鎮魂の調べ2012年11月03日 08時30分02秒

ウィーン・フィルの方々は、日本が大好き。3.11の出来事にはひじょうに心を痛められ、何か力になれることはないか、と申し出られたそうです。そこでサントリーが受け皿になり、「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興基金」が成立(詳細はサントリー芸術財団のホームページをご覧ください)。私も、縁あってこのプロジェクトのお手伝いをさせていただいています。

活動の二本柱は、「音楽復興祈念賞」と、「こどもたちのためのコンサート」。復興祈念賞には多数の応募があり、審査の末、助成金受賞者が決定しました。第1回の受賞者は、すべて被災地の方々です。いい企画がたくさんありました。

「こどもたちのためのコンサート」は11月1日から始まり、私も2日間、ご一緒してきました。15人による小編成オーケストラが、東北地方を巡演するのです。曲目はオール・モーツァルトで、ヴァイオリン協奏曲第4番、フルート協奏曲第2番、交響曲第29番の全曲か、その抜粋。1日の夕方には仙台の常磐木学園シュトラウスホール(←立派なホール)、2日の午前には岩沼西小学校でコンサートが行われました(ここで私は帰郷)。ホールでも、体育館でもみごとに響かせることのできるのがウィーン・フィルなので、高校生も、小学生も集中して聴き入っていました。小学校では、《紅葉》のほほえましい合唱が、感謝のお返しとなりました。

小学校のコンサートの前に立ち寄ったのが、被害がもっとも深刻だったところのひとつ、名取市の閖上(ゆりあげ)地区です。バスで向かった現地は、一見草原のようなのですが、よく見ると、建物の土台がそこここに。盛り土された慰霊碑に昇ってみると、風の強い日であったせいか大きな波が打ち寄せており、身震いしました。

ウィーン・フィルの人たちの献花と演奏が予定されていたのですが、あいにくの雨模様。野外で弦楽器というわけにもいかないだろうと思ったら、ウィーン・フィルの方々はぜひやると主張され、ディ-タ-・フル-リ-氏ら3人が、バッハのトリオ・ソナタト長調BWV1039の第3楽章を演奏されました。その模様はNHKのニュースで「鎮魂の調べ」として放映されましたから、ご覧になった方も多いことでしょう。

現場を見、いろいろなご説明を伺って、被害の状況と、復興のために行われている努力のたいへんさがよくわかりました。遅ればせながら訪問の機会を得、多くを学ぶことができました。あらためてお悔やみ申し上げるとともに、復興の早からんことをお祈りします。