互恵の楽しみ2010年08月08日 13時02分33秒

「たのくら」の8月例会。「ミニミニコンサート」と講義を半々、という計画だったのですが、結局時間のほとんどを、コンサートに費やす結果になりました。ソプラノの川辺茜さん、メゾソプラノの高橋幸恵さん、ピアノの三好優美子さん、精魂込めてのご出演、ありがとうございました。

24年もやっている会ですから、会員の皆さんが1つになって、きわめて好意的に、演奏に向かってくれます。このため若い人たちも、安心して演奏に集中できる。つまり、出演者は「たのくら」の恩恵を受け、会員の側は、私の弟子たちの力量や魅力に、いい形で接することができるわけです。コンサート自体は超のつくほどささやかなものですが、こうした「互恵」に良さがあり、楽しみがあります。

オペラの部は私が解説しましたが、歌曲の部はそれぞれ専攻の曲を取り上げましたので、解説を歌い手に委ねました。簡単にやるのかと思ったら、2人とも詳細に掘り下げられた、後期博士課程在籍者ならではの解説。結果として--興味深いことに--シェーンベルクの初期歌曲に皆さんの関心が集まりました。今までは敬遠していたがこういう面白いものだったのか、という感想をおっしゃった方が何人もおられたのは、川辺さんの明晰な歌唱と解説のたまもの。なにしろ私自身が、同じことを思っているのです(笑)。ワーグナーの《エルザの夢》を歌われるほど声のある方なので、これからが本当に楽しみです。

パーセルの《ディドとエネアス》では、川辺さんがベリンダにまわり、高橋さんが、ディドの2つのアリアを歌いました。品格の中に憂いというか陰影をたたえた高橋さんは、ディドにぴったりのキャラクター。完成度の高い、情感豊かな歌唱だったと思います。「天使のピアノ」で知られる三好優美子さんがいつも的確なピアノで伴奏してくれるのも、会の自慢です。

年に1回のメインのコンサートには、渡邊順生さんがフォルテピアノで出演され、チェロの花崎薫さんと、ベートーヴェンのチェロ・ソナタを演奏してくださることになりました。来年、2月2日の水曜日。またご案内します。

〔付記〕最初「相互互恵」とタイトルしましたが、屋上屋を架す日本語ですので「互恵」に改めました。悪しからず。