天才論2013年05月05日 08時44分41秒

車中よく読むもののひとつが、将棋の本。最近面白かったのは、加藤一二三九段による『羽生善治論~「天才」とは何か』(角川oneテーマ21)です。

オビに「天才が天才を語る」とあるのは、加藤九段が十代の頃、「神武以来の天才」と言われていたから。天真爛漫、将棋のことになると脇目もふらず、という感じでファンが多い棋士ですが、羽生さんへの分析が多角的で鋭いのには感心しました。他の同業者に対しても好悪の隔てなく温かい論評をされていて、なかなかできることではないと思います。

そもそも天才論は、美学のテーマのひとつ。作曲と将棋は頭の使い方において似たところがありますので、音楽における才能を考える上でも参考になります。いろいろな切り口のひとつに「好戦的」というのが挙げられていたのには、意表を突かれました。羽生さんの将棋は駒のやりとりが多く、チャンスがあればすかさず打って出てくる、というのです。なるほどねえ。

私も羽生さん好きですが、二大タイトル(竜王戦、名人戦)に分の悪い強者がいるので、これからが心配です。目下進行中の名人戦でも、森内名人に第1局、第2局と横綱相撲を取られ、なすすべなし、という感じなのです。連休明けの9日、10日が第3局です。