今月の「古楽の楽しみ」~ケーテン侯葬送音楽(2)2015年10月16日 08時10分44秒

葬送音楽は4つの部分に分かれ、第1部が合唱2、アリア2、レチタティーヴォ3。第2部は合唱1、アリア2、レチタティーヴォ3(ただし合唱曲は最後にも歌われる)。第3部はアリア3とレチタティーヴォ2。第4部が合唱1、アリア2、レチタティーヴォ2という構成になっています。このうち第1部の合唱2曲が選帝侯妃追悼カンタータ(198番)から、アリアはすべて《マタイ受難曲》からのパロディというのが通説で、第2部の詩篇合唱曲のみ、定説がありませんでした。

これがフーガ様式の合唱曲であることは予想されますので、ピションの研究チームは、ここに《ロ短調ミサ曲》の第2キリエ(!)を割り当てました(先行したパロットの復元では198番の第7曲)。適否は軽々しく言えませんが、印象としては、唐突の感があります。《ロ短調ミサ曲》がパロディなら知られざるルーツを突き止めたい、という思い入れが入りこんだ感じを抱きます。

おなじみの曲が次々と出てくるさまに接すると、バッハは領主の追悼音楽を既作品で間に合わせたのか、という疑念が、かならず出てくるはずです。しかし、そうではありません。なぜなら、個別作品にはほとんど触れていない『故人略伝』の伝記部分がわざわざこの追悼音楽に触れ、「バッハは、かくも懇ろな寵愛を賜った主君のために、ライプツィヒから葬送音楽を作曲し、それをみずからケーテンで演奏することで、悲しい満足を味わった」と述べているからです。

したがって、バッハがこの作品をきわめて重視したことは明らかです。それを《マタイ》と選帝侯妃追悼カンタータからのパロディで構成したのは、亡き主君に自分の最高の音楽を捧げようと思ったからに違いないでしょう。

楽譜が残っていたらと、惜しまれます。新作されたレチタティーヴォの力によって、そのことがひしひしと感じられるような曲になっていたと思われるからです。《クリスマス・オラトリオ》が成功しているのは、パロディをつなぐレチタティーヴォやコラールが新作され、クリスマスの気分を新鮮に作り出しているからです。しかしピションの復元はレチタティーヴォも《マタイ》を下敷きにして作っているので、「もってきた」感がぬぐえません。レチタティーヴォの重要性が、あらためて実感されます。

ともあれ、音になったひとつの研究成果をお楽しみください。

今月の「古楽の楽しみ」~ケーテン侯葬送音楽2015年10月13日 08時13分11秒

ラファエル・ピションによるバッハ《ケーテン侯のための葬送音楽》BWV244aのCDを入手し、興味を惹かれたので、「古楽の楽しみ」で取り上げることにしました。4つの部分に分かれていて、各20分弱。そこで月曜日(10月19日)から木曜日(10月22日)までに各部分を振り分け、残りの時間をオルガン曲で構成しました。

バッハがいわゆるケーテン時代(1717~23)に音楽好きの領主レオポルト侯に宮廷楽長としてかわいがられ、ライプツィヒに転任してからも恩義を感じ続けていたことは、皆様ご存じでしょう。1729年、その領主が若くして亡くなったとき、バッハはケーテンに赴いて葬送音楽を演奏しました。残念なことにその楽譜は失われてしまったのですが、テキストは残りましたので、復元の努力が始まりました。

19世紀旧全集の時点で、多くのテキストが《マタイ受難曲》の諸曲にぴたりとはまることは気づかれていました。シュミーダーの作品目録がBWV244aという番号を与えているのは、失われた葬送音楽を《マタイ受難曲》BWV244の副産物と位置づけているからです。20世紀半ばのスメントの研究により、第1部の枠をなす合唱曲が《選帝侯妃追悼カンタータ》BWV198から取られていることも定説化されました。

当時は《マタイ受難曲》の初演が1729年4月11日と考えられていましたので、3月24日の追悼礼拝と接近しています。そこで、どちらが先かという論争がけっこう深刻に行われました。その後リフキンの研究により《マタイ》の初演は1727年、1729年は再演と認められましたので、転用(パロディ)の方向は、《マタイ》→葬送音楽であることが疑い得なくなりました。

要するに葬送音楽は、パロディ(既成の曲の歌詞を付け替えて新作を生み出す)によって構成されているわけです。バッハのパロディは幅広くみられる現象ですが、作品の骨格が大方パロディ、とわかっている作品は、《ロ短調ミサ曲》、《クリスマス・オラトリオ》、小ミサ曲といったところで、いずれも後期の作品です。

説明が長くなってしまいました。でも興味深いところなので、もう少し続けます(続)。

今月の「古楽の楽しみ」2015年09月12日 07時05分43秒

未明の地震に、飛び起きてしまいました。水害とか噴火とか本当にいろいろあり、地球が怒りだしたのではないかと、不安になります。思うことはいろいろですが、被害の少なからんことを祈りつつ、標記のお知らせへ。

今月は、テレマンの《ターフェルムジーク》特集です。大学生のときに無理して買ったヴェンツィンガ-指揮のアルヒーフ盤(6枚組だったでしょうか)は、私をバロック音楽に引き寄せた誘因の1つであったと思っています。

放送は、ちょうど連休の、21~24日。全3集を順番に聴いていくのでは芸がないので、ジャンル別に再編成しました。21日(月)が管弦楽組曲、22日(火)が四重奏曲、23日(水)が協奏曲、24日(木)が独奏曲、三重奏曲。全部を聴くには時間が足りませんでした。

演奏は、1960年代のブリュッヘン、ヴェンツィンガ-を部分的に使い、あとはゲーベル、コープマン、アーノンクール、ムジカ・アンフィオン、フライブルク・バロック・オーケストラといったところで構成しました。気軽に聴いていただけると思います。

どんなジャンルでも楽々と手がけているように見えるテレマンですが、自伝では意外にも、コンチェルトはたくさん作曲したが苦手だ、と述べているのですね。技巧を目立たせることが必要になるので、という趣旨のようです。

今回やってみて、それは確かにそうだなと思いました。テレマンらしい情感豊かな旋律、流麗な旋律の魅力は、室内楽(とくに四重奏曲)、ソロ曲にあると思います。ずらりと並べると、ちょっと甘すぎかな、という気持ちも生まれてきますが・・。

7月二度目の「古楽の楽しみ」~ヘンデル2015年07月26日 11時03分53秒

番組の事情で、今月の出番が2回になりました。明日から始まる2回目は、ヘンデルのオペラ特集としました。

27日(月)はロンドンでの出世作《リナルド》。〈涙の流れるままに〉というアリアが有名ですが、真の主人公は魔女のアルミーダかもしれません。演奏はホグウッドです。

28日(火)は《アリオダンテ》。イタリア・オペラですがスコットランドを舞台にしています。放送ですからバレエの場面を中心に編集しました。指揮はミンコフスキ。

29日(水)は《アルチーナ》。ヘンデルは魔女の造形を好みますが、アルミーダはエルサレムを包囲した十字軍に立ちはだかる魔女、アルチーナは《狂乱のオルランド》に出てくる魔女です。これにはアラン・カーティスの演奏を選びましたが、それは、バレエ音楽をきちんと収録しているから。ディドナートらの歌い手が、華麗な装飾唱法を展開しています。

30日(木)は《セルセ》(クセルクセス)を予定していたのですが、セルセのCD全曲盤が間に合わず、《ジューリオ・チェーザレ》(ジュリアス・シーザー)に変更しました。これは横綱級の作品で、名曲も満載。その中からシーザーのアリア3曲とクレオパトラのアリア3曲をつないで物語を進め、フィナーレで締めることにしました。演奏はミンコフスキ。メゾのコジェナーが、クレオパトラをみごとに歌っています。最後はあえて時間を残し、ショル歌うところの〈オンブラ・マイ・フ〉(《セルセ》冒頭曲)を押し込みました。

華麗奔放なヘンデルのオペラはやはり第一級の音楽ですが、今回気づいたことが1つあります。それは、ヘンデルの特有のよどみない旋律の魅力が、絶妙のリズムの裏付けで作り出されているということです。たとえば〈牧場の花も〉という、チェーザレのアリアがありますよね。順次進行の単純な音並びが、拍節のダイナミズムと密着したリズムの効果で、魅惑の旋律へと大化けしています。やはりリズムが、音楽の根源であるようです。

今月の「古楽の楽しみ」(1)2015年07月04日 23時01分28秒

今月は、出演が2回あります。6日からがバッハのパルティータ、27日からがヘンデルのオペラです。直前になりましたが前者についてご案内します。これは、バッハの6曲のパルティータをピアノとチェンバロで、1人1曲限りとして聴いていこう、という企画です。

6日(月)。第1番変ロ長調BWV825はピリス(ピレシュ)のピアノ、第2番ハ短調BWV826はレオンハルトのチェンバロ。残った時間には、若手ピアニスト、イーゴリ・レヴィットによる第2番抜粋を充てました。

7日(火)。第3番イ短調BWV827は、シフ(ピアノ)の2007年ライヴ。初稿のメヌエットを、ベーリンガー(チェンバロ)で比較しました。第4番ニ長調BWV828は、シュタイアー(チェンバロ)です。

8日(水)。第4番の抜粋をピアノで、第5番をチェンバロで、と計画しましたが、第4番のフランス風序曲をそれらしく演奏しているピアニストはとても少ないことを発見。結局、ペライア2007を選びました。第5番ト長調BWV829はクリストフ・ルセ(チェンバロ)の、若い頃の録音で。

9日(木)。第6番ホ短調BWV830は、これが最高傑作、と断言しておられ、録音にも力が入っている渡邊順生さんのものを(チェンバロ)。ピアノによる抜粋にアンデルジェフスキを使い、残り時間を、最初期の作品《プレリュードとパルティータヘ長調》BWV833の紹介に充てました。これはロバート・ヒル(チェンバロ)の演奏です。

5人のピアニストと、6人のチェンバリストが登場します。いろいろな演奏を聴くことで、パルティータの世界の広さを実感しようという趣向です。やっぱり、6曲ともいい曲ですね~。ベートーヴェンの交響曲と逆で、規模からすると偶数番が優勢、しかし奇数番もまことに捨てがたい、と感じました。

古楽の楽しみ~パーセル特集2015年06月05日 22時44分17秒

古楽の楽しみ、最近はイギリス音楽をよく取り上げていますが、ようやく、パーセル特集にたどりつきました。私の大好きな作曲家のひとりです。

第1日(6/8・月)は歓迎歌(ウェルカム・ソング)、第2日(6/9・火)はアンセム、第3日(6/10・水)は舞台音楽、第4日(6/11・木)は器楽で構成しました。もし1日だけ早起きするぞ、という方がおられましたら、第3日がお薦めです。

第1日は、チャールズ2世のための歓迎歌《ようこそ、全能の王の代理者よ》とジェームズ2世のための歓迎歌《なぜ、なにゆえにムーサは皆沈黙するのか》をトラジコメディアの演奏で。合間に、ファンタジアと3声ソナタを1曲ずつ入れました。いずれも初期作品です。

第2日は、レオンハルトの弾くヴォランタリーで開始し、フル・アンセム2曲(ケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団)と、ヴァース・アンセム1曲(《主よ、私はあなたに拠り頼みます》レオンハルト指揮)を聴き、著名な後期作品《テ・デウムとユビラーテ》(ティモシー・ブラウン指揮)で締めくくる形にしました。カンタータ好きの私は楽器のつくヴァース・アンセムに今まで注目していましたが、フル・アンセムもいいですね。イギリス合唱芸術の粋、という感じがします。

第3日は、劇音楽のセミ・オペラとも呼ばれる分野から、《ダイオクリージャン》。終幕「キューピッドのマスク」を中心に構成しましたが、円熟期の名曲で、すばらしいです。演奏はガーディナー。

いちばん親しみやすいのは、第4日かも知れません。ムジカ・アンフィオン演奏の室内楽、レオンハルトの弾くチェンバロ作品、カークビーの歌う歌曲と並べましたが、ふるいつきたくなるような曲がいくつもあります。

「またこの世界に帰ってきたい」という言葉で、4日間の番組を終わりました。偽らざる心境です。

【付記】久美さん、ご指摘ありがとうございます。修正しました。しかし来週の日にちと曜日を間違えるなんて、私は正しく飛行機に乗れるんでしょうか。

今月の「古楽の楽しみ」~モテット2015年05月06日 23時59分21秒

連休が終わりましたね。もう終わりか、という気もしますが、最善を尽くして仕事をしましたので、悔いはありません。来週に迫ってきた「古楽の楽しみ」のご案内をいたします。

今回は、バッハのモテットを特集しました。合唱団の方々、よろしく!4日を満たすにはモテットの曲数が足りませんので、カンタータやオルガン曲を入れています。

11日(月)は、《霊は弱い私たちを》BWV226から入りました。ラミーン~聖トーマス教会聖歌隊の1951年録音と、コーイ~セッテ・ヴォーチの2009年の比較が冒頭です。まさに、隔世の感。

次は、近年真作と認定された《あなたを離しません》BWV補遺159bを、ヒリヤード・アンサンブルで。いい曲ですね!もう一つ、編曲という資格で真作の仲間入りをした《全地よ、主に向かって喜びの声をあげよ》BWV160補遺を、リリングで。もう一つの編曲《神に従ったあの人は失われたが》(義人滅ぶれども)も、リリングの指揮で聴きます。最後は、昨今偽作説の強い《主を讃えよ、すべての異邦人よ》BWV230を、ボニッツォーニ~カペラ・クラコヴィエンシスの2014年ライヴで。リフキン方式による、鮮度の高い演奏です。

12日(火)は、すばらしい《イエスよ、私の喜び》BWV227を、コーイ~セッテ・ヴォーチで。2009年のこの録音も、古楽様式による名演奏だと思います。その後に同じコラールによるオルガン曲を2曲聴き、最後に、コラールの共通するカンタータ第81番《イエスは眠っておられる》を置きました。演奏はガーディナー2000です。

13日(水)は、《来ませ、イエスよ、来ませ》BWV229を、クルト・トーマス~聖トーマス教会聖歌隊の1959年録音と、ボニッツォーニで比較。次にカンタータ第151番《甘い慰めよ、私のイエスが来られる》を「来る」つながりで置き(演奏はクイケン)、オルガン曲をはさんだ後、最近モテット枠に入っている《おおイエス・キリスト、私の命の光》BWV118で締めくくり。演奏はティモシー・ロバーツです。

14日(木)は、《恐れるな、私はあなたとともにいる》BWV228で開始。バッハ作品をボニッツォーニで聴いたあと、ヨハン・クリストフ・バッハ、ヨハン・ミヒャエル・バッハで、同じテキストのモテット、ないし同じ言葉で始まるモテットの比較をしました。演奏は、ヘレヴェッヘとネーヴェルです。そして、同じイエスの言葉がレチタティーヴォであらわれるカンタータ第153番《ご覧ください、神よ、私の敵が》をガーディナー2000の演奏ではさみ、最後に《主の御前に新しい歌を歌え》BWV225をコーイの演奏で聴いて、締めくくりとしました。このモテットは放送ですでに2回使っていますので、始まりとするよりは、むしろ、希望ある最後として使いたいと判断しました。

放送のためにいろいろなジャンルを勉強し直すことができ、嬉しく思っています。ジャンルとしては当時古かったモテットが、いま聴くと、じつに新しく思えます。

今月の「古楽の楽しみ」~ハイドン2015年04月07日 07時50分19秒

今月は、ハイドンを取り上げました。ハイドンは古典派じゃないの、という声がすぐ出そうですが、「古楽としてのモーツァルト」という企画をやったときから、ハイドンをやらなくては、と決めていました。ハイドンはモーツァルトより24歳年上、J.C.F.バッハと同い年の1732年生まれだからです。

そこで照準を初期に定めて、CDを集めました。しかしハイドンの初期は資料不足のため研究がまだ進んでおらず、真偽不明、年代不明の作品がたくさんあるばかりか、ジャンルも多岐にわたっている。作品表を調べるだけでも四苦八苦、という状態になりました。

でも、やってよかったと思っています。なぜなら、その質の高さは並大抵のものではなく、平素あまり親しんでいなかったことを反省させられたからです。4日間を費やしても、ご紹介できたのは氷山のほんの一角でした。

4月13日(月)は、少年時代の作品の中で例外的に現存している《小ミサ曲ヘ長調》(1749年/17歳、演奏はバーディック)で始め、オルガン協奏曲第1番(1756、コープマン)の後に、交響曲第31番《ホルン信号》(NHKでは《狩の合図》)から、2つの楽章(リベラ・クラシカ)。昔の『名曲解説事典』(のちの『全集』)は、交響曲の巻の最初が、この曲だったのです。

14日(火)は弦楽器篇。弦楽四重奏曲第1番(ハーゲンQ)と、バリトン(弦楽器)入りのディヴェルティメントイ長調(リチェルカール・コンソート)、ヴァイオリン協奏曲第1番(カルミニョーラ)です。

15日(水)は鍵盤楽器篇。選曲が難航しましたが、最終的には特殊楽器のための後期作品も入れて、色とりどりの形にしました。ピアノ・ソナタ第7番(ホーボーケン番号。演奏は綿谷優子のチェンバロ)、同第23番(久元祐子のフォルテピアノ)、笛時計のための小品3曲(ホルツアプフェル)、リラ・オルガニザータ協奏曲第3番(コワン)、《皇帝讃歌》とその変奏曲(ローラウ/ハイドン博物館のフォルテピアノで演奏したもの)。リラ協奏曲の第2楽章は《軍隊》交響曲の原曲です。

16日(木)は宗教音楽篇。20代の《サルヴェ・レジーナ》(ヴァイル)、30代の《スターバト・マーテル》(抜粋、ピノック)を聴き、《告別》交響曲のフィナーレ(リベラ・クラシカ)で締める形にしました。ハイドンは器楽作曲家とみなされていますが、ウィーンの聖歌隊で成長しただけあって、宗教音楽がすばらしいです。とくに、《スターバト・マーテル》。

なんとなくむずかしそうですが、活気のあるわかりやすい曲がほとんどです。朝の時間にお楽しみいただければ幸いです。

今月の「古楽の楽しみ」2015年03月12日 12時11分36秒

今月は、聖金曜日も近いことなので《マタイ受難曲》のリレー演奏をやろうと思い、発表もしていました。ところが、前述した「おぎやはぎの放談」が入ったため、《マタイ》は延期。バッハの管弦楽組曲を1曲ずつ取り上げることにしました。

人気の高い管弦楽組曲。リクエストの回にはよく出ていますが、私は第1番しかやったことがなく、切り札のひとつとして温存していました。21世紀の新しい演奏をメインに、さまざまな演奏や編曲を組み合わせる形で構成してみました。

16日(月)は、第1番ハ長調。まず通し演奏を、ヤープ・テル・リンデン指揮のアリオン・バロック・オーケストラで。目立たない録音だと思いますが、とてもいいですよ。それからリレー演奏に入ります。レーガー編曲のピアノ連弾版で序曲(演奏はモレーノ&カペッリ)、クーラント以降の舞曲は、アーノンクール~ベルリン・フィルからブリュッヘン~エイジ・オブ・インライトゥンメントにリレーします。ブリュッヘンもいいですね。

17日(火)は、第2番ロ短調。クイケン兄弟~ラ・プティト・バンドの新録音(2012年)でまず通し、リレーはムラヴィンスキー~リヒター~ブッシュ(!)という凝った形にしました。締めは、ヴァイオリンがソロになる初稿から最後の3曲を、ドンブレヒト指揮のイル・フォンダメントで。

18日(水)は、第3番ニ長調。フライブルク・バロック・オーケストラの新録音(2011年)によるメインのあと、マーラーの《バッハの管弦楽作品による組曲》を置きました。前半の楽章2つが第2番から、後半の楽章2つが第3番からという変わった曲です。演奏はシャイー。そのあと《G線上のアリア》をミルシテインで聴き、管打楽器をもたない初稿によるジーグで締めくくります。

19日(木)は、第4番ニ長調。この日はトランペットとティンパニをもたない初稿から入り(演奏はヘンゲルブロック)、次に通常の全曲を、ピエール・アンタイ指揮のル・コンセール・フランセで聴きます。そして、昔第5番と言われたト短調の組曲(BWV1070、偽作)から、序曲と〈トルネーオ〉を聴いて(演奏はターフェルムジーク)終わります。

興味のある方、早起きをお願いいたします(笑)。

今月の「古楽の楽しみ」~ヘンデル2015年02月14日 10時43分36秒

Tenor1966さんのご催促で、放送にぎりぎり間に合いました。感謝。

ヘンデル器楽曲の傑作である op.6のコンチェルト・グロッソが、今月の主役です。全12曲、いずれ劣らぬ名曲ですが、そればかりというのは避けて、イタリアン・カンタータを間にはさむ形で構成しました。したがって、放送に出るのは8曲です。演奏は全部変えようと思い、クォリティ、適性、新鮮度、演奏時間(放送ですからこれが重要)の4つの観点から、集めたCDを振り分けました。

16日(月)は、第1番ト長調(ピノック~イングリッシュ・コンサート)と第3番ホ短調(ゲステール~アルテ・デイ・スオナトーリ←ポロネーズ楽章があるのでポーランドの楽団を選択)の間に、二重唱カンタータ《恋のいさかい》(アージェンタ/チャンス/フライブルク・バロック・オーケストラ)をはさみます。

17日(火)は、第5番ニ長調(アーノンクール~WCM)と第6番ト短調(ヘンゲルブロック~フライブルク)の間に、カンタータ《捨てられたアルミーダ》(メイ、イル・ジャルディーノ・アルモニコ)をはさみます。

18日(水)は、第7番変ロ長調(コンバッティメント・コンソート・アムステルダム)の次に、カンタータ《胸が騒ぐ》(ヤーコプス/レオンハルト)。第8番ハ短調(マンゼ~エンシェント)の次に、カンタータ《クローリ》(トルー/コントラスト・アルモニコ)。《胸が騒ぐ》は私が若い頃に書いた解説でまだ出回っているようですが、その後の研究でイタリア時代ではなく、ロンドンに来てから作曲されたことがわかっています。修正するすべがなく、申し訳ありません。

19日(木)は、第10番ニ短調(クリスティ~レ・ザール・フロリサン←曲がフランス様式ですので)の次に、宗教的カンタータ《ああ、あまりに不釣り合いな》(フォン・オッター/ムジカ・アンティクヮ・ケルン)。第12番ロ短調(ホグウッド~ヘンデル&ハイドン・ソサエティ)の次に、カンタータ《曙は東に輝き》(コヴァルスキー/ベルリン古楽アカデミー)。長調と短調1曲ずつで進めてきましたが、この日だけ、短調2曲になりました。第11番イ長調もいい曲ですが、第10番、第12番を落とすにしのびなく。

イタリアン・カンタータにも、美しい曲がたくさんありますね。それらの若々しい輝きに比較すると、コンチェルトのイギリス的風格が際立ちます。広々した気持ちになれる1週間を目指しました。落としてしまった4曲(2、4,9、11)、ごめんなさい!