百年河清を待つ2011年10月28日 11時26分24秒

胃カメラに、出直しの朝。満員電車に乗り、しばらく経ってからのことです。私は向かって右のドア、優先席とは反対側の入口に立っていたのですが、斜向かいの優先席あたりから、「携帯の電源を切ってください!」という声が上がりました。ある程度の年齢の、女性の声です。

「やるなら向こうでやってください」「ここは優先席ですよ」に始まる言葉は、ずっと続いて、休みがありません。次の駅に近づくと、「さあ、また猛者が乗ってくる」とつぶやき、乗客が入れ替わったところで語調を強め、「携帯の電源を切ってください」と戻ります。何サイクル、これが続いたでしょうか。

その間、乗客の声は、寂としてありませんでした。みんな、どうしているんだろう。知らん顔をしているのか、使っている人が電源を切っているのか、使っていない人も取り出して電源を切っているのか。見たいと思いましたがわかりません。

それ以上に知りたいと思ったのは、黙っている人々の反応です。たしかに、優先席で電源を切る人は、再三のアナウンスにもかかわらず、見たことがない。車掌さんが注意する光景にも、接していません。でもみんな、使っていますよね。年配の人が電話をかけている姿さえ、見たことがあります。私はといえば、なるべく使わないようにはしていますが、電源を切ったことはありません。

ですから、女性の発言は、まったくの正論です。非の打ち所がありません。だからこそ知りたいのは、黙っている人たちの感想です。よく言ってくれた、という感謝なのか。勇気ある発言への賞賛なのか。あるいは、ある人の生きがいへの、やさしさなのか。でも人間って、どうして正論に反発してしまうのでしょうね。他人をあげつらう情熱に、どうしても賛同することができないのです。

胃カメラを無事済ませ、荻窪の名店「春木屋」で、ワンタンメンを食べました。