凄い自伝2013年03月29日 11時20分40秒

東奔西走にお供していた高峰秀子さんの自伝『わたしの渡世日記』(上・下、文春文庫)、読み終わりました。かつて週刊朝日に連載されたもので、誕生から子役時代、女優時代の1年1年が、克明に追想されています。

高峰さんは自伝を書くにあたり、自分のすべてをさらけ出そう、と決心されたのでしょうね。その勇気に、まず驚きます。ふつう自伝を書くとなると、ある程度までで歯止めをかけ、マイルドにまとめると思う。それだって、私など、恐ろしくてできません。ところが高峰さんは事実を赤裸々に述べ、人間関係やその愛憎を率直に綴って、美化しないのです。連載が昭和50-51年ですから、当時は今読むほど「時効」という感じはなかったのではないかと思われます。

それだけのことはあり、読み進めるにつれて、高峰秀子さんという方がいかに真剣に、本質を見据えて生きた方かということが鮮明に印象づけられ、その人間性に呪縛されてしまいます。とりわけ、ご自身の人生設計によって実現した結婚のくだりは感動的。昭和史のおさらいにもなりますので、一読をお勧めします。

映画を見る習慣のない私ですが、高峰さんの出演された映画をひとつひとつ鑑賞したくなってきました。本当は映画館で見るのがいいのでしょうね。たくさんの映画とこれだけの自伝を残された高峰さん、文字通り「不滅」の存在になられたと思います。