8月のCD2012年08月30日 23時23分50秒

毎日新聞・今月のCD選は、3人の評者がかなり重なりあった先月とは対照的に、全員別々、計9種のCD/DVDが推薦されました。このほうがいろいろな演奏を拾えるのでいいにちがいないのですが、重なり合ったときの、自分の選考がオーソライズされたような嬉しさはありません。コンクールの審査と、同じ心理ですね。

私は昔、カラヤン指揮、ウィーン・フィルというレコードで、《カルメン》を聴き始めました。ゲルマン風のシンフォニックな演奏で、ギロー版の管弦楽伴奏付きレチタティーヴォを使っている。そういう壮大路線だと今はちょっと、と思いつつラトル指揮、ベルリン・フィルの新録音(EMI)を聞きましたが、さすがにそれはなく、オペラ・コミック風の軽妙かつ躍動的な演奏になっています。作品の魅力がやはり一等で、ドン・ホセを演ずるカウフマンの表現力がすごいです。2枚組の全曲CDに抜粋のDVDがついて4,800円というのは、売れ筋の強みですね。

2位に推したのは、「ドラマ」と題する、バッハの世俗カンタータBWV201、207、213のセット。これも、BWV213(岐路に立つヘラクレス)はDVDです。L.G.アラルコン(アルゼンチン人)指揮 ナミュール室内合唱団(ベルギー)、レ・ザグレマンという輸入盤をタワーレコードで見つけたときには、知らないアーチストだし、ともあれ買っておこう、という程度の気持ちでした。しかし聴いてみて、はつらつとした見事な演奏にびっくり。新世代の台頭を、まざまざと感じます。7月の渡邊順生さんの《ヴェスプロ》に出演したシェーン(ソプラノ)が、テノールの櫻田さんとともに出演しています。

林光指揮・ピアノ・編曲 東京混声合唱団による「日本抒情歌曲集」 (フォンテック)を、もう1席に含めました。なつかしい歌の数々が収められ、節度ある高貴な編曲によって、曲の良さが心に染みわたります。林先生のよき遺産だと思います。