8月のCD選2010年08月31日 09時23分39秒

毎月のCD/DVD選、新聞に載ってからこちらでご案内しようと思っているうちに、まぎれてしまうことがあります。久しぶりになってしまいましたが、8月分を。

ラトル指揮、ベルリン・フィルにいつも共感するわけではありません。でもチャイコフスキー《くるみ割り人形》はよかったですね。バレエ全曲版への挑戦は初めてだそうですが、うまさが先行しない、やさしく夢のあるアンサンブルになっていて感心しました。2枚組にDVDがついて3,200円というのは安いですね。売れるものの強みでしょうか。ともあれ、平素組曲で聴いている音楽も、全曲で聴くと、いろいろな発見があります。

ハーディング指揮、ミラノ・スカラ座によるシュトラウス《サロメ》(2007年のライヴ)のDVDも特筆ものです。頽廃しきったヘロデの宮殿に朗々と響くヨカナーン(シュトルックマン)の声、「聖」の侵入におびえる人々の中で、それを「性」に置き換えてわがものにしようとするサロメ・・。ボンディの演出による諸人物の対比的造形がみごとで、新星ミヒャエルが女豹のように魅惑的なサロメを演唱しています。こういう「観せる」路線に比べると、先日実況されたバイロイトの《ワルキューレ》は、(音楽はともかく)見た目に、ちょっと古めかしくなかったでしょうか。

3位は、エンリコ・オノフリの「バロック・ヴァイオリンの奥義」です。バッハの《トッカータとフーガ》の編曲から始めて、タルティーニ、テレマンなどを並べたプログラムを聴き進めると、無伴奏ヴァイオリンの可能性に驚かされること必定です。