ヨーロッパ真摯の旅2015(10)--1つのクライマックス ― 2015年06月22日 07時06分12秒
ICE列車がルター都市ヴィッテンベルク駅に入ってくるのを見たとき、私は、意外の感にとらわれました。列車が逆の方向から来たように思えたからです。しかしホームで方向が逆に思える経験は、東京でもしばしばすることです。
ドイツのホームには、列車の構成表が出ています。どこに一等車があるか、食堂車があるか、コンパートメント方式か否か、などが、すぐわかるようになっています。そこで二等車の位置に移動していたのですが、目の前に来たのは一等車。あれ、逆の連結になっているな、と思いました。
同行の方々は一斉に、乗り込む準備を始めました。発車時刻は14時37分で、まだ7~8分近くあります。そこで私は、急がなくていいですよ、二等車まで歩いてから乗りましょう、とご提案したのですが、皆さんは、もう出発するようだから、中で移動しよう、とおっしゃいます。それもそうかと思って乗り込むと、列車はすぐ発車しました。
何か、変。ちょうど車掌さんが来たので、「この列車、ライプツィヒに行きますか」と尋ねたところ、返事は 「いや、ベルリンです」と。やっぱりね・・。どこかで引き返さなくてはならないので、「次の駅は?」「ベルリンです。」かくして、ベルリンまで行かなくてはならないことがはっきりしました(ありがたいことに、料金は見逃してくれました)。そういえば、2番線ホームから乗るはずが、3番線ホームから乗ったのです。皆さんに平身低頭、お詫びしたことはいうまでもありません。
ベルリンに着くと、30分後にライプツィヒ行きのICEがある。それで帰れば、夜のコンサートには充分間に合う、ということになりました。そこで生じた問題は、ベルリンからヴィッテンベルクまでの運賃をどうするか、ということです(ヴィッテンベルク~ライプツィヒ間は、往復切符を購入済み)。
この乗り間違いは明らかに私の責任ですので、私は皆さんの分をお払いすることで解決したいと思いました。それが一番簡単で、心労の少ない方法だからです。しかし多数の方が、切符を買いましょう、しかし先生に払わせるわけにはいきません、とおっしゃり、また、間違いなのだから免除してもらえないかどうかをまず交渉すべきだ、と考える方もおられました。
皆様がどうされるかわかりませんが、私は、そんな交渉は絶対したくない、というたちです。とはいえ、分担しますというご厚意も、無にするわけにはいきません。そこでご厚意分はいったんお預かりした上で、ワインでもご馳走しよう、ということにしました。
かくて、ベルリン着。私は広い中央駅をひとっ走り、帰りの切符を買いにいきました。発車まで30分です。すると、窓口は整理券方式となっており、かなりの列ができています。これだと時間内には危ないように思えましたので、自動販売機での購入に変更。自動販売機は一度に5人分しか買えませんから、3枚ずつ2回購入することにしました。
ところが、最初の3枚は良かったものの、次の3枚に対して、ICカードが通らなくなってしまったのです。何回やってもダメ。そこで現金払いに変更し(手持ちぎりぎりでした)、数分を残して購入することができました。
そこでホームに急いだわけですが、その途中であることに気づき、愕然。私は気が動転していましたので、ベルリンからヴィッテンベルクまで購入するべき6枚の切符を、ライプツィヒまで購入してしまったのです。
これは、さすがに皆さんには言えません。そこで切符渡しを拒否しながら、差額がいくらになるか必死で計算しました(焦っていて、なかなかできず)。すると、2倍になるかと思った切符が、距離を乗るためか意外に安いことがわかりました。そこで、ここは強引に、私の負担とさせてもらいました。
もう、ヘトヘト。とにかく帰って、コンサートを聴こう、と気を取り直してまもなく。ヴィッテンベルクを過ぎたあたりで、列車が停車してしまったのです。一向に動く気配がない。充分あったはずのコンサートまでの時間が、どんどん減ってゆきます。すると放送があり、何らかの事情で、経路がハレ経由(←遠回り)に変更になる、というのですね。ここに至って、コンサートに間に合わない、という可能性がかなり出てきました。これでコンサートもアウトということになったら、私はどう責任を取ったら良いのか。脂汗を流しながら時計とにらめっこする時間と相成りました。
幸いにも、ホテルに戻って着替えのできるタイミングで、ライプツィヒ着。以上が、「私が仕切るとろくなことはない」という事件の真相です。皆さんに迷惑をおかけして、自信喪失です。なお支出分は、しかるべき筋からお助けをいただきました。ありがとうございます。長くなりましたので、コンサートについては次回に。ふーっ。
コメント
_ 久美 ― 2015年06月22日 09時35分23秒
先生、お帰りなさいっ!もーこのクライマックス、ハラハラしすぎて疲れました(ぐったり)。先生もお疲れになったでしょう。でもみなさん楽しそう。もう1人添乗員さんがいてくれたらいいですね。もう1人て、先生は添乗員さんじゃないですけど(笑)
_ taisei ― 2015年06月22日 13時15分34秒
やった、やった、やってくれました~!さすが教授です!また、その様子が手に取るようによくわかるように書かれていて・・・!この表現力は(その著作からわかっていることとはいえ)素晴らしいですね。迫真のスリルと心理描写(笑)!確かに今回の(1つの)クライマックスです!音楽ツアーとしては別にあったのでしょうが、私たちにとってはこれがクライマックスです!
_ taisei ― 2015年06月22日 15時09分39秒
更に言うならば、前回までは、教授個人のトラブルで終わっていたのが、今回は、ツアーの他のお客様までも巻き込んで、質・量ともに大幅にバージョンアップ!しています。一つ間違えば、ほかのお客様に大迷惑をかけるという局面。本人の心理と今度は他者との関係が絡み合うという複雑な発展を遂げています。いや、発展するこのドラマは凄い(笑)来年もし行かれるとしたらどうなるのでしょう・・・・
_ I招聘教授 ― 2015年06月22日 21時23分34秒
う~ん(汗)。taiseiさんも久美さんも、来年いっしょに行きましょう。
_ べんだー ― 2015年06月23日 01時17分37秒
先生、ご旅行お疲れ様でした!毎日、記事を楽しく拝見しておりました。
ヴィッテンベルクの駅にまつわるアクシデント、実は私も経験したことがあるのを思い出しました。私が以前ドイツ国内を旅行した際、夕刻ライプツィヒを出発し、夜の遅い時間にレーゲンスブルクに到着、一泊し翌日市内観光をと計画した日がありました。ところがライプツィヒで本来乗るべき列車とは逆方向(ベルリン方面)に向かう列車に乗ってしまったことに気づき、下車して引き返した駅がヴィッテンベルク駅であったことを思い出しました。車体脇にMünchenやらNürnbergやら向かうべき方向の都市が書いてあったものでその列車に乗ったのですが、ドイツの列車は行き先だけでなく、ご親切にもどこを経由してきたかまで車体脇の電光掲示に表示をしているのだということを、その経験を通して初めて知った次第です...^^;
ヴィッテンベルクの駅にまつわるアクシデント、実は私も経験したことがあるのを思い出しました。私が以前ドイツ国内を旅行した際、夕刻ライプツィヒを出発し、夜の遅い時間にレーゲンスブルクに到着、一泊し翌日市内観光をと計画した日がありました。ところがライプツィヒで本来乗るべき列車とは逆方向(ベルリン方面)に向かう列車に乗ってしまったことに気づき、下車して引き返した駅がヴィッテンベルク駅であったことを思い出しました。車体脇にMünchenやらNürnbergやら向かうべき方向の都市が書いてあったものでその列車に乗ったのですが、ドイツの列車は行き先だけでなく、ご親切にもどこを経由してきたかまで車体脇の電光掲示に表示をしているのだということを、その経験を通して初めて知った次第です...^^;
_ 優@1&4&6&7&14&32 ― 2015年06月23日 11時41分21秒
お帰りなさい。そしてお疲れ様でした。
「クライマックス」、手に汗握りながら読みました。
普段ならばなんでもないことでも、一つトラブルが発生するとパニックになってしまい冷静になれくなってしまいますね。
外国で焦ったことは1回だけありました。街中の駐車場から出るときに、出口のゲートのバーが故障なのか上がりません。事務所に行っても誰もおらず呼び出しボタンなどという便利なものもありません。とりあえず車から降りて駐車場の入口まで歩いて行ったら従業員がノンビリと戻ってきました。事情を話すとゲートを開けてくれましたが、ごめんなさいの一言もありませんでした。運転していたのは夫でしたが、2人ともパニック寸前でした。
「クライマックス」、手に汗握りながら読みました。
普段ならばなんでもないことでも、一つトラブルが発生するとパニックになってしまい冷静になれくなってしまいますね。
外国で焦ったことは1回だけありました。街中の駐車場から出るときに、出口のゲートのバーが故障なのか上がりません。事務所に行っても誰もおらず呼び出しボタンなどという便利なものもありません。とりあえず車から降りて駐車場の入口まで歩いて行ったら従業員がノンビリと戻ってきました。事情を話すとゲートを開けてくれましたが、ごめんなさいの一言もありませんでした。運転していたのは夫でしたが、2人ともパニック寸前でした。
_ taisei ― 2015年06月23日 23時17分47秒
私も、一昨年ライプツィヒに初めて行った時によせばいいのに自販機でチケットを買おうとして最後の一つ手前でどうしてもそこから進まず、カウンターに言いに行っても悲しいかな片言の言葉では全く意を尽くせずパニックになっていた処、「どうされましたか?」と現地で日本語を学んでいるというドイツ人に助けて貰った(その方が日本人と話したことは初めてだったそうです)奇跡の様な体験があります。
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