ピアノがこんな風に響くとは! ― 2008年05月22日 22時32分45秒
昨日(21日)紀尾井ホールで、別府アルゲリッチ音楽祭の東京公演を聴きました。アルゲリッチの他、樫本大進、ミッシャ・マイスキー、ネルソン・ゲルナー、川本嘉子といった一流どころが出演し、この音楽祭が10年間積み重ねたものの大きさを実感させる、すばらしいコンサートになりました。
その全体については毎日新聞をお読みいただくとして(来週の月曜か火曜に掲載)、ここでは一点だけ、アルゲリッチのピアノの音色について書きたいと思います。
マイスキーとのグリーグのソナタにおけるアルゲリッチのピアノの音色は、私がこれまで聴いたことのないものでした。弦楽器とピアノのデュオというと、両者の原理的な違いが大きいために、別のものが合わせている、という感じになります。ところが、アルゲリッチの響きはまったく弦楽器そのもののようで、チェロと心地よく一体となり、ふくよかに、味わい深く響くのです。この音色は、アンサンブルをいつくしむ心の究極の産物のように、私には思われました。
アンサンブルの妙味にここまで深入りすれば、もうソロには興味が薄れるのかもしれません。ソロを弾いてくれなくて残念だ、などと言っていては、彼女についていけないのですね、きっと。アルゲリッチの姿には、神々しさが備わってきました。音楽の神様の域に、もう相当近づいているようです。
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