心地よいシャコンヌ2009年03月10日 23時16分50秒

19日の「シャコンヌの祭典」(杜のホールはしもと)に向けて、シャコンヌの勉強をしています。複数の場でその報告もしましたが、シャコンヌとは何かを知るのに適した素材として直観的に思い浮かぶのは、カヴァッリの歌劇《カリスト》でした。カヴァッリはモンテヴェルディの弟子で、《カリスト》は『バロック音楽名曲鑑賞事典』の百選にも採り上げた作品。その幻想的な上演が、ルネ・ヤーコプスの指揮でDVDになっています。

シャコンヌは3拍子の舞曲でスペイン起源。もともとは、かなりテンポが速かったようです。バロック時代には「踊るシャコンヌ」の伝統もずっと受け継がれ、ラモーに至るまで、「シャコンヌを踊って終わる」オペラがたくさんあります。《カリスト》も、第1幕と第3幕の最後に、シャコンヌが踊られる。その音楽的な特徴は、オスティナート・バス、すなわち、短いサイクルで繰り返されるバス音型の存在で、形式的には変奏曲ということになります。

ヤーコプスの《カリスト》がなぜすぐ頭に浮かんだのだろう、と思って注意してみましたら、理由は、その独特な演奏法にあることがわかりました。

この演奏では、オスティナート・バスを主役としてクローズアップし、変化する上声部を相対的に軽く付随的に、ほとんど即興的に扱っているのです。朗々と反復されるバスのサイクルはたいへん気持ちがよく、いかにも「これがシャコンヌだなあ」という感じ。太い幹にいろいろな花が咲き代わっていくような印象です。

やりすぎといえばやりすぎかも知れませんが、シャコンヌの本質に即した演奏法として、記憶にとどめておきたいと思いました。演奏家の方はお試しいただけると面白いと思います。(この談話は、バッハのヴァイオリン用《シャコンヌ》はなぜシャコンヌか、という問題をめぐって生まれたものです。)