「古楽の楽しみ」C.P.E.バッハ特集2014年02月22日 18時44分03秒

生誕300年のC.P.E.バッハ特集を、「古楽の楽しみ」で組みました。年代を追って進む4回シリーズ。来週オン・エアされます。

24日(月)は、初期、まだ父バッハが生きている時代の作品を集めました。まずライプツィヒ時代から、トリオ・ソナタイ長調 wq.146(1731=17歳、1747改訂)、演奏はレザデュー。次にフランクフルト・アン・デア・オーダーにおける大学生時代から、オーボエ・ソナタト短調 wq.135(1734?)。演奏はクビンゲとコープマン。ベルリン時代に入り、《プロイセン・ソナタ集》からソナタホ長調 wq.48-3(1742、チェンバロはアスペレン)と、フルート協奏曲ニ短調 wq.22(チェンバロ協奏曲として1747に成立)の第1楽章(ヒュンテラー/コープマン)、そして《マニフィカト》wq.21(1749)から〈位ある者を引き下ろし〉(ネーフ)。個性的な「ゆらぎ」の萌芽は《プロイセン・ソナタ》にみられますが、大筋は、安心して楽しめる美しいバロック音楽、という趣です。

25日(火)は、父の死(1750)後1767年までのベルリン時代後半を扱います。まず『正しいクラヴィーア奏法試論』(1753)に載っている学習用の作品から、ソナタ第6番ヘ短調wq.63-6(ホグウッドのクラヴィコードで)。次にオルガン・ソナタ第4番イ短調wq.70-4(1755)を、ゆかりのオルガンを用いたアランの演奏で。最後に オーボエ協奏曲変ホ長調 wq.165(1765)、演奏はヴェスターマン/ヘンゲルブロック。エマーヌエルらしいファンタジーの湧出、古典派的な感覚の成長、協奏曲様式の発展などが、この日の聴きどころでしょうか。

26日(水)からハンブルク時代に移ります。ハンブルクでは宗教声楽曲が一気に増え、器楽ではシンフォニアに名曲が生まれました。そこで、弦合奏のシンフォニアイ長調wq.182-4(1772)、オラトリオ《荒野のイスラエル人》wq.238(1775)抜粋、《ハイリヒ》wq.217(1776)、管楽器入りのシンフォニアニ長調wq.183-1(1776)からというプログラムを組みました。演奏はヘンゲルブロック、ブルンナー、マックス、鈴木秀美です。「ゆらぎ」は全開で彼の個性として確立されていますし、当時からの人気曲《ハイリヒ》も、なかなかの傑作です。

27日(木)は、ハンブルクでの最晩年を特集しました。最後の年、1788年(モーツァルトが三大交響曲を書いていた年)の《チェンバロとフォルテピアノのための協奏曲》wq.47(コープマン/マトー)を皮切りに、1785年の《マタイ受難曲》後半(ダウス)、1788年の四重奏曲ト長調wq.95から(レザデュー)というプログラムです。趣向をこらしつつも穏やかにまとめられた器楽曲も楽しめますが、《マタイ受難曲》にご注目ください。お父さんの作品の引用が次から次へと出てきて、驚かされます。

これまでそれほど興味をもっていなかった、C.P.E.バッハの音楽。4つの番組を作るためにたくさん聴き、彼がバッハとモーツァルトをつなぐ時代の大きな存在であったことを、あらためて実感しました。感性豊かな音楽を真面目に提供し続け、自分の個性もしっかり作り上げたエマーヌエル。前回のゼレンカもそうですが、特集することで、その存在がぐっと身近になりました。

年末年始の「古楽の楽しみ」2013年12月26日 07時23分41秒

今年の年末年始は、「バッハの冬のカンタータ」を聴いていただくことにしました。

30日(月)は、待降節の特集。コラール《来たれ、異邦人の救い主よ》をオルガンとBWV61の冒頭合唱曲でまず聴き、それに基づくコラール・カンタータBWV62を、ヘレヴェッヘの演奏で、さらに、待降節第4日曜日用のBWV132《道を備えよ》を、レオンハルトの演奏で聴きます。

31日(火)は、クリスマスから大晦日まで。クリスマス三が日は若き日の華麗な大作《キリスト者よ、この日を彫り刻め》BWV63で代表させ(演奏はコープマン)、次に、1724年の大晦日に初演された《新たに生まれたみどりごが》BWV122を置きます(演奏はガーディナー)。降誕を讃美しながら、新年への期待を高めるという内容のものです。少し時間が余りますので、《感謝しよう!いま年は終わりゆく》BWV28のすてきなソプラノ・アリアを、ジョアン・ランのソロで入れました。

1月1日(水)、元旦。《オルガン小曲集》の新年コラール〈あなたに喜びはある〉BWV615で開始し、1726年の新年カンタータ《主なる神よ、あなたをほめたたえます》BWV16を、BCJで。次に新年後の日曜日のための二重唱カンタータ《ああ神よ、いかに多くの胸の悩みが》BWV58を、クイケンで。BWV58はずっと前に国立音大で演奏したことがあり、なつかしい作品です。この2曲だとちょっと渋いので、有名なシンフォニアを冒頭にもつ主顕節後第3日曜日のためのカンタータ《私の片足を》BWV156を、アーノンクールの演奏で入れました。

2日(木)は厳冬期2月の作品です。まず、七旬節のための《自分の分を受けとって帰りなさい》BWV144をガーディナーで。同日用のソプラノ・ソロ・カンタータ《私は自分の幸福に満ち足りている》BWV84を、ナンシー・アージェンタのソロで。最後に、よく知られた六旬節用カンタータ《雨雪が天から落ちるように》を、フィリップ・ピエルロで。厳冬期のカンタータは短いですから、各カンタータで使われているコラールに、オルガン・バージョンを配することができました。

いずれのカンタータも美しく、聴き応えがあると思います。しかしやっていて気になったのは、その濃厚なキリスト教色が、日本のお正月に合うかどうか、ということです。たとえば、元旦に放送するBWV156《私の片足は》の歌詞は「墓穴に入っている」という流れになり、死と向かい合う、いかにもバッハ的な内容です。私自身の中にあるお正月のイメージとも、かなり違います。とはいえ、自由な放送をさせていただけるのは、ありがたいことですね。

12月の「古楽の楽しみ」2013年11月26日 08時22分20秒

というわけで、12月はハインリヒ・シュッツの特集です。2日(月)からすぐ始まりますので、ご案内しておきます。

シュッツの作品、少しずつ取り上げてはいたのですが、豊富な作品数、増加する新録音に対応できていませんでした。放送する全34曲のうち既出は3曲のみ、それらも演奏を変えてお届けします。

2日(月)は比較的初期の作品を集めました。《イタリア・マドリガーレ集》 op.1から3曲(ユングヘーネル)、《カンツィオネス・サクレ》 op.4から6曲(ラーデマン)、《シンフォニエ・サクレ》 op.6から4曲(メッソーリ、ウィルソン)です。《シンフォニエ・サクレ》に、器楽が入ります。

3日(火)は、中期の《クライネ・ガイストリッヒェ・コンツェルテ》 op.8から選んだ4曲(レミー)に、ポピュラリティのある後期の《クリスマス・オラトリオ》(クイケン)を組み合わせました。

4日(水)は盛りだくさんです。まず《シンフォニエ・サクレ第2集》 op.10、同じく《第3集》 op.12から1曲ずつ(ヤーコプス、ベルニウス)。次に昨年初録音された受難モテット《私を憐れんでください、神なる主よ》(ラーデマン)。さらに晩年の《ヨハネ》《マタイ》《ルカ》3受難曲から、導入曲と終曲(フレーミヒ、ヒリアー、ラーデマン)。締めが《十字架上の七つの言葉》(ラーデマン)です。

5日(木)は、《ガイストリッヒェ・コーアムジーク》 op.11から7曲(ラーデマン)、および《白鳥の歌》からの〈メムとヌン〉、〈ドイツ語マニフィカト〉(ヒリアー)で構成しました。

準備し、録音する間中、シュッツの音楽はなんとすばらしいのだろう、と思っていました。放送でも述べたことですが、三十年戦争の苦難の時代にこうしたシンプルかつ高貴な音楽が生まれ、衣食足りよろず民主的になった現代の音楽がしばしばとげとげしいのはなぜだろう、と思ってしまいます。

今月の「古楽の楽しみ」2013年11月01日 23時32分08秒

今月は、ライプツィヒのコーヒー店におけるコレギウム・ムジクムのコンサートを覗く、という構想で、「いかにもありそうな」プログラムを空想してみました。資料から実証される曲目はごくわずかですが、冒頭に管弦楽組曲が置かれ、メインのコンチェルトが使われたのは、確かなよう。この2つを骨格にして、前後を彩ったであろう室内楽やソロを、時間の枠内で配するという器楽プログラムです。調性も、なるべく揃えました。

4日(月)は、テレマン(コレギウム・ムジクムの創始者です)のホ長調組曲(演奏:デメイイェール)と、ピゼンデルのホ短調コンチェルト(フィオリ・ムジカーリ)、バッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第3番ホ長調(マンゼ/エガー)、そしてテレマンの《スケルツォ》ホ長調から(ブリュッヘン、クイケン、ビルスマ、レオンハルト)。

5日(火)は、グラウプナーの管弦楽組曲ニ長調(マックス)と、バッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調(カフェ・ツィンマーマン)、ヘンデルのトリオ・ソナタニ長調 op.5-2(レコール・ドルフェ)。

6日(水)はバッハの管弦楽組曲第2番ロ短調(サヴァール)、テレマンの協奏曲ニ長調(ピノック)、フリーデマン・バッハのトリオ・ソナタニ長調(アンサンブル・サン・スーシ)。

7日(木)は、ファッシュの管弦楽組曲ト短調(ピノック)、ピゼンデルの教会風コンチェルトト短調(フライブルク・バロック・オーケストラ)、バッハのチェンバロ・ソロ用協奏曲2曲(バルキ、ボーモン)です。

どの日も、くつろいで聴いていただけると思います。バッハの管弦楽組曲第2番、2つのヴァイオリンのための協奏曲は定番中の定番ですが、私が番組で取り上げるのは初めてです(=切り札として温存していた)。どうぞお楽しみください。

今月の「古楽の楽しみ」2013年10月04日 18時47分13秒

バッハの無伴奏チェロ組曲をリレー演奏で取り上げるにあたり、モダン・チェロ、バロック・チェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラに、メインを振り分けました。そこに聴き比べを入れていくのですが、第5番、第6番は1日1曲でしたので、潤沢に比較することができました。

7日(月)は、第1番全曲がケラス(モダン)。プレリュードを、フルニエ、ビルスマ(旧録音)と比較します。第2番は全曲が鈴木秀美(バロック)、プレリュードの比較がマイスキー(モダン)です。

8日(火)は、第3番全曲をヨー・ヨー・マ(モダン)で、第4番全曲を寺神戸亮(スパッラ)で聴きます。少ない残り時間で、第4番のサラバンドを、ロストロポーヴィチの若い頃のライヴで比較します。

9日(水)は第5番。ビルスマがモダン仕様のチェロを弾いた再録音をメインに使いました。第5番の場合、バッハの楽譜をきちんと弾くためには高音弦をスコルダトゥーラすることが欠かせません。そうなると、ほとんどのモダン演奏は採用できず、比較はウィスペルウェイ(ヴェルサイユ・ピッチ使用)、リンドベルイ(リュート編曲)、ディールティエンスのリレーで全曲という形になりました。ディールティエンスを使ったのは、サラバンドのアーティキュレーションが独特で、なるほどそれもありかな、と思ったからです。

10日(木)の第6番は、時間の調整に苦労しました。結果として、全曲演奏はクイケン(スパッラ)、比較のプレリュードがコセ(五弦のバロック・チェロ)、サラバンドがリプキン(モダン)、ガヴォットとジーグがガイヤール(五弦のバロック)となりました。ものすごく多様で、お好みも分かれそうです。どうぞお楽しみください。

今月の「古楽の楽しみ」2013年09月08日 08時26分34秒

ぎりぎりのご案内になってしまいました。今回は、詩篇曲(部分への作曲も含む)の特集です。番組のために集めているCDに詩篇曲がたくさん入っているので、じゃあ特集しよう、ということになりました。力作が多く、当時の礼拝および教会音楽における詩篇の重要性を痛感します。

9日(月)。シュッツの第19篇〈天は神の栄光を語り〉(Geistliche Chormusikから)を冒頭に置きましたが、これがすばらしい。ラーデマンの指揮です。シュッツからはもうひとつ、Symphoniae sacrae第3巻に含まれる第13篇。次にシャインで第39篇、スウェーリンクのオルガン曲をはさんで、ハマーシュミットの第8篇(←バッハ《ヨハネ受難曲》冒頭合唱曲のもとになったもの)。隠れた名曲と呼びたいのがフェルチュの第1篇。最後にクーナウの第31篇です。

10日(火)。シャイトの第66篇で始め、ドゥリヒウスの第84篇、第96篇と第93篇を使ってのブクステフーデとパッヘルベルの比較、シェレの第51篇と来て、最後はカイザーの《詩篇第62篇について》という作品で締めました。

11日(水)は、百番台。ここには夕べの祈り(晩課)を構成する詩篇が集中しているので、《涙とともに種蒔く者は》をシュッツの2つの作曲で聴いた後は、ビーバー、ファッシュ、トゥンダー、クニュプファーの作品によって、晩課の流れを作ってみました。〈ディクシト・ドミヌス〉〈ラウダーテ・プエリ〉等々の曲たちです。

12日(木)は、バッハ。詩篇テキストによるカンタータ第196番と第131番を枠組みとし、オルガン曲〈深き淵より〉とモテット〈主をたたえよ、すべての異邦人よ〉(偽作?)で構成しました。演奏は196がアラルコン、131がヘンゲルブロックです。

有名曲が少ないので渋い週になりましたが、内容は多彩にして豊かです。どうぞよろしく。

今月の「古楽の楽しみ」2013年08月04日 09時56分50秒

お盆の週になりますが、いかにもバロック、という、器楽曲の特集です。種々の編成を揃えて、「アンサンブルさまざま」と題しました。

12日(月)は2声部特集で、バッハのヴァイオリン・ソナタ(BWV1021、1014)、テレマンのオーボエ・ソナタ、マッテゾンのフルート・ソナタ、グラウプナーのヴァイオリン・ソナタ。マッテゾン(←かつての研究対象)の作品を出すのは初めてです。

13日(火)は3声部特集。フィーアダンクのイ長調組曲を手初めに、ローゼンミュラー、クリーガー、テレマン、ファッシュの種々の編成によるトリオ・ソナタを集めました。クリーガーの作品が珍しく、かつ面白いと思います。残った時間で、ゴルトベルクを少し。

14日(水)は4声部。ブクステフーデのソナタ、パッヘルベルのアリア、フックスのソナタ、シュテルツェルのクワドロ、テレマンのクワドロ。シュテルツェルのクワドロが結構面白かったので、4声部特集を思いつきました。

15日(木)は、ご推察通り、5声部またはそれ以上。こうなると、ウィーンのシュメルツァー、ザルツブルクのビーバーの出番となります。彼らの多声ソナタに、ヨハン・クリスティアン・バッハの五重奏曲、六重奏曲を組み合わせました。

17世紀のシュメルツァー、ビーバー対18世紀後半のJ.C.バッハとなると、まったく別の世界。音楽が、ものすごく人間に近づいてきています。この変化、発展を古楽好きの方々がどう思われるか、少なからず興味があります。

今月の「古楽の楽しみ」2013年07月08日 23時55分05秒

ドイツ旅行のおり、また各地での講演のさいにも、「古楽の楽しみ」への出演が、自分を広げていることに気がつきます。この番組、昨年バッハの「秋のカンタータ」という特集をやりましたが、今年は「夏のカンタータ」を特集しました。6月から8月にかけて初演されたカンタータから、名作を選んだ企画です。

15日(月)は第21番《私には多くの憂いがあった》。ご存じ、初期の大作です。これ1曲でほとんどを占めてしまいますが、わずかに残った時間で、第9曲に出るコラール〈神にすべてを委ねるものは〉の、オルガンと合唱、計3バージョンを流しました。カンタータの演奏はヘレヴェッヘです。

16日(火)。第45番《お前に告げられている、人よ》と、第105番《主よ、裁かないでください》。テキストは教訓的な傾向ですが、音楽的にはどちらも充実したカンタータです。演奏は第45番がレオンハルト、第105番が鈴木雅明。両曲に含まれるコラールの別バージョンを、月曜日同様に--没後、弟子と息子により編纂された《4声コラール集》から--流しました。

17日(水)は世俗カンタータ。第205番《鎮められた風の神》の全曲と、第207番a《いざ、陽気なトランペットの調べよ》から。演奏は前者がアラルコン(西風役で櫻田亮さんが出演)、後者がベルニウスです。どちらもまことに壮大な作品で、再評価への一石となれば幸いです。

18日(木)は、DVDにもなっているガーディナーの名演奏から、第199番《私の心は血の中を泳ぐ》と第179番《心せよ、神を畏れることが偽善とならぬように》をまとめました(プラス、マーク・パドモアの歌で、第113番のテノール・アリア)。メゾのマグダレーナ・コジェナーがソプラノを歌い、「ファリサイ人と徴税人」の説話(ルカ福音書)による深い内容をもったカンタータを、感銘深く聴かせてくれます。

バッハの音楽のすばらしさを少しでも広く知っていただきたいと思って日頃活動していますが、カンタータだと、とりわけ力が入ります。器楽曲ほどは知られていない、と感じることがままあるからです。その意味でとても印象的だった7月7日松本でのコンサート、写真が揃ったところでご報告いたします。

今月の「古楽の楽しみ」2013年06月05日 08時52分46秒

今月は、オルガン音楽の特集です!地域、楽器に焦点を当てて構成してみました。

17日(月)にアムステルダムから出発。スウェーリンク、ファン・ノールト、シャイト、シャイデマンなどの作品を、フォーゲル、インブルーノ、レオンハルトの演奏で。聴きものは、インブルーノの弾くアムステルダム古教会のショナート・オルガンです。この楽器はアーレントによって修復されたのち、ミーントーンに調律されているのですが、その効果は歴然としています。

18日(火)はリューベックに居を移し、聖マリア教会の代々のオルガニストたち~ペーター・ハッセ、トゥンダー、ブクステフーデ、シーファーデッカー~の作品を揃えました。締めは、バッハのコラール。演奏は、ロスト、フォックルールです。珍しいのは、ブクステフーデの娘と結婚して地位を継承したシーファーデッカーの作品。この曲は、シュテルヴァーゲンというリューベックのビルダーの楽器(シュトラールズントにあるもの)で聴きます。リューベックのオルガンはみな新しいので、北ドイツのシュニットガー・オルガンを多く入れました。

19日(水)はバッハ特集。ドレスデンを中心に、ゴットフリート・ジルバーマンの楽器を並べてみました。ドレスデン宮廷教会のオルガンで《大フーガ》(小糸恵)、レータ聖ゲオルク教会のオルガンで《私はあなたに呼ばわる、イエス・キリストよ》(松居直美)、フライベルク大聖堂のオルガンで《ドリア調トッカータとフーガ》(カール・リヒター、すごい演奏ですが楽器は修復前)、弟子のヒルデブラントによるナウムブルク聖ヴェンツェル教会のオルガンで、パルティータ《ああ、罪人の私は何をすべきか》(ツェーンダー)。最後のCDは現地の教会で去年買ってきたものです。今年も仕入れてきますね。

20日(木)はウィーンのオルガン音楽。ムファット父子、フローベルガー、フックスの作品を、ミカエル教会のジーバー・オルガン、およびオーストリア各地の修道院のオルガンでお聴きいただきます。演奏はコーゲルトとレオンハルトです。今月も、どうぞよろしく。

今月の「古楽の楽しみ」2013年04月09日 23時14分24秒

「古楽の楽しみ」、今月は22日(月)からの出演になります。チェンバロ協奏曲、平均律で行ったバッハのリレー演奏がとても好評だったものですから、ご要望の多かった無伴奏ヴァイオリン曲特集を、ついに実現しました。

とはいえ、同じように聴き比べ、というわけにはいきません。なぜなら、無伴奏ヴァイオリンは曲が長く、2曲丸ごと出せば、時間がいっぱいになってしまうからです。かといって、曲の途中で演奏者を変えるわけにはいきませんよね。

そこで、6曲を全部違う奏者とし、時間の余るときに、若干の比較を行うことにしました。6曲はソナタ3曲、パルティータ3曲ですが、ソナタをモダン・ヴァイオリン、パルティータをバロック・ヴァイオリンに振り分けました。舞曲の連なるパルティータの方が、古楽の様式にふさわしいと思われたからです。たくさんの録音がありますが、基本的に、新しい演奏を中心に選びました。

22日(月)。ソナタとパルティータの各第1番。じつはこのプログラムで一度放送したことがありますが、演奏者を変えて、繰り返しました。奏者はソナタがイザベル・ファウスト、パルティータがアマンディーヌ・ベイエールです。空いた時間で、ソナタ第1番のフーガを、ヨーゼフ・シゲティと聴き比べました。ファウストとは、絵に描いたような両極端になりました。

23日(火)。ソナタとパルティータの、各第2番です。ソナタに選んだのは、メニューイン19歳の、1936年のSP録音。じつはこの演奏しか時間枠に収まるものがなかったからなのですが、演奏はなかなかよく、20年後のシゲティと比べても、ずっと新しく感じられます。

この企画を立てるときから、〈シャコンヌ〉を含む第2パルティータはシギスヴァルト・クイケンの1999/2000の演奏で、と決めていました。画期的な名演奏と認識していたからです。放送室で聴き直すと、〈シャコンヌ〉は鳥肌の立つすごさで感動してしまい、コメントが、思わず涙声に。言い間違いはもちろん、言いよどみも許されない放送ですので、録り直すつもりで準備していました。

放送が終わるとアシスタントがやってきて、「声が揺れていたのは感極まったからですか」と尋ねます。「そうです」と答えたら、「じゃ、このままいきます」ですって。みっともない放送、ご容赦ください。

24日(水)は第3番-第3番で、ソナタは、ヒラリー・ハーン。17歳の、恐るべき演奏です。パルティータは、レイチェル・ポッジャー。少し時間が余ったので、冒頭のプレリュードを、ギドン・クレーメルと比較しました。それじゃクレーメルの圧勝だよ、と思われるでしょう?そうでもないですよ。比べてみてください。

25日(木)は、編曲特集。リュート編曲を2曲、オルガン編曲を1曲のあと、野平一郎さんの4つのヴィオラへの編曲(今井信子さん他演奏)を聴いて、スウィングル・シンガーズ初期の〈ガヴォット〉で締めました。作品のすばらしさを痛感した1週間。次は、無伴奏チェロですね。