推進力溢れるオルガン2014年03月23日 09時16分25秒

21日(金)は、バッハ329歳の誕生日。いずみホールで、オルガン作品全曲演奏会が開かれました。出演はアメリカ人のデイヴィッド・ヒッグスさん(56)。快活で笑顔のすてきな方です。

これが、満員御礼だったのですね。プログラムは小曲中心、ヒッグスさんの知名度も高くはなかったと思うので、完売は意外にして、ありがたいかぎり。水曜日の不ヅキは、これと関係していたのでしょうか。

抒情性に富んだブリュンドルフさん(前回)とは対照的に、ヒッグスさんの演奏はエネルギッシュで推進力に溢れ、音楽が大きく広がります。とくに印象的だったのは、ノイマイスター・コラールなど初期作品に対する闘志満々の取り組み。演奏次第で、初期曲もずいぶん立派に響くことがわかりました。《オルガン小曲集》の諸曲を原コラールとバッハ編曲をすべて対比したのもわかりやすく、最後、トッカータとフーガヘ長調BWV540が壮大な盛り上がりとなって、コンサートが終わりました。

満員のお客様が高い集中力で耳を傾けるというシチュエーションは、演奏者にとっては願ってもないもの。ヒッグスさんも大喜びしておられたので、ぜひこの勢いを保っていきたいと思います。次の出演者はダニエル・ロートさん、日にちは7月4日(金)で、大フーガを目玉に置くプログラムです。

自信が芽生える2014年03月25日 12時06分32秒

23日(日)に、29日にさくらホールで開かれる合唱団CANTUS ANIMAE《ロ短調ミサ曲》公演のオーケストラ合わせがありました。

猛練習で盛り上がっている、という情報はしきりに入っていましたが、じつのところ、不安もありました。ピリオド楽器のオーケストラと響きを融合させて歌うのは経験を要することで、張り切りすぎるとかえってダメ。1日かけてどのぐらい歩み寄れるか、というぐらいの意識で、練習場に出かけました。一般論として、合唱団にとって、オーケストラ合わせは鬼門なのです。

でも身びいきなしで、とてもいい練習でした。合唱団にはっきりした気持ちの備えがありましたし、指揮の雨森文也先生は、私の5回にわたるレクチャーの内容をすべて頭に入れた上で、オーケストラ・パートも詳細に勉強されていたのです。奏者は大西律子さんが集めてくださった方々で、なじみの顔もかなり。そのみんなが、合唱団といっしょの音楽作りに、熱心にまた謙虚に、入ってきてくれたのですね。そうそうないことだと思います。

うたい文句にしている「研究と実践の共同」が、器楽のレベルでも確保される見通しがつき、本番に向けて、一定の自信が出てきました。土曜日の18:30、さくらホールにぜひお出かけください。

今月のCD2014年03月27日 13時05分04秒

すごく評判になっているアンドレア・バッティストーニ指揮、東フィルによるレスピーギ/ローマ三部作の2013年ライヴ録音(サントリーホール)が、新譜として出てきました(デノン)。

確かにすばらしいですね。地中海の空と海を思わせるカラッとして明るい響きが沸き立っていて、日本の会場で日本のオーケストラが演奏しているとは思えない。こういう若手が出てきたのなら、これからのオーケストラ・コンサートは楽しみになりますね。

レスピーギのローマ三部作というとどうしても影が薄いのは《ローマの祭》ですが、今回はその躍動感が、とくにいいと思いました。叙景に歴史を加えた構想が、なかなか。歴史という点でいえば、《祭》における巡礼の歌や、何より《松》におけるグレゴリオ聖歌の引用に、歴史をしのばせるオーラが欲しかったと思います。それが、単なる旋律に聞こえますので。

モーツァルトのピアノ協奏曲第25番と第20番の、アルゲリッチとアバドによるルツェルン・ライヴ(グラモフォン)もさすがにいいですね。ジャケットの表紙に若い頃の写真が使われていたのにはびっくりしました。

「古楽の楽しみ」新年度2014年03月29日 10時09分12秒

NHK・FM朝6:00からの「古楽の楽しみ」が、6年目を迎えることになりました。長くて5年、という認識でやっていましたので、さらに続けられるとは思いませんでした。なにしろ渋い番組。テーマによってはよほどの通人しか知らない曲を毎朝1時間、ということもあるわけですから、こんなに時間をいただいて、ありがたいかぎりです。皆様のご支援と、番組スタッフの支えのおかげです。

新年度は華やかに迎えたいと思い、《ブランデンブルク協奏曲》のリレー演奏を取り上げました。4月7日(月)は第1番です。ホグウッド指揮で初稿、アバド指揮のモーツァルト管とカフェ・ツィンマーマン(ピリオド楽器)で通常稿と、3つを聴き比べます。くどいかなとも思いましたが、全然違いますので、初めて聴く方はびっくりなさるでしょう。

4/8(火)は、第2番と第3番です。第2番はベルリン古楽アカデミーの全曲を聴き、第3楽章を、ミュンヒンガーで聴き比べ。トランペットの違いがテーマになりますが、このミュンヒンガー1972には、ニコレやヴィンシャーマンが参加しています。

第3番は短いので、全曲を2種聴きます。フルトヴェングラー指揮、ベルリン・フィルの1930年ライヴと、エイジ・オブ・インライトゥンメント管弦楽団。これまた、まったく違います。残った時間で、第1楽章の編曲を2つ流します。カンタータ第174番のシンフォニア(BCJ)と、スウィングル・シンガーズのスキャットです。

4/9(水)は、第4番と第6番。第4番はイ・ムジチ1984でまず全曲を聴き、その第2楽章を、ブッシュ1935とリヒター1967で聴き比べます。さらにフィナーレを、チェンバロ協奏曲への編曲版で。演奏はアポロ・アンサンブル(フランス・ピッチ使用)です。そのあと第6番をラ・プティト・バンドで聴いて、この日は終わります。

4/10(木)は、第5番。まずペライアのピアノ弾き振りで全曲を聴き、ピリオド2種で反復します。第1楽章がコープマン、第2・第3楽章が小林道夫~松本バッハ祝祭アンサンブルです。最後に第6番に第3楽章を、フライブルク・バロック・オーケストラの新録音(フランス・ピッチ使用)で聴いて特集を終わります。

14年度も趣向をこらしますので、早起きの方、どうぞよろしく。

4月のイベント2014年03月31日 09時10分18秒

ここ数日の多忙でご報告すべきこともありますが、年度も替わりますので、先に4月のご案内をしておきます。

4月2日(水)から、朝日カルチャー新宿校の新年度です。ワーグナー、バッハとも継続ですが、10:00からの《リング徹底研究》は、《ジークフリート》に入ります。2日と30日(水)で、第1幕を取り上げます。まずは、4作の始まり方の比較などやってみたいと思います。

13:00からの「《ヨハネ受難曲》徹底研究」、チラシ等では第2部の始めからとなっていますが、昨季のうちにもう少し進んでおり、第23曲の聖書場面から始めることになります。第24曲が、合唱との対話を含むバス・アリアです。4/30に2回目があります。

4日(金)は19:00から紀尾井ホールで、セレモア主催のコンサートです。久元祐子さんのピアノ、高関健さん指揮、新日フィルの出演で、オール・モーツァルト・プログラム(《魔笛》序曲、ピアノ協奏曲第20番、《ジュピター》)。司会で出演します。

6日(日)は14:00から、すざかバッハの会(須坂駅前シルキーホール)。《ヨハネ受難曲》講座を継続しますが、2月が雪で中止になりましたので、進度は新宿に抜かれました。こちらは、第2部の頭からです。

8日(火)から、オランダ旅行に出かけます。いつも同様少し残って、視察と研究に費やします。20日(日)までの予定。その結果、聖心女子大の授業が21日(月)からということになりました。今年はオーソドックスに、バッハの生涯と作品を取り上げます。

26日(土)は、朝日カルチャー横浜校の新年度です。「魂のエヴァンゲリスト」講座も、いよいよ最終段階。補章の演奏論をベースに、バッハ演奏の変化と発展を確かめます。

「楽しいクラシックの会」(立川錦町学習館)は、旅行のあおりで、29日(火)の9:30~11:30となりました。変則日程申し訳ありません。《リング》を終えましたので、《トリスタンとイゾルデ》に入ります。とりあえず、その第1幕です。

以上、よろしくお願いします。