今月のCD特選盤2012年12月21日 10時37分18秒

先日ある方がトークの中で、私のことを「少年のよう」とおっしゃいました。ありがたく思いましたが、私は認識型の性格で、天真爛漫ではまったくありません。ですから、10分の1ぐらいでもそういう部分があればいいなと、割り引いてお言葉を頂戴しました。

しかし出会ったのですね、少女のよう、少年のように演奏されたモーツァルトに。とはいえ若者が演奏しているわけではなく、70歳近いピアニストと、80歳近い指揮者の、人生経験すべてを突き抜けて童心が躍動するような演奏。マリア・ジョアン・ピリス(ピレシュ)とクラウディオ・アバドによる、ピアノ協奏曲第27番と第20番(グラモフォン)です。

選曲も、究極ですよね。長調と短調の対比は意図されていないようですが、作品に対する慈しみの深さが、すべてを超えています。じつは第27番の第3楽章を先日のモーツァルト・フェラインでの講演の最後に使いました。家で聴いたものを外で聴くとときおり「おや」と思う違いがあるのですが、この演奏ばかりは、古いラジカセで流したにもかかわらず、生命力に衰えがありませんでした。ぜひお薦めします。

選考課程でもうひとつ心に残ったものに、ロータス弦楽四重奏団のブラームス/弦楽四重奏第1番、第2番がありました(ライヴ・ノーツ)。ドイツの深い森のような、ブラームス特有の響きがみごとにとらえられているのです。シュトゥットガルトに住みついた方々が、ドイツでよき日々を過ごされているのだと思います。