富士山?2011年08月03日 22時51分02秒

2日~3日と河口湖で音楽学の合宿があり、中央本線と富士急を乗り継いで向かいました。本を読んでいてふと気がつくと、列車は「富士山」という駅に停車しています。あれ、こんな駅あったっけ、新しくできたのかな、と思って見回すと、そこは大きな町。富士吉田駅が富士山駅と改称されたのだとわかりました。車内には「富士登山鉄道」という掲示板も出ています。

たいへん違和感を感じたのですが、皆さん、どうでしょう。河口湖から乗ったタクシーで運転手さんに聞いたところでは、7月1日からそう改称されたとか。しかし地名は富士吉田市のままで、富士山市になったわけではないそうです。しかしここは富士山ではないし、せっかくの由緒ある地名がもったいないと思うのですが・・・。

宿は、河口湖を俯瞰するすばらしいロケーションのところ(大石地区の峰山荘)。客扱いもよく、多くの参加者ともども、満足しました。合宿で飲み、しゃべり、朝辛い思いをすることもずいぶん数を重ねましたが、これで最後。ほっとしています。幹事の皆さん、ありがとうございました。

忘れもしない思い出2011年07月18日 23時12分00秒

今日はトッパンホールに、「高橋悠治×藤井一興 20世紀横断」というコンサートを聴きに行きました。

ギリギリに飛び込むと、すぐ目が合ったのが、マーラー然とした雰囲気で中央に座っておられる、三宅幸夫さん。お互いにすぐ思い浮かべるのは、野球のことです。この前まで「今年はまったく興味がなくなった」とおっしゃっていたのに、連勝のせいかとてもご機嫌で、愛想を送ってこられるのです(もちろんこの時点では、今日の結果はご存知ありません)。

私も余裕がありますので、塩を贈ろうと何かいいかけたら、隣に座っていた、見たことがあるようなないような女性が、「礒山さん!Aです」と言うではありませんか。「あ~、久しぶり!」と返しましたが、忘れもしないAという名前に、記憶は一気に、半世紀前の松本へと飛んでしまいました。

この方は、高校時代の私の同級生で、私が指揮者をしていた音楽部の団員でもありました。そして、松本深志高校美女ナンバーワンとして、人気の高い方だったのです。あ、その人に片思いしていたわけね、とおっしゃるあなた。違います(きっぱり)。私が好きだったのは、Aさんといつもいっしょにいる、親友のBさんだったのです(拙著『マタイ受難曲』に、ちらりと登場されます)。悪い男子生徒たちがミス深志のアンケートをひそかに回したことがありました。その結果、ダントツ1位だったのがAさんで、わがBさんは、10位。「こんなアンケートは女性に失礼だっ!」と叫んだことを思い出しましたが、もちろん、人権に配慮しての発言ではありません(汗)。

なんでこのような思い出を書くのかというと、このAさんが、高橋悠治さんの奥さんであるからなのです。結婚のうわさを聞いたときには驚きましたが、なるほどさすがに、とも思ったことを覚えています。高校卒業後、お会いするのは初めて。ナチュラルなイメージではつらつとしておられ、いい人生を生きておられるようにお見受けしました。

それにしても、高橋悠治さんのピアノのすばらしさには脱帽です。そもそもピアノ演奏は、技術的な要素と音楽的な要素が半分ずつ結びつくのがいい形かな、と思っていますが、技術的な要素が消し去られて音楽だけがそこにある、ということが可能であれば、それが最高かもしれない、という思いもありました。ところが、今日の高橋さんの演奏が、まさにそういうものだったのですね。なんの力みも作りもなく、無心に音楽を奏でて、やさしく血がかよっている。アンコールの《マ・メール・ロワ》にはとりわけ感激しました。〈美女と野獣〉というのもありましたね(笑)。

最初の「最後の授業」2011年07月15日 23時56分07秒

今、前期の授業の最終週に入っています。これまでは「今年度の終わり」に過ぎないことでしたが、今年は、「この授業の終わり」を意味します。そのために準備した素材や資料や、そういうものが、今後は不要になるわけです。そんなわけで、今日はほっとする感じと、少し寂しい感じと、両方が混じった1日でした。

「ドイツ歌曲作品研究」の授業を、いったい何年間やったのでしょうか。15年ぐらいですかね。詩の解釈、音楽の考察、演奏とレッスンを兼ね合わせたようなこの授業は、私の最後期における実践との結びつきを象徴するような意味をもっていました。今年は、受講者がみな演奏に参加してくれたことがなにより。毎回1~2曲の研究に絞っていますが、最終回はコンサート・ライクにやろうということで、大勢の出演者がたくさんの曲を演奏しました。多くの人が手を上げてくれ、私の感想を待ち受けてくれるのは嬉しいことです。いい演奏が、いくつも含まれていました。

昼休みは火曜日の授業で演奏する人を指導し、午後は上級の個人指導。結局ドクター論文を見送る人も増え、寂しさも感じる今日でした。来週の火曜日で、前期の授業が終わります。

梅雨明けとは・・・2011年07月09日 21時41分57秒

広島東洋カープ、ダメですねえ。やっぱり嵩に懸かって書くと、あとダメ(笑)。ダヴィデ原巨人さんにつけ込まれてしまいました。

それにしても、もう梅雨明けとは、驚きです。学期が終わったのにまだ雨続き、という年も近年多かったと思いますが、7月になるかならぬかのうちから連日30度というのは、記憶がありません。防護服でがんばっている方々、お疲れさまです。

昔の日本家屋には、夏を快適に過ごすための、さまざまな工夫があったものでした。いまとなればそれがなつかしい。コンクリートの塊というべき大都会をさんざん作ってきて、いきなり電力制限と言われても、辛いものがあります。しかも、この猛暑。仕方なく、やむなく、詮方なく、ビールを飲んでいます(笑)。

前期が終わるまで、あと2週間です。私のお弟子さんたちにも、ドクター論文挑戦の決まった人あり、ウィーン留学が決まった人ありと、動きが出ています。月末にドクター論文の第一関門があり、その指導と審査で、今月は費やされそうです。

免罪符2011年06月24日 23時56分47秒

暑いですね。エアコンを使うのも肩身が狭い中、皆さんご無事でしたか。私も、熱中症という言葉が他人ごととは思えないほど消耗しました。なにしろマスクをしているので(笑)。酸素不足から学生を一喝、というシーンが、やはりありました(汗)。

よくコメントを下さるたのもーさんは、館林の出身。おそらく熊谷39.8度の栄光を、切歯扼腕の思いでご覧になっていたことでしょう。それを超えたら40度ですけど・・・。

今日、大学院入試の説明会がありました。私は修士の音楽学と、後期博士課程の全体説明をする役回りです。今年度で退職しますから、それなのに説明するのは死に体なのに政策を語るようなもので、菅さんじゃあるまいし、と思いつつ会場に出かけました。そのネタを使い「居座るつもりはまったくありませんが」と話し始めることも決めていました。

直前の学生の指導を4分で済まし、急ぎ足で会場へ。マスクをしていると、息が切れます。集まっている先生方に挨拶を振りまきながら、着席。さて、ともらったプログラムを見ると、どこにも私の名前がないではありませんか。何度も、目を皿のようにして見ましたが、やっぱり、ない。どうやら今年の説明会は、来年度もおられる先生方で編成されていて、私の出番はないことがわかりました。

私は、きわめて満足して退席。暑い中を助かった、ということもありますが、必要のない会議に出席した、という満足感が大でした。必要のある重要な会議にうっかり欠席、という過去が重なっていましたので、これを免罪符としたいと思います。

マスク2011年06月23日 23時40分52秒

少し前のことですが、学生さんが指導に、大きなマスクをかけてやってきました。きれいに見えましたので、私は「マスク、似合うねえ」と声をかけました。このように、ちょっとほめるだけで指導が円滑に進むことが、よくあるものなのです。

ところがその学生さんはムッとした態度を示し、「ほめてませんね」と言うではありませんか。皆さん、客観的に見て、どうでしょう。「似合う」というのはほめ言葉であるはずですが、この場合は、ほめたことにならないのでしょうか。

以来私は、マスクをしている女性を観察してみました。結果として理解したのは、マスクをしているのにきれいに見える人は、もともと相当きれいな人だ、ということです。やはり「似合う」はほめ言葉であると思います(筋通ってますかね)。

私は5年にいっぺんぐらいしか風邪を引かず、花粉症でもありませんので、マスクに慣れていません。しかるにこの数日は、ずっとマスクを着用していました。わかったのは、マスクが心理に相当影響を与える、ということです。

第1に、マスクは人を大胆にさせる。京王線の中で次々に営業電話をかけている人がいましたので、私は90度左を向き、その人の顔を、ずっと見続けていました。素顔では、ちょっとできません。

第2に、マスクは人を短気にする。酸素の供給が不足するためでしょうか、喧嘩っ早くなってしまうように思えます。職業上の喧嘩を、1つしました。

第3に、マスクは、音楽の感動を減殺する。なぜか、妙に批判的になってしまうのです。仕事のさいには、マスクをしないで聴くべきだと感じた次第です。明日の授業、どうなるでしょうか。

共催講座とその後2011年06月20日 22時05分08秒

19日(日)、読売新聞との共催講座完遂しました。読売新聞の多摩版をご購読の方は、詳しい記事をお読みになったかもしれません。

この企画は大学単位で進んできた教養講座であり、音楽ファンの方々を対象にしているわけでは、かならずしもありません。したがって、バッハがテーマというのは渋すぎるかなという懸念もありましたが、結果的にはたいへん多くのお客様に、熱心に受講していただきました。大学側のシミュレーション(バッハの回は200人ほどお客様が増えるのではないか、という推測)が裏書された格好で、ありがたいことです。

大学の音楽研究との取り組み、音楽研究所の歴史のようなことから話を始め、結婚カンタータの楽譜発見にまつわること、《ロ短調ミサ曲》の日本初演と今準備している「リベンジ公演」についてを、二本柱としてお話ししました。それにからめて、渡邊順生さんおよび「くにたちiBACHコレギウム」のメンバーによって、《ゴルトベルク変奏曲》のアリア、結婚カンタータの1部、《ロ短調ミサ曲》の一部を演奏したのが、何よりのアトラクション。連続講座としてのプレッシャーも少しは感じていましたから、ほっとしたところです。ご出演の方々、ありがとうございました。

終了後は行きつけのイタリアン、KISAKIを開けてもらって、打ち上げ。おいしく、楽しく、にぎやかだったのですが、進行するにつれ、体調の降下を感じ始めました。帰路はかなり調子が悪く、今朝には風邪の症状がはっきりあらわれて、休養。客観的に見て、忙しすぎたと思います。もらってきた薬でアレルギーが発生するなど思うに任せませんが、迷惑をおかけしないよう、早く治したいと思います。

私だけネクタイ2011年06月16日 23時57分38秒

6月は、理事会のシーズンです。今日は、住友生命健康財団の理事会。事前に「クールビズでどうぞ」という案内が回ったのですが、夕方にコンサートの予定もあったので、いつも通り、スーツにネクタイででかけました。

そしたら、ネクタイ着用は私ひとり!「申し訳ありません」などというハメになりました(笑)。この理事会、いつも高名な方々と中身の濃いお話ができるので楽しみです。今日も、震災関連の貴重なお話を、たくさん伺いました。

私はどうしても、クールビズに抵抗があります。きちんとした服装で人前に立て、という教育を受けましたし、自分も、それが好きなのです。しかし今年は、職場でもクールビズの指導が強化されていますので、どこかのタイミングで、イメージを裏切ろうと思います。本当は、定年まで貫いてしまうつもりだったのですが。

午後は、新橋でマッサージ。このところの多忙でずいぶん凝っていましたが、αウェーブ河本さんの丁寧な施療で回復。終わって外に出るとリラックスして、幸福感がありました。秋葉原のヨドバシカメラでゲームを買い、8階の食堂街シーアンで、刀削麺の夕食。私は刀削麺大好きなのですが、私の行く中では、ここが一番おいしいと思います。汗をぬぐい、鼻をかみ、涙をぬぐっての食事です(←超辛い)。

知人のコンサートを覗いて帰宅しました。

またしてもペースメーカー2011年06月11日 23時46分25秒

大阪から帰宅。いずみホール・オペラの印象が体に満ちみちていますが、それについては落ち着いてから書くとして、別話題をはさみます。

木曜日。バスに乗り、運転手のすぐ後ろの席に座りました。バスの場合、前部ではいちばん前の席だけ、左右とも、進行方向に向いていますよね。その右側です。

メールチェックをしようと思い、携帯を出しました。すると、左側の席の女性から声あり。「ペースメーカーをしているので、やめてください!」と。どうやら、先日話題にした女性と同じ人のようです。

前回いただいたコメントで、「22センチ離れていれば大丈夫」という知識を得ていた私は、「これだけ離れていれば大丈夫ですよ」と言いました。間に通路をはさんでいるので、確実に1メートル以上あります。するとその女性は、「電波がいけないとお医者さんに言われています」とがんばるのですね。私は再度「いや、絶対大丈夫ですよ」と言いましたが、メールチェックはべつに急がないので、携帯をしまいました。

駅に着き、降りる段になって、ひとこと言ってやろうかと迷いが生じました。そのひとこととは、「優先席に座られたらいかがですか」というものです。しかし考えてみると、前回も今回もその人は一般席に座っているわけで、意図してそうしている可能性が考えられる。一般席から周囲の携帯使用者に警告することを、日課にしているのかもしれません。日課どころか、生きがいになっているのかもしれない。さらに考えてみると、前回も今回も私が言われたということは、その人がバス利用者の中では有名で、若い人達も知っていて利用しないでいるようにも思えてきました。そこで「ひとこと」は、ぐっと飲み込みました。

こんなとき役に立つのが、私の「ツキの理論」です。やっぱりその日、いい1日になりました(笑)。

昼からワイン2011年06月09日 23時51分40秒

14時半からのNHKの録音を、「今日はいつもと違います」と宣言して始めました。というのは、かなりお酒が入っていたのです。仕事前に飲んではいけないと思いつつ、いただいたワインがあまりにおいしかったので、結構飲んでしまいました。6月20日からの分の録音ですが、趣向をこらしています。それについては、あらためてご案内します。

なぜ飲んだかというと、サントリー芸術財団の昼食会に招かれていたからです。今度から、財団の理事にしていただきました。新しい音楽創造の支援に尽力してきた財団に私でいいのかという思いもありますが、視野を広げるための勉強をずいぶんさせていただいていることも確かなので、さらに勉強させていただくことにしました。妻には、「そんなことまでしたら、人生もうやることなくなっちゃうじゃないの」と言われましたが(笑)。

夜は、メトロポリタン歌劇場の公演へ。どれを取るか迷った末ドニゼッティ《ルチア》を選んだのは、周囲でベルカント・オペラを勉強している人が多く、作品をじっくり見直したいと思ったから。ディアナ・ダムラウ(ルチア)、ローランド・ヴィラゾン(エドガルド)以下、完璧なキャストによる、じつにすばらしい公演でした。やっぱりオペラ好きです(笑)。