独創的な解説2011年01月18日 23時49分20秒

モルゴーア・クァルテットの定期演奏会を聴いてきました(東京文化会館小ホール)。3つのオーケストラのトップ奏者によって構成されている弦楽四重奏団です。ソ連/ロシア特集で、ストラヴィンスキーの《コンチェルティーノ》、カプースチンの弦楽四重奏曲第2番、モソロフの第1番、プロコフィエフの第1番という、意欲的にして秀逸なプログラム。演奏も完成度が高く、たいへん面白く聴きました。4人のおじさんがにこりともせず演奏している、という謹厳なイメージですが、腕は確かです。

そのプログラムに、なんと、林光さんが解説を寄稿していました。これが、自分の目で大所高所から作品を記述する、独創的なものなのです。達人の自在さにすっかり感心し、もって範としたい、と思いました。

明日は、ケラスのチェロを聴きに、トッパンホールに行きます。予習しようと思ってバッハの無伴奏を聴きましたが、すばらしいですね。楽しみです。

明確な教育理念2011年01月19日 10時52分52秒

前期、後期と通った聖心女子大学の授業が、今日で終わりました。後期はバッハをテーマとして進め、今日はバッハの晩年と死、受容について話しました。鑑賞は、《ゴルトベルク変奏曲》、《ロ短調ミサ曲》、ジャズ化されたバッハです。

これほど気持よくできた授業も、そうありません。とにかく、学生たちが勉強熱心。授業態度もよく、リアクションペーパーを使っての感想や質問も、毎回、どんどん寄せてくれました。終了後、サインを求めてくる学生さんの顔を見ると、いい表情なのですね。高いものを求めるひたむきさが窺えるのです。ああ、大事なことが通じる人たちなんだなあと思って、嬉しくなります。

つまり私は、聖心女子大学という大学のすばらしさに、感嘆しているのです。校風に統一性があり、大学の教育理念が、すみずみまで浸透している。どんな学生を育てたいかがはっきりしていて、そのための指導がしっかり行われている、という感じなのです。もちろん、学生によって合う合わないが生じる可能性は、考えられます。でも私は、私学はこれでいいと思う。建学の理念を重んじつつこのように伝統を作っていけば、「聖心を出た学生さんなら」という信用が、社会に作られてゆく。ものわかりよくやっているだけでは、それは不可能です。

解放感と一抹の(ほんのわずかな)寂しさを感じながら美しいキャンパスを横切り、本務校に向かいました。聖心の皆さん、ありがとうございました。

死の夢2011年01月21日 08時01分11秒

死の夢。フルートが吹けなくなり、議論に自分だけ参加できなくなる、崩壊過程。疲れきり、見知らぬ宿にもぐり込んで倒れている情景。

ほぼ1時間ごとに目が覚めましたが、夢は断続し、びっしょり汗をかいていました。なぜこんな夢を見るんだろう、お迎えが近いのだろうか、それとも合唱コンクールに遅れてはいけないと緊張していたのだろうかと考えて、思い出しました。昨日、ある方から、配偶者を亡くされたお話を伺い、わが身になぞらえて聞いていたのです。

寝不足のまま起き出してしまい、念のため、会場を確認。埼玉県ですから南浦和に違いありませんが、もしものことがあります。

連盟のホームページは、二年間も更新されていません。あちこち探してみると、どうやら久喜のようです。えー、遠いじゃん。というわけですぐ飛び出し、今向かっています。ゆっくり起きたら大変なことになるところでした。

候補は662011年01月22日 08時33分15秒

今朝も7時半に出て、久喜に向かっています。宿泊のオプションもあったのですが、通いにしたら、寝に帰るだけになってしまいました。でも勤めておられる方はそれが普通なわけですよね。お疲れさまです。

この催しは、埼玉県ヴォーカルアンサンブルコンテストというもの。金曜日は、高校の部です。出場校がなんと66もあり、強豪校は25名以内という人数制限に合わせて、いくつもに分かれて出場します。ステージは、6分以内。そのすべてに講評を書き、採点を行うのです。

しっかり練習して作ってくる高校生のレベルは、とても高い。嬉しいことですね。それだけに残念に思うのは、本当の名曲を聴く機会が少ないということです。たとえばきわめて多くの団体がハンガリーの作品を歌いましたが、いかにも合唱プロパーという曲が多いように、私などは思うわけです。日本の曲ももっとあっていいし、歴史上の名曲も、たくさん登場してほしいと思います。今日は、中学生の部です。

沿線の発展2011年01月23日 07時54分01秒

早朝の久喜通い、これが3日目です。気持ちよくやらせていただいているのに加え、今回はまずまず納得のいく採点ができていると感じるものですから、前向きの気持ちで通っています。

それにしても驚くのは、東北線沿線の発展。私は浪人時代、蓮田に家があったのですが、当時はバスの最終が8時15分。一時間ぐらいの道を歩いて帰ったものでした。東北線の駅は、大宮、蓮田、白岡、久喜、栗橋の順になっていました。

しかし今は、土呂、東大宮の次が蓮田で、白岡の次に新白岡、久喜の次には東鷲宮の駅があります。しかも宇都宮線という新線が並行していて、本数も実に多い。たいへんな発展ぶりです。罪深い浪人時代にバッハの音楽に出会ったとよくお話ししていますが、それは蓮田に住んでいる時のことでした。今昔の感があります。

自分を見つめてみると2011年01月26日 10時41分57秒

連続3日間の合唱コンテストで疲れてしまい、日常の仕事をこなすのに難渋しています。でも今回、審査委員長のような形でフルにお付き合いさせていただいて、本当に良かったと思っています。今回ようやく、ある程度の自信をもって採点できるようになったと感じているからです。

いや、その程度で自信もっちゃいかんよ、とおっしゃられれば、一言もありません。もっと勉強しなくてはならない。しかし疑心暗鬼、半信半疑といった段階は、何とか越えられたかな、と感じているのです。え~そんな状態でやってたの、とおっしゃられれば、これまた一言もないのですが、激戦の審査にはそれはつきものだ、ということもできるかと思います。要するに、自分の判断を客観視できるようになってきた、ということです。

たとえばどんなところかといいますと・・・。団体Aは、声といい音程といいリズムといい完璧に鮮やかで、何とうまいのだろうと、びっくりして聴く。しかし、感動はとくに受けません。団体Bは、普通の合唱の延長のようでもあるが、作品に深くわけ入り、感動にあふれている。みなさんであれば、どちらに高い点を付けますか。こうした場合、自分は絶対にBにいくことがわかりました。アマチュアの方々の音楽であれば、めざすべきは後者だと、確信をもつようになりました。

そんな聴き方をしていて、涙の出た演奏が2つありました。1つは、レディーの部に出演した「ピアチェーレ」という合唱団。和声が雰囲気にあふれて、濃密なのです。女声でハーモニーの深さを出すのは簡単なことではないと思うのですが、それがみごとにできている。もうひとつは、大激戦だったユースの部に出演した「ラ・メール」。熱く内容に迫る、感動的な演奏でした。どちらも埼玉県知事賞を獲得されましたね。おめでとうございます。他にも優秀な合唱はたくさんありましたが、今日は2例のみで失礼します。

今月のCD/DVD2011年01月27日 23時19分54秒

今月はCDの点数がとても少なかったので、輸入DVDに頼る形になりました。

入手したうちで面白かったのは、2009年のザルツブルク音楽祭オープニング・コンサートの録画です。演奏は、アーノンクールとウィーン・フィル。ウェーベルン編のシューベルトの舞曲、ヨーゼフ・シュトラウス(!)のワルツとポルカ、シューベルトの《グレート》という、一癖も二癖もある、オール・ウィーン・プログラムです。聴いてみると、観光的なイメージを拒否して芸術家の実存を掘り下げる、気迫にみちた演奏がさすが。中でも、ヨーゼフ《うわごとワルツ》の激しさに驚かされました。

逆に癒されたのは、澤畑恵美さん(ソプラノ)が谷池重紬子さんのピアノで歌った、「にほんのうた2」です。中田喜直、團伊玖磨らのよく知られた歌が心温かく透明に歌われていて、一点の曇りもありません。

三位にはベートーヴェンの交響曲全集(パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ドイツ・カンマーフィル)を入れました。CDで定評を得た名演の映像化で、4枚セットでなんと5千円を切るお買い得なのです。分売もあるそうですが、この値段なら、全曲揃えたいですよね。

寿命が長い!2011年01月30日 13時56分06秒

プレゼンテーションの仕事がしばらく続くことを理由に、ノートパソコンを購入しました。今までDynabookを使っていましたが、カーソル跳びがひんぱんに起こり(私の使い方のせいかもしれません)、使いにくいなあと思っていたところへ、キー入力が利かなくなる故障が発生。この機会にというわけで、レッツノートの秋冬モデルを購入しました。携帯型、ドライブ付きのCF-S9というモデルです。

Dynabookに比べると厚みがあり、スマートさはイマイチ。しかしディスプレイといいキーボードといい、とても使いやすいです。なにより、14.5時間というバッテリー寿命の長さはすばらしい。インジケーターがなかなか減らず、安心して使えます。今日は大阪に新作オペラの公演を見に行くのですが、家を出てからずっと使っていてもう静岡県だというのに、バッテリーはまだ、ちょっと減っただけなのです。

新マシンを使った初仕事は、東京バロックスコラーズでの講演会でした。「バッハとコラール」というテーマは意外に講演したことがなく、しっかり準備をして臨みました。西大島という場所も、まったくなじみのないところでしたが、ずいぶんお客様が来てくださったのは、バロックスコラーズという団体の力量でしょうか。熱心なバッハ・ファンの方々の前でお話しし、質疑応答を行う楽しみは格別です。

ここの講演会の売りは、休憩後に行われる指揮者・三澤洋史さんとの対談。三澤さんのアイデア豊富な問いかけに対応しているうちに、自分では考えていなかった角度からの考察が生まれ、視野が広がるのです。その意味で、ディスカッションはきわめて重要だということを、ディスカッションを忌避しがちな学生さんにも考えていただきたいと思います。

2月のイベント2011年01月31日 23時59分15秒

わあ、もう2月です。2月、結構あるんですよ。

2日(水)は立川アミューで、「楽しいクラシックの会」主催の、年1度のコンサート(19:00から)。朋友渡邊順生さんに、チェロとフォルテピアノのコンサートを頼みました。チェロは名手の花崎薫さん、プログラムは、オール・ベートーヴェンで、第2番、第3番、第4番のソナタと、《魔笛》の主題による7つの変奏曲。まだ少し席があるようです。当日売り2000円です。

6日(日)と11日(金)に、シュタイアーの弾く《ゴルトベルク変奏曲》のコンサートで、プレトークを行います。6日が静岡音楽館AOIで、13時から。タイトルは「解き明かされつつある謎」としました。11日は松本のザ・ハーモニー・ホールで、14時から。こちらは「躍動する数の論理」というタイトルでお話しします。

13日(日)は、すざかバッハの会。オペラの思い出が冷めやらぬ須坂ですが、今回はクラシック音楽入門講座の第7回。「大作曲家の出発--若き日の作品を聴く」と題して、旭日昇天の名曲をお届けします。

26日(土)13:00は朝日カルチャーセンター横浜校のバッハ講座。ワイマール時代その1で、若き日のオルガン曲を取り上げます。

「バロックの森」はちょうど今週、プロイセン宮廷の音楽を特集してお送りしています。フラウト・トラヴェルソの音楽がたくさん登場します。最後の週、28日からはハプスブルク宮廷の音楽の特集で、目下収録準備中です。こちらもよろしくお願いします。