完全原稿の勧め2012年12月14日 20時57分27秒

皆様のおかげで充実のイベントが続き、多忙ながら幸福感さえ感じる今週です。見えない仕事も多々あり、中でもちょっと大変だったのは、学会で開催したシンポジウムの、学会誌用報告をまとめることでした。

このシンポジウムは90分の枠に4人のパネリストがいましたから、時間の不足が懸念されました。そこで既報のように、基調報告には各12分の完全原稿を用意していただき、事前に時間確認もしてもらった上で進行させたわけです。

それぞれの原稿は、きわめて凝縮されたものになっていました。400字1枚が1分として、48枚ですよね。その後相互ディスカッションが12分、フロアとのディスカッションが12分、締めのスピーチが4分ありましたから、全部合計すると、原稿用紙にして76枚程度の言葉が飛び交ったことになります。

学会誌用の報告は、それを400字10枚にまとめなくてはなりません。7対1。だらだらした会話を短くするならまだしも、凝縮されたものをさらに大幅に短縮し、エッセンスと議論の進展を伝えるのは、きわめて困難な作業です。

この一例が物語るように、学問的な作業では、一定字数、一定時間に対する情報量を極限まで高めることが求められます。大きな時間を費やした研究を短い時間に発表することがほとんどなので、1字1句、無駄にできない。そのためには、完全原稿を準備することに勝る方法はありません。

そして、時間にぴったり収まるように推敲を重ねる。ほとんどが、削る作業に費やされるでしょう。書き原稿を読むと話が堅苦しくなる、というのは、原稿の文章に問題があるからです。わかりやすい話し言葉で、つとめて聞きやすいように準備をしておく。しっかりした土台があれば、脱線もまた、効率よくできます。

ですから、しっかり原稿を作らず、時間も計らないで始めるのは、経験の少ない人であれば、危険と言うより論外です。ベテランの方であれば原稿なしで円滑にという可能性もありますが、そういう方が準備すればもっと内容は濃くなるだろうに、と思います。結局、「時間がもっとあれば良かったのだが」ということになってしまうからです(続く)。