし首をかしげましたが、まもなく納得。「皆さん、思い切り遊んでください、無礼講です」という指示が出ているようなのです(私の想像です)。ピシリと合わせる棒を振ってきたマゼール氏がいまやそうした度量を身につけたのか、前任者ティーレマンからの引き継ぎなのか、楽員の希望なのか、詳しいことは存じませんが、どのパートも規制を外してエンジン全開、音響のるつぼとなり、思いがけぬ対旋律や内声が表に出てきてびっくりする、という状況になったのでした。パートやセクションの中での打ち合わせもあるらしく、木管がめくばせしながら踊るように合奏したり、コントラバスがしばらく主役を張ったり、という乱闘劇(←第2幕にある)。前奏曲のスコアがきわめて対位法的だということが、逆説的によくわかる進行です。

こういう演奏をプログラム内でやることは考えられないし、アンコールだから、それも日本公演の最後だからということで解放されたアイデアでしょう。でも、じつに面白かった。作品の本質でもある豪快な祝典性が、ホールを圧するようにあらわれていたからです。これぞ、ミュンヘン!東京春祭の《マイスタージンガー》も良かったけど、オーケストラにこの祝典性はありませんでした。ミュンヘン気質とは何か、と問われれば、《マイスタジンガー》と答える、というところです(注:初演以来この作品が本当に愛されていて、われらが音楽、になっています)。お待たせすること40分。ご迷惑をおかけしました。

コメント

_ ルビー ― 2013年04月23日 05時43分06秒

読むだけでも面白いお宝アンコール・ショーのお話をありがとうございました。《マイスタージンガー》と言えばニュルンベルクの街の雰囲気が彷彿としてしまいますが(昔お散歩の間中、心の中はあの華やかな前奏曲がいっぱいに鳴り響いていました)、ミュンヘン気質と縁が深いのですね。。。
一番聴きたかったのがヴァイオリン協奏曲もある17日で、早々と完売なのが悔しくてその日、話題のフェニーチェ歌劇場の《オテロ》を観に行ってしまいました(笑)!
チョン・ミョンフンの指揮が超ドラマチックで歌唱も素晴らしい迫力、趣深いオケの響きに華美でロマンチックな舞台美術・・・その周りがオーチャードでなくてフェニーチェ劇場の内装なら完璧な気分なのに…と、ゴンドラとヴェネツィアの街並みを思い浮かべながら思ってしまいました。

18日はお仕事筋で、マニュエル・ルグリ率いる斬新なバレエを観ました。
東京春祭で唯一観たのは、14日のストラヴィンスキー・バレエ特集。珍しく生オケの《春の祭典》と、長岡京室内アンサンブル奏する《ミューズを率いるアポロ》で、いつもより贅沢感を味わえるステージでした。

昨夜聴いたルノー・カプソンのヴァイオリンリサイタルは、若い俊英ピアニストと共に、至高の宝石の輝き。。。観客も音楽を生ききっていました。

古楽の楽しみ前のルビー

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