切られお富2014年03月19日 00時45分44秒

17日(月)は、国立劇場に歌舞伎を見に行きました。出し物は、《菅原伝授手習鑑》から車引の場、そして《處女翫浮名横櫛》から、2つの場面です。後の方、お読みになれますか。「むすめごのみ うきなのよこぐし」だそうです。とうてい読めませんが、すばらしい日本語ではあります。

ご紹介した酒井順子さんの本に、日本の文化はわび・さびと言われているけれど、本来は派手好みのものだと三島由紀夫が言っている、と書いてありました。たしかに、どちらの場面も舞台や衣装の色彩にしろ役者の所作にしろ、華麗そのもの。しかし、花、華、艶といったイメージの視覚に対して、三味線と長唄による音楽は、諸行無常の詠嘆を宿しています。そのミスマッチに、日本文化を解く鍵があるのではないか、と考えたりします。

私は西洋のクラシック音楽を追究してきましたが、本質的には日本文化の讃美者です。ですから、こうした公演に接するたびに、日本の伝統的な価値観が失われてはいけない、と思います。圧倒的なグローバリズムの中で、歌舞伎を見る人が減らないでほしいと思うばかりです。

中村時蔵の「切られお富」に感服。春日八郎の《お富さん》を私はカラオケのレパートリーにしているのですが、その歌詞の意味するところを、この日初めて理解しました(汗)。この歌が大ヒットした私の子供の頃には、皆さんわかっておられたのだと思います。