大阪人情2013年05月16日 12時10分30秒

「人情」という言葉は、やっぱり、東京より大阪にふさわしいですね。この言葉が頭に浮かんだのは、昨夜(15日)のいずみホール。解散する東京クヮルテットの、お別れ公演のさなかでした。

この日は最初から一種特別な感慨が共有され、客席に、熱さと集中力がありました。演奏者にもこのことははっきりと伝わっていて、演奏を通じて、客席にフィードバックされた。拍手はいつにも増して長く熱く、室内楽のコンサートには珍しい、スタンディング・オーベーションが起こりました。

いずみホールの聴衆が温かいとアーティストによく言っていただくのですが、私の見るところ、人間的な情愛を込めて演奏を聴かれる方が多いようです。だから、東京クヮルテットありがとう、最後、気持ちをいれて聴きますよ、という雰囲気になる。いずれにせよ、室内楽大好きというお客様がこうして集まり、ホールの空間で貴重なひとときを過ごされているさまに立ち会い、幸福に感じました。

演奏のクォリティについては言うまでもありませんが、この夜のコンサートの爽快さは、そのまま弦楽四重奏の本質に通じるものだったと思います。すなわち4人の音楽家が対等の立場で参画し、譲り合い立て合って連携を取りながら、ともどもハーモニーを作り上げていく。その姿勢が、爽快なのです。室内楽の時代がまた来ているのかもしれない、と思います。