《第九》のあと2013年11月19日 07時23分54秒

サントリーホールにおけるウィーン・フィルのベートーヴェン・チクルス。私は、最後の《第九》(+《第八》)だけ顔を出しました。

入場券といっしょにいただいたのが、フェアウェル・パーティのご案内。さて、と考え込みました。翌日の準備など、その夜、やらなくてはならないことがたくさんあったからです。帰り際まで迷っていましたが、立場上ここは出るべきだと決心し、会場のブルーローズへ。

このパーティ、通し券を買うと招待されることになっていたそうですね。全シンフォニーとコンチェルトを聴かれた方が、100人以上いるとか。さすがです。総力を挙げた大演奏のあとですので、出演者、関係者で満員の会場にも熱気がありました。いちばんトーンの高かったのが通訳の方です(笑)。

ウィーンの伝統は確固として健在だ、と痛感したのは、アトラクションで披露された弦楽四重奏(チェロではなくコントラバス)。ひときわ若いコントラバス奏者がじつに音楽的で、上声部に寄り添うように、響きを取りにいく。完璧にアンサンブル優先、ウィーンの香りを花開かせるための駒になっているのです。なるほど、こうした献身の総和として、ウィーン・フィルがあるわけですね。

公演で最大の拍手を集めたのは、2回のステージのためだけに来日した楽友協会合唱団(ヴィーナー・ジングフェライン)でした。アマチュアを標榜する彼らですが、存在感と芸術性は並々でなく、響きが、ウィーン・フィルと完全に融合している。彼らも、名伯楽プリンツさんの指揮で、楽しいアトラクションを聴かせてくれました。

合唱団の東京公演は三十数年ぶりというのを聴いて、心ひそかに満足。というのは、いずみホールで今世紀、すでに2回彼らを招聘していたからです。大阪大好き、また絶対行きたい、と、団員の方々。いろいろな方とお話しするうち、大阪のウィーン音楽祭がなくなって一番残念がっているのは、ウィーンの人たちなのではないかとさえ思えてきました。いい形でウィーン・サウンドを聴いていただける工夫ができないかどうか、将来に向けて検討を始めたところです。