居眠り2013年10月03日 10時39分27秒

昨日、朝日カルチャーの10時からの講義に、15分遅刻しました。いつもより1台前の中央線に乗っていたのですが、うっかり居眠りして、お茶の水まで行ってしまったのです。さすがに、お茶の水から戻ってきたのでは間に合いません。

こんな時には、なんとか取り戻そうと思って二倍気合いを入れてがんばります。でもそれがいい結果を収めるかどうかはわかりません。ゆとりがなくなりますから、おそらくは逆効果です。負い目は、やはりない方がいいのです。

しかし、帰りならともかく、行きに寝過ごすというのは初めてのことで、暗澹としました。言い訳ではありませんが、このところたいへんなスケジュールになり、相当無理をしていたのです。でも年齢も年齢ですから、無理をしても、いいことはないですよね。ほどほどに、ゆとりをもってやらせていただくにはどうしたらいいか、何を優先すべきか、仕事が手に着かない状況の中で考えているところです。

この話はつなぎです。次は、月曜日からの「古楽の楽しみ」についてご案内します。バッハの無伴奏チェロ組曲の特集ですので。

今月の「古楽の楽しみ」2013年10月04日 18時47分13秒

バッハの無伴奏チェロ組曲をリレー演奏で取り上げるにあたり、モダン・チェロ、バロック・チェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラに、メインを振り分けました。そこに聴き比べを入れていくのですが、第5番、第6番は1日1曲でしたので、潤沢に比較することができました。

7日(月)は、第1番全曲がケラス(モダン)。プレリュードを、フルニエ、ビルスマ(旧録音)と比較します。第2番は全曲が鈴木秀美(バロック)、プレリュードの比較がマイスキー(モダン)です。

8日(火)は、第3番全曲をヨー・ヨー・マ(モダン)で、第4番全曲を寺神戸亮(スパッラ)で聴きます。少ない残り時間で、第4番のサラバンドを、ロストロポーヴィチの若い頃のライヴで比較します。

9日(水)は第5番。ビルスマがモダン仕様のチェロを弾いた再録音をメインに使いました。第5番の場合、バッハの楽譜をきちんと弾くためには高音弦をスコルダトゥーラすることが欠かせません。そうなると、ほとんどのモダン演奏は採用できず、比較はウィスペルウェイ(ヴェルサイユ・ピッチ使用)、リンドベルイ(リュート編曲)、ディールティエンスのリレーで全曲という形になりました。ディールティエンスを使ったのは、サラバンドのアーティキュレーションが独特で、なるほどそれもありかな、と思ったからです。

10日(木)の第6番は、時間の調整に苦労しました。結果として、全曲演奏はクイケン(スパッラ)、比較のプレリュードがコセ(五弦のバロック・チェロ)、サラバンドがリプキン(モダン)、ガヴォットとジーグがガイヤール(五弦のバロック)となりました。ものすごく多様で、お好みも分かれそうです。どうぞお楽しみください。

存在感2013年10月09日 09時13分43秒

野球のシーズンが終わりました。発足当時は「何この制度?」という声もあったクライマックス・シリーズがすっかり定着し、三位争いの白熱を楽しむことができました。

なにしろ、私の応援しているチームが両方とも三位。とくに連勝で追い込んだ西武ライオンズの戦いぶりはたいしたものでした。「戦力豊富」と言われていますが、中島がメジャーに行き、中村が負傷して始まったのだから、若手の成長はたいしたものです。中島がいたら、ショート鬼崎の活躍はなかったでしょうし。

球場に行っていたらもちろんでしょうが、テレビのディスプレイでも、吸い寄せられるように見てしまう選手っていますよね。楽天のジョーンズって、すごくないですか。めったに打たないのだが、いかにも打ちそう。群を抜いた迫力を発散しています。いわゆる存在感ですね。それがどうやって作られるのか、興味があります。一番大きいのは自信でしょうが、それだけではないですよね。

存在感は、音楽の世界でも大きな役割を発揮します。ある方が絶対有利で、存在感のあるアーチストには、聴衆/観客が集中して耳/目を傾ける。しかしその養成講座がないのは、作ろうとして作れるものではないからでしょう。でも、もう少し、研究されてもいいテーマだと思います。

昔ミュンヘンにいたとき、何度も《ニュルンベルクのマイスタージンガー》を観ました。不思議だなあと思っていたのは、12人登場するマイスタージンガーの主役が、一目で見分けられることでした。ベックメッサー役のヘルマン・プライ、ザックス役のベルント・ヴァイクル、この二人に目が吸い寄せられてしまうのです。ステージでは、つねに起こることだと思います。

密度高い流行歌史2013年10月12日 10時13分00秒

私がプロデュースするコンサートでもっともお客様が涙を流される確率の高いもの。それは流行歌のコンサートです。いま一本企画しているので、勉強のため塩澤実信著『昭和の流行歌物語』(展望社)という本を読みました。とてもいい本でした。

年を追い、はやった歌を歌詞を添えて紹介しながら、その変化を世相をからめて展望していくという、正統的な音楽文化史のスタイルです。記述に無駄がなく、多くの情報が整理して盛り込まれていて、とても読みやすい。いかなる歌か、いかなる歌唱かはほとんど1つの形容詞で語られるのですが、その選択が正鵠を射ていて、しかも潤いに満ちているのです。ひとつの、みごとな昭和史です。

著者の力量をひしひしと感じ、読後リサーチしてみると、出版界の大御所、長野県出身でいらっしゃるのですね。たいへん勉強させていただきました。

古い流行歌・歌謡曲はたくさん知っているつもりでしたが、知らない大事な歌がどれぐらいあるか、またそれらがいかに忘れられてしまったか、ということもよくわかりました。私が好きな昭和20年代の歌謡曲も、今の若い人が聴けば、古色蒼然に響くのでしょうね。

私がクラシックの人間だからでしょうか、古い歌が音楽的にしっかりしていること、それを歌う歌手の力量の高さに驚くことしきりです。たとえば近江俊郎の音量を控え、レガートで繊細に歌うテノールを聴くと、ジーリやスキーパとのつながりを感じるほどです。

やはりオリジナルがいいという思いから、ネットに乗っているSPの復刻を深夜聴いていますが、どうしても涙が流れるという心理は何でしょう。クラシックの分野に関しては「昔懐かし」という感情が起こらない私なのに流行歌で完全にそうなるというのは、やはりこの分野が、時間の詠嘆に根ざしているからかもしれません。

よきかな、CS2013年10月16日 01時10分59秒

更新が間遠になっているせいか、「ブログをおやめになったそうですね」と言われてしまいました。すみません。

ここで忙しい、などと書いても無粋なだけなのですが、知っておいていただけるとありがたい、という状況もあり、つい書いてしまいます。「イベント」欄に発表していることのほかに当然ながら原稿もたまっており、正直、寸暇もない状況です。今日は朝早く起きたものの疲れていてどうしても書けず、帰宅後倒れるように寝て、さきほど起き出したところです。折しもの台風で、明日の午前中が休講となり、一息つきました。たいへんな思いをされている方、申し訳ありません。

ここ数日間に、いろいろありました。やはり、広島カープのファースト・ステージ突破が、いい試合だったらしいだけに、嬉しいですね。広島ファンはたいへん盛り上がっていますが、CSという制度はおかしいのではないか、という声も上がっています。私へのメールに書いてくる方もあれば、毎日新聞の投書欄で主張する方もある。きっと巨人ファンの方々ではないかと思うのですが、違うでしょうか。巨人がCS争いをしていても同じことを言われるかどうか、観察したいと思います。

反面、西武が残念でした。勢いだけでは、試合は勝てないということですね。ロッテも嫌いなチームではないので、がんばってほしいと思います。

スケジュールの調整、心がけます。「故人は過労であられたようです」などと言われてはいけませんので。

難産でした2013年10月18日 12時27分39秒

十日ぶりの在宅日で、睡眠を取り、久しぶりに快調です。しばらくまた、話題を提供してまいります。野球?今テレビで、レッドソックス対タイガースをやっています。

どんな仕事にも責任は伴いますが、とりわけ重く感じて焦燥感の出る仕事があります。直近では、日経新聞からご依頼を賜った「日曜随想」が、それに当たっていました。

なかなかアイデアが生まれません。ご依頼くださった編集委員の方と以前三島由紀夫について論じ合ったことがあり、ひと頃の熱中が自分にどんな影響を及ぼしたかを骨格に据えようと思い立ちました。

結局、自分の中にある価値観の変遷を回顧する文章にしたのですが、第1稿は、まるで美学の論文(笑)。なんとか流れのあるものにしようと心がけ、まあまあの出来になりました。27日に掲載されます。

これを乗り切ったことで、気持ちが前向きになりました。今日は遅れている仕事を仕上げ、明日の講演を準備し、いくつかの雑事をこなします。将棋の竜王戦もウォッチ中。森内名人を応援しています。

迷走中2013年10月19日 10時24分55秒

森内名人、渡辺竜王に先勝しましたね。いま一番強い棋士だと思うので、マスコミにももっと注目して欲しいです。すばらしい大局観で、奥の深い将棋を指されます。

え、野球はどうしたって?あの、その・・・ロッテも好きなチームですが、日本シリーズに必ず勝つという意味では、やはり田中のいる楽天に出て欲しいですね。田中、則本で最低3勝し、ジョーンズが爆発すれば、もしかすると・・・(悲観的)。

元気を取り戻して仕事にかかっていますが、じつは片付いてTo Doから抹消されるものより、入ってきて書き足されるものの方が多いのです。絞ろう!と思ってはいますが、多方面にお世話になってきて今日あることを考えると、この仕事を断る選択肢は自分にはない、という局面が結構あります。とくに、研究方面においてです。

定年後は対象を絞り、その代わり1つ1つちゃんとやっていく、という原則を立てて、ここでもそう宣言しました。ところが、最近の流れを見ると、より広い対象に対する仕事、ちゃんとやろうとするときりがない、という仕事が入ってくるようになっているのです。演劇めぐりも、その一つです。

木曜日に、私はある立派な建物の中で、錚々たる顔ぶれの方々による会議に出席していました。こういうときすぐ小さくなってしまうのは、自分が相当歳を取っていることを忘れてしまうからですね。歳はいい勝負なのです(笑)。

ほとんどの出席者がしっかりしたご意見をおっしゃる中で私が何も述べられず、ますます小さくなっていたのは、初出席であるという以上に、その論題が、クラシック音楽ではなかったから(汗)。しっかり勉強しなければ、と思って帰路につきましたが、どのぐらいの時間をいつ見つけたらいいのか、困ってしまいます。

今日は越谷のサンシティ合唱団で、《ロ短調ミサ曲》のレクチャーをします。1回で大事なことをすべて話せるように準備しましたが、うまくいきますかどうか。

アマチュアとプロ2013年10月21日 22時21分31秒

19日(土)は越谷で、合唱団の方々を相手に、《ロ短調ミサ曲》のレクチャーをしました。短い時間に話を集約しきれなかった経験を踏まえて、「演奏で心得るべき十箇条」という形に整理していったのですが、それでもやはり内容が多すぎ、すごい早口でお話ししても何項目かカット、ということになってしまいました。次は「五箇条」にして、実例も減らし、その代わり、ていねいにお話しするようにしなくては。またまた、課題が先送りになってしまいました。

にもかかわらず熱心に聞いていただき、ありがたかったです。最後に、優秀とお見受けする若い指揮者の方から、「こういう難曲にアマチュアが取り組むことについて、エールを送ってください」というお申し出がありました。

私がお話したのは、アマチュアに恵まれているのは時間である。長い時間をかけて、さまざまに勉強しながら、作品に取り組むことができる。それによって名曲のすばらしさにどれほど深く入り込めるか計り知れない、ということでした。演奏をしてみてわかる作品の良さというのは、ひじょうに大きい。多くの方が合唱を通じて《ロ短調ミサ曲》に分け入っているなんて、すばらしいことだと思います。

蛇足ですが、アマチュアの方々には、プロに対する尊敬を忘れないでほしい、とも言わせてください。理由は2つ。1つは言うまでもないことですが、演奏家は高度な技術の修練に一生を費やすわけで、それがあって初めて音楽の世界は回っているのだということ。もう1つは、プロの演奏家はステージに乗ったら逃げの利かない音楽の厳しさを知っており、自己批判を欠かさず音楽に向かっている、ということです。この第2点がきわめて重要であると、私は思っています。

もっと本当なのは、音楽の前にはプロもアマも違いはない、ということではないでしょうか。私がコンサートに行くとき、今日はアマチュアの演奏だから寛容モードに切り替えて聴こう、などということはあり得ないし、できないことです。生み出される音楽を同じように聴き、感動したり、感心したり、失望したり、腹を立てたりします。演奏が寛容モードを求めているのに対応できないときには、自分が冷たいように思われて後味が悪くなります。バッハでは、まま起こることです。

PET初体験2013年10月23日 13時30分51秒

PETを初体験しました。あ、ご主人様に飼われる体験ではないですよ。最先端の技術による、CTがんドック(「陽電子放射断層撮影)です。オープン後間もない新百合ヶ丘総合病院で受けました。

朝早く起きて、朝食。6時間、検査まで空ける必要があるからです。病院ではまず、水を500cc飲む。身長・体重の測定、血糖値の検査、問診などあってから、薬の注射。それが全身にまわるまで、90分待ちます。

「考え事をするとよく映らないので、なるべくものを考えないでください」と言われてびっくり。本を読んだりせず安静に、と注意書きにありましたが、ものを考えないというのはむずかしいですね。ともあれおとなしく過ごし、あとは25分、CTの中に入りました。呼吸を止めたりする必要もなく、スムーズに進行する検査でした。合計、2時間半です。

病院のサービスは行き届いていて、なんと終了後、食堂で使える食事券をもらいました。きっとおいしいのでしょうが、とりあえず温存して、駅前で昼食。3週間後に結果が送られてくるそうです。75,000円で広くチェックできるのですから、とても合理的なシステムだと思います。さて、どうなりますやら。

練習は嘘をつかない2013年10月25日 13時50分11秒

マレイ・ペライアのすばらしいコンサート(批評を出します)から帰り、プロ野球ドラフトの結果を知りました。ドラフトで一番大事なことは巨人がいい選手をとれないことだと思っていますので、パ・リーグにたくさんいい選手が入り、広島にもいい選手が入った今年は、大満足です。

でも一位が活躍するとはかぎりませんよね。ヤクルトの小川も楽天の則本も、二位の成功例です。伸びる、頭角を現すというのは、どんな条件によるのか。人との出会いとか故障など運の要素も多分にあるでしょうが、それも込みで、その人のやり方と考えるべきではないかと思います。

定年になってから、若い人の勉強の仕方などを、以前より広い立場で見るようになりました。研究の場合でしたら間違いなく言えるのは、たくさん勉強した人が勝つ、という法則です。野球で「練習は嘘をつかない」というのと同じでしょうか。

勉強の量はかける時間と相関しますが、短い時間にたくさん勉強できる人は、掛け算で量が増えていきます。それは能力だとも言えますが、その前に、集中力と考えるべきでしょう。集中力は、意志や責任感とかかわり、対象への意欲とかかわります。面白いと思えることをやっていれば、意欲は大きく高まるわけです。

卒論・修論を必ず成功させる秘訣は読む人に「よく勉強した」と思わせることだ、といつも申し上げていますが、それは上記のような意味で、勉強の量とかかわります。量を増やす、いろいろな方法があることでしょう。