神様の後押しで2010年12月29日 14時21分05秒

いきなり書きこむのは気が引ける、という空気があるようですので、私から、少し書かせていただきますね。

オペラをご覧になる方は、気に入った歌い手を見つけようとするものです。それもまた、鑑賞の楽しみ。しかし《ポッペアの戴冠》in Suzakaの場合、それは困難ではなかったでしょうか。なぜなら、適材適所の配役(←自慢させてください)のもと全員がベストを尽くし、レベルの揃ったアンサンブルを繰り広げていたからです。いったんお気に入りを見つけても、新しい歌い手が登場するたびに再考を迫られる、という状況になっていたのではないかと思います。

歌のレベルが高かったというのは、指導された渡邊、平尾の両先生はじめ、いろいろな方がおっしゃってくださったことです。これは両先生のご指導のたまもの、出演者の才能と努力のたまものであるわけですが、「くにたちiBACHコレギウム」における最長3年のバッハ経験と、ドクター論文に取り組むことによる知的な鍛錬が、大きくプラスしているように思えてなりません。それなくしては、様式感を踏まえた、洞察力に富むモンテヴェルディ演奏はあり得なかったと思うからです。ただ優秀なソリストを集めただけでは、日曜日の演奏は成立しなかっただろうと感じています。

そうなると、大元にあるのは、大学に後期博士課程が設立され、そこに入学してくる優秀な声楽学生の論文指導を私が担当するようになった、という事実です。でもまさかそこからモンテヴェルディの公演が可能になるとは、思いもよりませんでした。このありがたい流れを後押ししてくれた神様は、〈幸運〉でしょうか〈美徳〉でしょうか、それとも〈愛〉なのでしょうか。

コメント

_ かみや ― 2010年12月30日 02時03分20秒

先生。愛ですよ愛。幸運だったら先生の理論だと限界がありますから。
新年会期待してます。良いお年を!

_ はら なおき ― 2010年12月30日 11時13分29秒

夫婦(私49歳、妻46歳)で鑑賞しました。オペラの公演や声楽の演奏を生で鑑賞した経験がたいしてある訳でもなく、歌い手の出来や技術レベルを云々できるほど耳が肥えている訳でもなく、また、皆さんの準備状況等公演の裏側をまったく考慮してもいませんので、本筋から外れてピントがズレまくりかと思いますが、何点か、コメントさせてください。

まず、パンフレットにびっくり! 手作り、ですよね? 代役にもきちんと対応されていて、さらにびっくり!! それだけ、意気込みの高さを感じました。 歌い手の記載順が??(普通は、ポッペアが先頭ですよね?)でしたが、歌い手としての登場順だったのですね。

お世辞にも音響が良いとは言えない会場で、舞台の張出し部分を使ったのは、歌い手と客席とがより近くなって、また、歌い手の声がストレートに伝わってきて、非常に良かったと思います。反面、ただでさえ狭い場所にリュートチェンバロも一緒に乗っていたため、嵩のあるドレスの歌い手は、少し動きづらそうに見えました。リュートチェンバロは、張出し部分の脇に下ろした方が良かったかも? まぁ、舞台の上と下とでは、床の材質が違いますから、舞台上の方が響きが良い、との判断かもしれませんが。

>お気に入りを見つけても、新しい歌い手が登場するたびに再考を迫られる
まさにおっしゃるとおりで、みなさん、情感こもった歌声を聴かせてくれました。オッターヴィアの絶望感とか、セネカの重々しい威厳(低音の響きにはシビれました)とか、その威厳を物ともしないぞというネローロの傲慢さとか...。、
その中で(演奏の良し悪しではなく、好みという点で)印象深かったのは、まず、ドゥルジッラの独唱、ポッペアとネローロの最後の二重唱です。幸せそうな表情も合わせて、まさに、歌の中に幸せ爆発、という感じを受けました。幸せな気持ちの歌をとても幸せそうに歌っているのを聴くというのは、聴いてる方も幸せな気分になります。また、ドゥルジッラが代役というのは、驚きでもあります。
もうひとつ、小姓と侍女の二重唱が、長身の小姓と小柄な侍女でビジュアル的なバランスがとれていたうえに、ふたりの声質が違うのでしょうか、ソプラノ同士でありながら、見た目どおり男と女がハモっているように聞こえたのが印象的でした。
同じ二重唱でも、ネローロとルカーノは、二人が似たような体格の似たような声(に聞こえました)のテノール同士の、ともにポッペアを讃える歌のせいか、聴いているだけでは二人の違いが判りにくく、その点についてだけ言えば、ネローロは女声でというのは、充分理解できます。ポッペアやオッターヴィアとの絡みも考慮すると、ソプラノよりメゾソプラノ(ビジュアル的には長身)がいいかも、と思います。
礒山音楽監督が、ビジュアル的なバランスを考慮のうえキャスティングされたかどうかは判りませんが、しろーとはそういうところが気になるものです(きっと)。その点、今回の公演は、バッチリ!でした。

気になった点をふたつ。
1つめ、アモーレの<不注意者は寝ている>ですが、守護を約束する対象に背中を向けて歌うというのは、どうかと。終始、ソファの向こう側(客席から見て)でポッペアを見守るように歌った方が良かったのではないでしょうか。
2つめ、オットーネの履物が、婦人靴に見えてしまって(アルナルタ役から戻って出てきたときに気が付きました)ありゃりゃ、と思いました。男性の履物がみな、古代ローマのサンダル風に見えたため、余計気になってしまいました。遠目だったので私の誤認・思い込みかもしれませんし、小姑が重箱のスミをつつくような些細なことで、申し訳ありません。

長文、乱文、生意気な物言い、失礼いたしました。

_ I教授 ― 2010年12月30日 19時23分25秒

はらさん、ご感想ありがとうございます。自分の眼と耳でこれだけしっかり鑑賞してくださった方がおられ、その感想をくわしく書きこんでくださったことを、たいへん嬉しく思います。勉強になります。

内幕を少し。ドゥルジッラの代役を安田祥子さんに依頼したのは、メールを調べましたら12月13日(!)でした。しかしN響の《第九》への合唱出演がすでに決まっていて、スケジュールがぎっしりだったのです。それでも夜討ち朝駆けという感じで、練習に参加してくれました。必然的に彼女がいちばんしごかれましたが、本番はお聴きのとおり。心にすうっと入ってくる、いい歌なんですよ。

履物は、みんな気にしていたのですが、私は「そんなとこ誰も見てないよ」などと言っておりました。責任です(汗)。

_ ayako yukawa ― 2010年12月30日 20時29分52秒

先日の長野・須坂《ポッペアの戴冠》公演に、オットーネ、アルナルタ役で主に出演させて頂きました、湯川亜也子です。

この度は貴重な機会を頂きました事、心から感謝申し上げます。
温かいお声掛けを下さり、お忙しい中ご指導下さいました礒山先生、本当にありがとうございました。

バロックオペラには、今回初めて取り組ませて頂きました。バロックオペラがどのようなものなのか…様式や音楽、歌唱法や演技からどれも未知の事ばかりで、課題が山積みでした。

最初は《ポッペアの戴冠》の内容そのものにも抵抗がありました。しかし、10月下旬に初めて礒山先生にご指導を頂いた際、「この物語の登場人物は、誰一人として否定的に書かれていない。」というお話を頂き、それまで解らなかった“不道徳=美徳”という本作品の意味や魅力を、初めて飲み込む事が出来たような気がします。

演奏法に関しては、予想以上に苦しみましたが…本番に至る過程で、何も解らない私に手取り足取りご指導下さいました、渡邊順生先生、平尾雅子先生に、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
素晴らしい先生方のアンサンブルに支えて頂き、モンテヴェルディの音楽の魅力に触れられました事、また今回願っても叶わないような出演者と舞台に立たせて頂けました事、それに歴史ある『すざかバッハの会』という温かい場で歌わせて頂けました事、どれも心に残る財産となりました。

このように大きな舞台が叶うには、本当にたくさんの方々のご協力があってこそだと思うと、感謝の気持ちで胸が一杯です。温かく支えて下さった皆様、本当にありがとうございました。

…まだ当分《ポッペアの戴冠》の音楽が頭から離れそうにありません(笑)
この機会を大切に、今後も少しずつ古典物に触れ、勉強していきたいと思っております。


はら様、須坂公演には足をお運び下さいまして、誠にありがとうございました。また、履き物の件で、大変参考になるご意見をありがとうございます。戦争から帰還したオットーネという事で、今回、ヒールのあるブーツを…との事だったのですが、手持ちの物でなかなかその時代にあったものが見つけられずに、苦戦致しました。またの機会がありましたら、その際はしっかりと準備を整えて臨みたいと思います。

_ SHOCO ― 2010年12月30日 21時49分55秒


こんばんは♪

先日ドルジッラ役で出演させて頂きました安田祥子です。

はらさん♪
温かい言葉を頂き、恐れ多くも、大変嬉しく思います。本当にありがとうございます。

私事ですが、I教授の内幕通り、今回は2週間という限られた時間の中で舞台に立つという、怖いものしらずの挑戦をさせて頂きました。
お話を頂いた当初は、恥ずかしながら≪ポッペアの戴冠≫というオペラの題名を知っていた程度でした。しかし、楽譜を手にし、新しい役に出会うと、次第にワクワクしてきました♪

さて、今回は時間が勝負・・最優先に考えたことは、先輩方の完成度の高い音楽技術に接し学ぶことで、ドルジッラで穴ができないようにしよう!!ということです。取り組んでいく中で、ドルジッラの透明感溢れる快活さにとても勇気づけられました!!!

私が舞台に立つことができたのは、少ない時間の中でヒントを下さった礒山先生・渡辺先生・平尾先生の熱心なご指導があったからです。また、憧れの出演者に囲まれて舞台に立てるという喜び、そして、支えてくれる仲間がいたからです。さらに、本番では、平尾先生がご提供して下さった素敵な衣装に身を纏い、会場から伝わってくる須坂の方々の温かいエールを感じながら、渡辺先生率いるアンサンブルに助けられ、のびのびと歌うことができました。演奏会の醍醐味の一つである舞台と会場が一体となった素敵な時間を過ごすことができ幸いです。

2週間ですっかりバロック音楽の虜になりました。丸裸な音楽だからこそ奥が深い、そんなバロック音楽に今後も少しでも触れられるよう精進していきたいと思います。

支えて下さった多くの方々と今回の公演で巡り合えた出会いに感謝致します。
本当にありがとうございました。

_ masaco ― 2010年12月30日 23時00分06秒

ポッペア役を務めさせて頂きました阿部雅子です。この場をお借りしまして、今回の公演にあたりご指導下さった先生方、ご助力いただきました皆様、また会場にお運び下さった皆様に、心から感謝申し上げます。

本番直前は想像を絶する過酷なスケジュールでしたが、そうした苦労を補っても余りあるほどに、稽古は楽しく充実したものでした。
音楽のどんな細部においても決して妥協することのなかった礒山先生、渡邊順生先生、平尾雅子先生。版を見比べながら、資料を掘り起こしながら、経験を辿りながら、ディスカッションを繰り返しながら音楽を作り上げていく三人の先生のお姿は、音楽の道を歩き始めた私たちの指針となりました。

いつもキャスト一人一人に目を配り、心を配って下さった礒山先生。連日連夜の稽古に、絶えず笑顔で迎えて下さり、根気強くご指導を重ねて下さった順生先生(とハナちゃん、モモちゃん)。音楽的なアドバイスはもちろん、衣装の相談から踊りの振り付けまで何でもこなされ、女性陣のハートを鷲掴みだった平尾先生。本当にありがとうございました。
そして、公演を無事成功させることができたのは、スタッフの永田美穂さん、小崎麻美さん、佐藤麻衣さん、そして大峡さんを始めとする「すざかバッハの会」の皆様のサポートがあってこそでした。
演者もみな気心の知れた者同士で、助け合い、励まし合い、高め合い、お菓子を奪い合い、稽古場のソファーを陣取り合いながら頑張りました(笑)。

これほどまでにご指導の先生や仲間たち、スタッフの皆さんに恵まれた公演は、そう経験できるものではないと思います。

今回の舞台を通して一番強く感じたことは、≪ポッペアの戴冠≫はポッペアが主役ではなく、ポッペアが戴冠に至るまでに関わった、ほとんどの人物が主役級であるということでした。登場人物一人一人における性格描写や心理描写の、なんと複雑でなんと巧妙なことか!出来ることならば声種も性別も関係なく、すべての役を演じてみたい!と、稽古の度に思いました。・・・といいつつも、やはり「ポッペア」という役には特別な思い入れがあります。いつか、私が思う「ポッペア」、私にしか出来ない「ポッペア」を体現することが出来るよう、これからも精進して参りたいと思います。

はらさんコメントありがとうございました。史実では、ポッペアは戴冠後にネローネにお腹を蹴られて殺されてしまいます(泣)。つまり最後の二重唱は、長くは続かなかった二人の愛の頂点であり、周りを巻き込むに巻き込んだ騒動の、束の間の平穏の時といえると思います。二人の愛の行く末を御存じの方、また二人の愛の成就に遺憾な方(笑)も、はらさんのように幸せなひと時を共有していただければ幸いです。

礒山先生の熱い想いと多大なご尽力で始まった≪ポッペアの戴冠≫プロジェクト、またいつか再演が実現できたら・・・その時は、今回のメンバーに加えて小島芙美子さんと渡邊慶子先生も!そして泣く泣くカットされた場面もさらに追加を!!そしてそしてオットーネの足にサンダルを!!!
≪ポッペアの戴冠≫完全版として、さらにパワーアップした舞台を皆様にお届けできることを祈りつつ・・・

_ I教授 ― 2010年12月30日 23時57分00秒

みんな、ありがとう(泣)。まだ頭が《ポッペア》に支配されているので、いま2種類ほどのCDで、後半を聴いていました。どちらも、2人の乳母はカウンターテナーにより、性格俳優のごとく演じられています。基本的にはそれでいいと思うのですが、それだと、アルナルタの絶美の子守歌が、ぎくしゃくしちゃうんですよね。湯川亜也子さんの子守歌がしっとりした情感にあふれて絶品だっただけに、性格俳優方式は物足りなく感じます。ドクター湯川に、みんなが支えられた公演でしたね。

_ (未記入) ― 2010年12月31日 21時40分02秒

エッセイでは阿部雅子withその他大勢みたいに書いといて、まとめはドクター湯川の支えか。。

_ 押し入れ ― 2011年01月01日 01時08分04秒

I教授、みなさま!
あけましておめでとうございます!
いつも「実践」なさる時のI教授の文章は、温度が上がるのが伝わってきますが、今回さらに上がっているのが伝わってきます^^本当に素敵な本番だったのですね。
お疲れ様でした。

今年もI教授のさまざまな分野でのご発信を楽しみにしています。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック