総理はいい人?2009年12月28日 11時21分31秒

学生さんの中には、何もそこまで、と思うぐらい、「いい人」がいます。すばらしい。じゃあ誰がいい人なのか、という話になると必ず問題になるのが、「いい人」の定義です。いま世間で、良かれ悪しかれいい人だ、と言われているのは、鳩山首相ですよね。ああいう人をいい人と言っていいのか、と、考え込んでしまいます。

とりわけひっかかるのは、以前他の政治家には、秘書と政治家は同罪、自分なら議員のバッジを外す、と言っていたにもかかわらず、自分に同じことが起こると責任を取らない、という点です。

意見が変わるのは、かまわないと思います。昔はこう思っていたが、今はそうは思わない、というのは、悪くない。人間は学習し、成長していくものだからで、むしろ、そうならない人の方が問題です。

しかし、それで人を攻撃した場合には、話が違うと思うのですね。他人は攻撃するが、同じ矛先が自分に向かってきたら逃げる、というのは卑怯者のすることで、それをするなら、よほど真摯な謝罪がなくてはならない。野党だから、与党だからということでは、絶対にないと思います。

要するにそれは、自分に甘く他人に厳しいという、このブログでもすでに述べた、最悪の形になると思うのです。そういう人を、いい人と言いたくありません。ほとほといやになりました。

「めくる」ことの効用2009年12月29日 22時37分50秒

本や楽譜を買うのは、私にとって、仕事の一部です。洋書、洋楽譜はいつも、本郷に店舗をもつ専門店、アカデミア・ミュージックから買っています。アカデミアさんには学会がお世話になっており、私の弟子も複数雇っていただいていますので、他の購入ルートには目もくれず、アカデミアさんを応援しています。

新刊は毎週届きますので、年間の総額が、30万から50万くらいになります。そのほとんどは、いつか必要になるに違いない、と思って確保した本。でも考えてみると、そう思って買い続けるほどには、私の人生に残りがありません。このままでは、死後残されるゴミを増やし続けるだけです。やはり買う以上は活用しないと意味がない、と、はっきり思うようになってきました。

とはいえ、買ったものを全部読むのはとうてい無理です。そこで思い出したのが、昔、恩師の1人である海老澤敏先生が洩らされた言葉。先生は、本を読む以上に、新しい本をめくるのが楽しい、とおっしゃっておられました。これこれ。ここには、読まないまでもめくっておけば、ただ本棚に入れてしまうよりずっといいし、知識の広がりにも役立つ場合がある、という知恵が語られています。

そこでめくってみたのが、ジョン・ライス著『ステージのモーツァルトMozart on the stage』(Cambridge、2009年)という本。モーツァルトのオペラを当時の劇場の実情とからめて論じたもので、委嘱、ギャラ、台本作者、歌手、リハーサル、改訂、宣伝、劇場、舞台装置、聴衆、上演、受容といったキーワードが見て取れます。

めくっただけですから内容紹介はできませんが、目を惹かれた部分があります。それは、モーツァルトのオペラはほとんどカーニバル・シーズンの所産であり、そのことが一般に忘れられている、というくだりです。著者によると、《ドン・ジョヴァンニ》第1幕の舞踏会場面で発せられる「自由万歳 Viva la libertà! 」という言葉は、18世紀のヨーロッパが宗教や道徳の拘束からの自由を満喫したこのシーズンの、モットーであったとか。仮面を付けた人々が階級を超えて社交を楽しむさまに、モーツァルトはイタリア旅行中に遭遇しました。こうした場面は、舞台にも好んで用いられたそうです。

なるほどそう考えると、この場面におけるこの言葉が自然に受け取れますね。もちろん、モーツァルトがこのメッセージに政治性を込めたという広く見られる解釈が、必ずしも否定されるわけではありませんが・・・。

仰天の出来事2009年12月30日 15時43分50秒

ビルの高い階で、仕事の打ち合わせをしていました。では1階の会場へ、と担当者と2人で部屋を出たら、廊下の向こうはすっぱりと切れ落ちていて、危なく落ちるところ。私は事なきを得ましたが、勢いよく出てきた担当者は、そのまま落下してしまいました。やや間を置いてから、「ギャッ」という声が聞こえてきました。

ずいぶん具体的な、こわい夢です。これは、昨夜あったことと関係がありそう。昨夜某所で、私よりずっと年配の方とお食事をしました。お酒は、日本酒を少々。楽しく過ごして店を出、タクシーを探しにその場を一瞬離れて戻ってみると、お相手が歩道に仰向けに倒れ、意識混濁の状態になっているではありませんか。仰天した私は、お店の方の助けも借りながら119番しました。

なかなか来ないものですね。一刻千金の思いで待っていると、救急車から電話がかかり、状況を尋ねられました。しかし、拍子抜けするほど、のんびりした調子なのです。切歯扼腕する私に、「両方焦っても仕方ないですから」と、お店の人。たしかに。

私は倒れたところを見ていないので、状況の判断がつきません。到着後、車内で検査が行われ、大丈夫だろう、ということになりました。その後タクシーでお宅までお送りし、何でもなく終わったのですが、びっくりしましたね、ほんとに。ちなみに私は、救急車で運ばれたことは2回ありますが、呼んだのは初めてです。年末、皆様お気を付けください。

〔付記〕友人から、「一刻千金」「切歯扼腕」の使用法はおかしいのではないか、と指摘がありました。「一刻千金」はたしかに変ですね。「一日千秋」というのもあるが、ちょっと違うようです。「切歯扼腕」はいいように思いますがどうでしょう。四字熟語、もう少し勉強します(_ _)。

2009年を振り返る2009年12月31日 20時38分54秒

大晦日、年の押し詰まった頃、パソコンに向かって1年を回顧することが日課になりました。考えてみると、お客様にはお正月に過去のことを読んでいただくことになってしまいますね。来年度は前倒ししましょう。

2009年は、おかげさまで、たいへんよい年でした。体調が安定していたことが、その大前提です。以下、今年のベストテン。

1.リフキン氏を招聘しての《マタイ受難曲》公演が実現。6年にわたる相模原市「バッハの宇宙」シリーズの仕上げでした。

2.著作を2冊出版。『バッハ/カンタータの森を歩む 第3巻 ザクセン選帝侯家のための祝賀音楽/追悼音楽』(東京書籍)、『「救済」の音楽』(音楽之友社)。

3.国立音楽大学音楽研究所のバッハ・プロジェクトの2年目が無事終わり、くにたちiBACHコレギウムによるカンタータ2曲、モテット1曲のコンサートを開催。

4.博士論文の指導が延べ9人に増加。結果を出してくれた学生さんが多く、「教える」ことのやり甲斐と喜びを実感。

5.いずみホールで、ウィーン音楽祭開催。楽友協会合唱団に感激。ライプツィヒ・バッハ・アルヒーフと提携してのオルガン・シリーズも好調。

6.すざかバッハの会で2年にわたる「バッハ最先端」シリーズを完遂。

7.「楽しいクラシックの会」が23年目を迎え、例会に加えて、小林一男、河原忠之、久元祐子、武田忠善、坂口弦太郎、山崎法子、三好優美子さんらのコンサートを開催。

8.日本音楽学会会長としての2期目がスタート。個人的には、リフキン氏の《ロ短調ミサ曲》講演会をサポート。

9.大学の地方公演で北九州と熊本を訪れ、卒業生たちと再会。合唱コンクールの審査で広島を訪れるなど、西日本の仕事に恵まれた年でした。

10.ワイン愛好が進展。少しわかるようになり、反比例して、ビールをほとんど飲まなくなりました。

こんなところです。公私にお世話になった皆様、ありがとうございましたm(_ _)m。どうぞよいお年をお迎えください。