「あらかわバイロイト」2年目2010年04月23日 23時41分01秒

先約があるので、と伝えて、今日は会議を休みました。ですからその先約を明らかにすることには差し障りがあるのですが、書くプラスの方を重く見まして・・・。

「あらかわバイロイト」の2年目、《ワルキューレ》を見に行きました。友人のバリトン歌手、今尾滋さんがヘルデン・テノール(!)としてデビューすることになっていたので、応援を約束していたからです。

これが、なかなか良かったのですよ。会場のサンパール荒川というのは、下町の匂いが会場内に漂っているようなところで、何となく、昔の映画館にいるよう。ここでワーグナーの超大作を上演することはそれ自体無謀とも思えることなのですが、ハードルが低い分親しみやすい、という側面も、たしかにある。最初、貧弱な寄せ集めに思えたオーケストラも第2幕に入ると鳴りがよくなり、金管などなかなか。歌い手も、「いかにもワーグナー」という人は少ないのですが、善戦健闘、よく勉強されています。

ワーグナーの音楽は、作曲家の明確で強い表現意欲が100%音として実現されている、音楽史上まれな例だと思います。こういう音楽は、演奏が多少及ばずとも、作品のもつ独創性、卓越性は、しっかり伝わる。ですから私は、ことワーグナーの公演に関しては、演奏のレベルを問わず、一定の感銘を受けます。今日の公演からも、《ワルキューレ》のすばらしさは、十分に伝わってきました。

ここまで作り上げることの困難は想像に余りありますが、外国の名歌手をずらりと並べたリッチな公演より、こうした手作り公演の方が必ずや有意義で、後に残るものであると確信します。今尾さん、朗々たる高音で、これからのワーグナー公演に、欠かせぬ方になりそうです。