6月のイベント2008年06月01日 23時04分47秒

6月になりました。今月はイベントが多く、中にはたいへん神経を使うものが含まれていますので、ちょっと緊張しています。ともあれ、ご案内を。

まず7日(土)には、朝日カルチャーセンターをはしご。新宿校では、「新・魂のエヴァンゲリスト」というバッハの連続講座を始めます。たくさんの方にご愛読いただいた私の処女著作を読み直し、新しい研究に基づく修正を施しながら、同著改訂版の出版に足がかりを作りたいと思います。10:00~12:00で、第1土曜に出講します。

午後15時30分からは、不定期に開催している立川校のバッハ講座。名曲をたどる企画、今回は、管弦楽組曲です。

9日(月)には学内で「バッハの失われたカンタータをめぐって」という研究発表をしますが、これは、非公開。10日(火)にはバッハ演奏研究プロジェクトの立ち上げを記念して「バッハの演奏史を振り返る--演奏研究のための問題提起」という講演をします。こちらは公開で、どなたにもご参加いただけます。18:00から、国立音楽大学6号館110室スタジオです。

12日(木)の夜は東大和市の市民企画講座「音楽史を学ぼう」に出講します。この日は、バロック音楽がテーマです。19:00から、東大和市立南街公民館で開催します。

14日(土)が最大の難関。藝術学関連学会連合のシンポジウムが、私の司会で開かれます。です。「昭和40年代の日本における藝術の転換」というテーマで、1970年前後の時期における藝術を語り合います。私は司会者で、パネリストとその演題は以下の通りです。

佐野光司(日本音楽学会)「音楽における前衛とポスト・モダン--日本におけるその転換の意味」 

千葉成夫(美術史学会)「「もの派」と「もの派以後」--戦後から戦後以後へ」

國吉和子(舞踊学会)「土方巽・暗黒舞踏と日本――見出された「からだ」について」

神山彰(日本演劇学会)「衰退したジャンルの心性と行方ーー新派・新国劇・レヴュー」

先日会合を持ち、充実した会になりそうだという実感を得ました。場所は学習院女子大学2号館で、東京メトロ副都心線西早稲田駅のどの出口からでも、すぐ目の前です。新しい地下鉄を楽しみながら来ていただければ幸いです。

これでまだ半分。過密ですね。心配になってきました。

6月のイベント(2)2008年06月03日 23時12分50秒

6月17日(火)のバッハ演奏研究プロジェクトは、野平一郎さんの演奏付き講演です。野平さんは最近ずっと《平均律》の研究をなさり、見事なコンサート/CDも披露されました。その意味で、「ピアノで弾くバッハ/《平均律クラヴィーア曲集》第1巻」シリーズへのご登場は、タイムリーです。どなたでもいらしていただけますので、お見逃しのないように。18:00から、6号館110スタジオです。

20日(金)は、東大和講座の2回目で、テーマは古典派。18:00からです。21日(土)はたのくらで、「フランスの器楽曲~グリニーからクープランまで」。10:00から。22日はすざかバッハの会。今回は「バッハ最先端」の第3回で、「この1曲」は無伴奏チェロ組曲の第1番、《マタイ》は「最後の晩餐」になります。--いまホームページにアクセスすると、「当選されました」という画面になりますね。フィッシング詐欺にのっとられているようなので、お気を付けください。

25日(水)は、いずみホールのベートーヴェン/弦楽四重奏曲シリーズ。日本のトップ奏者(豊嶋、矢部、川本、上村)によるアルティ弦楽四重奏団の出演で、第5番イ長調と、第9番ハ長調《ラズモフスキー》です。

28日(土)は、朝日カルチャーのはしご。10:00からは新宿の音楽史シリーズで、「ロマン派」をやります。ワーグナーの《トリスタン》を採り上げます。13:00からは横浜校のバロック講座。今回はクープランが中心になります。

休日もないのに結構詰まっているので、乗り切れるかどうか、心配です。よろしくお願いします。

新しい家族2008年06月04日 23時56分26秒

諸般の事情から、当家に新しい家族が加わりました。マルチーキー(マルチーズとヨークシャー・テリアのハーフ)のオス、3ヶ月弱。事情は次のブログで。

ルルちゃん闘病記2008年06月05日 21時24分51秒

私が国立に住むようになってから、家にはいつも犬がいました。最初が柴犬のメス。次がシェットランド・シープドッグのメス。次がヨークシャー・テリアのメス。次がポメラニアンのメスです。ポメラニアンのルルちゃんは、ブログの初期に紹介した子です。

このルルちゃんが、てんかん持ち。ときどき発作を起こします。調べてみると、脳に疾患があり、肝機能もひじょうに悪い。客観的に見て、不良品を買わされたんじゃないかと思います。お手もお座りもできないのですが、顔はとてもかわいく、皆でかわいがっていました。

ところが最近、発作が頻発するようになった。その都度タクシーに乗せて動物病院に駆け込むのですが、お金が結構かかり、合計すると天文学的数字になってきました。セカンド・オピニョンも必要、ということで違う病院に行ってみると、体が小さいのだからそんな強い薬を打ってはだめだ、発作は治っても体がダメになってしまう、と言われ、考え込む。動物医療は、人間ほど神経を使わない世界なのでしょうね。

看病を見かねた先生が、このままではたいへんだから自分にくれないか、と言ってくれました。症例として研究し、新薬も試してみたい、とおっしゃるのです。寝てばかりで、いつ死んでもおかしくないような状況でしたから、先生のお言葉に甘えることにしました。まだ存命中、年齢は5歳です。

さてそうなると、犬なしでは1日も暮らせないわが家のこと。子供たちがショップめぐりを始め、絶対これ、というのを見つけてきました。それが写真のリクちゃん(変な名前ですね)。当家初のオス犬です。反応がよく元気いっぱいで、家の中が急ににぎやかになりました。

転んだ後の起き方2008年06月07日 22時11分00秒

今日は、朝日カルチャー新宿校の連続講座「新・魂のエヴァンゲリスト」第1回でした。教室一杯の受講生にお集まりいただきましたが、何十年バッハを聴き込んできている、という年期の入った方が大半で、気が引き締まりました。ウン十年ぶりに先生の授業を、という方もちらほら。嬉しいですね。

『魂のエヴァンゲリスト』の初めの方を縮小コピーして配布し、一緒に読むというのが基本コンセプト。途中音楽を聴き、不十分なところを修正したり、新しい情報を折り込んだりしてゆきます。23年前の本で長いこと読んでいませんから、今の自分がどう思うか不安だったのですが、そうひどくはないですね(笑)。当時なりに、よく調べてあります。

今なら書かない、肩に力の入った文章も目に付きます。でもそれは自分の若さと一体になっているので、部分的に書き直すことはできない。作曲家が若い頃の曲を、未熟ではあってもそのままにしておく理由がよくわかりました。しかしバージョンアップが必要なことは確かですから、この講座を重ねて、改訂版の準備をしたいと思います。

午後は立川校に移動し、管弦楽組曲の鑑賞講座。どうも話すネタに困るのがこの作品なので、仲間グループの録画映像を中心にするつもりでいました。ところが、それに対応するハードが、立川校にないことを忘れていたのです。他にはピノックのCDをもっていただけだったので、ショックで目の前が暗くなり、「ツキの総量は一定」というあの法則が、頭をかすめました。

考え込むこと、約3分。そのことで受講生の方が不満を感じてはなりませんから、映像なしをプラスに転化するべく、気合い3倍で、序曲や舞曲の説明、相互比較などを丹念にやりました。通じるもので、終わったら拍手をいただきました。やはり、具合が悪いことがあったときにそれをどうプラスにしていくかが真価の問われるところだと、認識した次第です。充実した1日になりました。

昔と比べて2008年06月10日 23時02分33秒

厳しい週を通過中です。

月曜日には、勤め先の研究室で開かれている上級ゼミナールで2年に1回回ってくる研究発表を行いました。共通テーマは「伝統と断絶」というものですが、私は「バッハの失われたカンタータをめぐって」というタイトルで発表しました。内容は、次の著作で読んでいただきます。

鼎の軽重を問われる機会ですから、全力投球しました。それにしても素朴な感慨としてあるのは、研究発表と自然に向き合えるようになったな、ということです。若い頃は、発表が回ってくることは頭痛の種でしたし、何をやろうか、そのたびに頭を悩ませました。ところが今は、わかった、いつでもいいよ、という感じ。ネタに困らないのです。

発表の大半は、この1年以内に勉強した事柄でした。ですから、昔より今の方が、勉強していると思うのです。なぜ、そう思えるのか。昔より自由時間があるわけではありませんし、勤勉になったわけでもありません。要するに、テーマが決まっているからではないでしょうか。ですから、一生勉強を続けるためには、しっかしりたテーマをもつことが先決だと、若い人たちに申し上げたいと思います。

たいへんですが、充実している今週です。

7人がけ2008年06月11日 23時15分38秒

今日は、本を読んでいて電車を乗り過ごすことを2回やってしまいました。行きは地下鉄を飯田橋で降りるところを、2つ先の竹橋で気がつく。帰りは混んでいたので立って読んでいましたが、やっと座れたのでやれやれと思ったら、「次は立川」というアナウンス。自分の降りる駅で座ってしまったのです。

どうせミステリーでしょ、とおっしゃいますね。違うんだなあ。土曜日のシンポジウムのために、別の芸術分野における戦後史を、にわか勉強しているのです。今日は、舞踊の歴史をひもといていました。

ところで、最近の車両は1列を2-3-2に分ける仕切りがついていますが、あれって、すばらしい発明だと思いませんか。仕切りがないと、6人でも埋まってしまい、入り込むのに気が引ける。しかし仕切りがあると、7人でも悠々と座れるのですね。心理的な効果だと思います。それとも、新しい車両は少し長いのでしょうか。

小文字のi2008年06月12日 23時06分45秒

10日(火)は、国立音楽大学音楽研究所のバッハ演奏研究プロジェクトの旗揚げで、「バッハ演奏の諸問題--演奏史を回顧しつつ」という講演を行いました。演奏上の問題点を列挙することで、これからの研究の課題としていただこう、という趣旨です。

立ち見も出る盛況で、参加者を中心に、熱気の感じられる会になりました。やはり、こういう企画を待っていてくださった方々もいらっしゃるのですね。普通なら「幸先がいい」となるところですが、こんなとき、「ツキの総量は一定」すなわち「初めがいいとあとでしわ寄せがくる」という、私の持論がネックになります。竜頭蛇尾(←この言葉好き)にならないよう、気を引き締めたいと思います。

立ち上げた合唱団の名称は、「くにたちiBACHコレギウム」と決まりました。小文字の「i」を付けようというのは私のアイデアですが、とてもいい、といって下さった若い方と、ちょっと、とおっしゃる年配の方に分かれました(笑)。でもとりあえず、これでいきたいと思います。当面、シュッツ、プレトーリウス、バッハ祖先などを練習します。

水曜日は批評のコンサートに行き、今日はCD選の仕上げと、東大和市の講座。ここまで集中すると、かえって緊張感が出て、能率があがります。何より、土曜日を成功させることが肝心です。

タクシーの中で2008年06月13日 23時08分30秒

朝の出勤は、立川駅からたいていタクシーに乗ってしまいます。10分を節約するためです。後ろ座席の安全ベルトは掛けにくいですね。こわれているクルマも、2つありました。

今朝のタクシーでは、お笑い町巡りのようなラジオ番組がかかっていました。かなり大きな音量で、運転手さんが楽しんでいるようです。私は考え事をしたかったので、邪魔に思い、止めてもらおうかどうか、考えました。そして心を決め、「あの、ラジオ、ちょっと、いいですか」と言うと、運転手さんは無言でスイッチを切りました。

車内は静かになり、考え事ができるようになりました。しかし私が下車するまで考えたのは、私の行動が適切であったかどうか、ということです。自分が客なのだから、聞きたくないラジオは止めさせてかまわない、という考えが1つ。運転手さんが聞きたいのだから、止めさせるのは乱暴だ、という考えも1つ。どちらが正しいんでしょうね。私が止めてもらう決め手としたのは、勤務時間にラジオを聞く正当性はあまりないんじゃないか、という判断です。

お金を払って降りるとき、運転手さんが愛想良くしてくれたので救われました。最初の授業は「歌曲作品研究」でシューベルトの《ガニュメート》でしたが、担当した2人の学生が卓抜で、よい一日になりました。

3時間語り会った昭和40年代2008年06月15日 22時19分01秒

研究発表と講演、シンポジウムが4回という、厳しい週を完走しました。最後がもっとも神経を使うものでしたので、絶大な安堵感です。

藝術学関連学会連合のシンポジウムは、場所が学習院女子大でしたから、「副都心線」を初日に利用できました(西早稲田駅下車)。私はコーディネーターですから進行を司れば済むとも言えますが、なにしろ不案内な領域を含んでいる上に、各学会の代表者がフロアにいるという、できればご遠慮したいシチュエーションでの役割です。まあ、日本語でできるのが救いではありましたが。

初めのうちは、最近よく聞く「頭が真っ白」というのはこういうことかな、というほど、うわずっていました。しかし佐野光司(音楽)、千葉成夫(美術)、國吉和子(舞踊)、神山彰(演劇)というパネリスト諸氏、およびコメンテーター(尼ヶ崎彬氏)が強力で、どなたも全力投球してくださり、基調報告、相互討議と、間然とするところなく進行。なかなかこううまくはいかない、というほど充実したひとときになりました。まあ私は司会ですから中味は少ないわけですが、足を引っ張ってはいけないので、神経を使ったわけです。

つくづく思うのは、自分の領域だけやっているのではだめだなあ、ということ。第一線の芸術家はみな先駆的なコラボレーションを手がけているのに、研究者は細分化された領域だけを見ていることが多いのではないかと思います。そういうことを骨身に染みて感じたことが、今回の一番の収穫でした。私の勉強のためにやっていただいた、という感じさえしています。

心づくしの懇親会のあと、新宿で、カラオケ。4つのイベントのうち3つは上々に行っていましたから、自分の理論に照らして最後にしわ寄せが来るのではないかと心配していたのですが、どうやら、それはなし。そうなると、積み重なったまま先送りされているツケがどう解消されるのか、問題です。とりあえず、今週は気をつけなくてはなりません。

シンポジウム「昭和40年代の日本における藝術の転換」の内容は、やがてWEB化されますので、またお知らせします。