正攻法の勉強2009年11月09日 23時05分22秒

徐行運転を宣言して始まった今週。弟子2人の発表するゼミは休めないので出かけ、結局、3つの会議と1件の打ち合わせを済ませて帰ってきました。博士課程の声楽専攻2人が発表の担当でしたが、2人ともかなりのレベルを示してくれたので、嬉しい気持ちになっています。

先の談話「博士論文」の内容に照らして特筆に値するのは、高橋織子さんのシュトラウス《4つの最後の歌》に関する発表でした。高橋さんはソプラノ歌手としてすでにかなりのキャリアをお持ちの方で、コンサートをご一緒したことも、複数回あります。その彼女がこの4月から博士課程で勉強し直す道を選び、私が論文の担当になっていたのでした。

しかし研究の基礎がとくにあったわけではありませんから、博士論文に向けてどう勉強していくか、なかなか方向の定まらない日が続きました。焦ってもいたようです。しかし、シュトラウスのオーケストラ歌曲を従来のリート美学とは異なった形で分析することを主張し、それにはニーチェの哲学がよき基礎を提供する、とする優秀な文献に出会い、それを読み進めることで発表を構成する、という道が開けてきました。

とはいえ、視野の外にあった哲学を、ドイツ語で勉強しようというのだからたいへんです。しかし彼女は驚くべき粘り強さを発揮し、聞くところでは、寝食を忘れて打ち込んだようです。その結果、思いの外短い期間に正攻法の研究の基礎が作られ、なかなか堂々たる発表ができあがりました。その過程で勉強のやり方がわかり、その面白さが感じられてくるというのは、まさに「博士論文」で提唱したやり方そのものです。これから挑戦する方の励みになり、モデルともなることだと思いますので、ご紹介させていただきました。

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