スマートフォン応用編2010年07月17日 22時47分09秒

大阪に行くにあたり、ノートパソコンを持って行くべきか否か、迷いました。結局置いていったのは、スマートフォン(Xperia)でどのぐらいできるか、やってみようと思ったからです。

新幹線でさっそく遭遇した事態は、家で作ったトークの文案をプリントアウトして、そのまま置いてきてしまったこと。数え切れないほどあった、定番の失態です。

しかし考えてみると、ファイルは家のパソコンにあり、仕事用のフォルダはすべて、Dropboxで同期されている。そこで、Dropboxの自分用フォルダにXperiaからアクセスし、当該のDocファイル2つを、ダウンロードしました。それを開くツールとしては、OfficeSuiteが、デフォルトで入っています。ところが開こうとすると、エラーになる。この現象、結構、広く見られるようです。そこで、OffiViewerというツールをダウンロードして、無事見られるようになりました。これで自分の電子書斎に、移動中でもアプローチできるようになったわけです。大きな前進。携帯電話では見るだけだったスケジューラーにも、直接書き込めるようになりました。スマートフォン、使えますよ。

ところで、極楽とんぼさんから間接的に連絡があり、コメントが、どうしても書き込めない、とのこと。いただいたファイルを私もアップしてみましたが、たしかにはじかれてしまいます。しばらくして思い出したのは、迷惑投稿を閉め出すために、リンク入りのものは投稿できないように設定していることでした。コメント中のリンクはブログのタイトルに変更しましたので、申し訳ありませんが、いったん検索してからお入りください。

たのもーさんが、ホームページ時代の談話「名作選」を、pdfファイルにして送ってくださいました。「コインロッカー」の話も、その中に入っています。ご披露したいものもあるように思えてきましたので、少しずつ、当欄に載せていきます。

くにたちiBACHコレギウム発表会2010年07月18日 23時57分06秒

20日(火)の18:00から、国立音楽大学SPC(正門から入って突き当たりを左折したところにある建物)で行われる発表会の詳細をご案内します。指揮は大塚直哉さん、すべてピリオド楽器による器楽演奏付きで、大西律子(ヴァイオリン)、尾崎温子(オーボエ)、西澤央子(通奏低音)さんらが出演されます。結構豪華な名曲集なので、よろしければお出かけください。どなたでもお聴きいただけます。

1.カンタータ第39番《飢えた者にパンを分けてあげなさい》のアルト・アリア(第3曲) 高橋幸恵(博、Ms)/2.カンタータ第147番《心と口と行いと生活が》のソプラノ・アリア(第5曲) 川辺茜(博、S)/3.カンタータ第82番《私は満ち足りている》のバス・レチタティーヴォとアリア(第2・3曲) 千葉祐也(修、B)/5.カンタータ第105番《主よ、裁かないでください》のソプラノ・アリア(第3曲) 高橋織子(博、S)/6.《クリスマス・オラトリオ》のテノール・アリア(第41曲) 小堀勇介(修、T)/7.《マタイ受難曲》のアルト・レチタティーヴォとアリア(第5・6曲) 鈴木夏季(修、Ms)/8.同 ソプラノ・レチタティーヴォとアリア(第12・13曲) 原田智代(修、S)/9.同 ソプラノ・アリア(第49曲) 山崎法子(博、S)

10.カンタータ第78番《主よ、あなたは私の魂を》のバス・アリア(第6曲) 小林啓倫(修、B)/11.同 二重唱(第2曲) 古澤綾乃(S)、湯川亜也子(Ms)/12.カンタータ第179番《心せよ、神を畏れることが偽善とならぬように》のソプラノ・アリア(第5曲) 坂本久実(修、S)/13.カンタータ第110番《私たちの口は笑いで満ち》のテノール・アリア(第2曲) 宮西一弘(修、T)/14.カンタータ第198番《侯妃よ、どうか光をもう一筋》のソプラノ・レチタティーヴォとアリア(第3曲) 阿部雅子(博、S)/15.モテット《主に向かって新しい歌をうたえ》第1曲 全員

貫禄不足2010年07月19日 11時44分48秒

仕事柄、重い役割を振られることは、避けられません。5月の国際学会もそのひとつでしたが、16日(金)のパーティも、役割、重きに過ぎるものでした。パーティは、毎日新聞の仕事でお世話になっている、梅津時比古さんの「日本記者クラブ賞」受賞式。各分野の記者たちがしのぎを削るマスコミ業界で、クラシック音楽の担当者が受賞するというのは、すごいことですね。事実、初めてのことだそうです。この分野が併せて脚光を浴びることを、喜びたいと思います。

でも、喜んでばかりはいられない。なにしろ、そうそうたる発起人の名前で成立したパーティの乾杯の音頭が、私に振られていたからです。学会のパーティですと、乾杯の音頭は、最年長者が通例。今回は年長者、有名人が目白押しですので、本当に私でいいの、と問いかけざるを得ない状況になっていたわけです。

開始前、司会の女性に、私は何番目で、前に誰がスピーチするか、尋ねてみました。回答は、衝撃的。私は4番目で、先行する3人は、毎日新聞の朝比奈社長、文芸界の大御所、丸谷才一さん、声楽界の大御所、畑中良輔先生だというのです。そのあとで私が「乾杯の音頭」とは、何と恐ろしいことでしょうか。

会が始まってわかったのは、先行する3人が、スピーチの名人だということです。自在な語り口で聴き手をつかみながら、ユーモアたっぷりに、梅津論を展開する。私はといえば、型どおりの原稿を書いてきて、読み上げて務めを果たそう、としておりました。

というわけで、大先輩たちに完全に位負けし、どっと疲れの出るパーティでした。でも視点を変えれば、まだまだ人生には先の課題がある、とも言えそうです。今後は、乾杯してもおかしくないような貫禄の醸成に、努めたいと思います。

神に感謝?!2010年07月21日 08時22分28秒

音楽研究所バッハ演奏研究部門の前期小発表会、無事終わりました。ご来場の方々、ありがとうございました。

バッハの名曲ばかり、14曲(!)。今年の新人6名を含む若い人たちが精根尽くして演奏するさまは私にとってたいへん嬉しいものでした。こういう場をもてることはありがたいことだなあ、という思いが募り、最後には、「神に感謝するというのはこういうことではないか」とさえ思った次第です。本番のコンサートは、12月14日。どうぞ、今からご予定ください。

奮闘及ばず2010年07月22日 21時57分46秒

暑いですね。皆様、お元気でしょうか。今日はNHKの録音日でしたが、失態を演じました。

録音には、2つの段階の作業があります。第一段階は、テーマと時間に合わせた選曲と、使用CDの決定。時間がかかりますが、楽しい作業です。それが終わると、CDを、アシスタントの方々に送付します。CDは手元を離れますが、同じものを大学から借り出して、コメント執筆に使う。それが合理的だとわかりました。

今回もCDはすでに送ってあったのですが、執筆の時間がなく、未明に起き出して、執筆を開始しました。計算上は、十分に時間があります。ところが、2日連続で未明起床したためでしょうか、途中で、すごく疲れてきてしまったのです。筆が進まない。迷った末決断したのは、朝ではありますが、ビールを飲みながら仕事することでした。仕上げて送ってから、1~2時間寝よう、と計画しました。

ところが意外に時間がかかり、とうとう、ビールは飲んだが睡眠はとっていない、という限界状況で、家を出ることになりました。原宿からタクシーに乗りましたが、スタジオに入るのが、20分も遅れてしまいました。

スタジオで待機していてくださるアシスタントは、K嬢、Y嬢のお二人。誰ですか、二人合わせてKY嬢だ、などと言うのは。私はそんなこと、一言も言っていませんよ。そういう人たちではありません。

平身低頭でスタジオに入っていくと、K嬢が、「先生、どうやって来られましたか?バスですか?」とお聞きになります。何でそんなことを聞くんだろう、と思いつつ、「タクシーですが、なぜですか」と答えました。するとK嬢、「あまり汗をかいておられないので」とおっしゃるのです。私は察知しましたね、そのトーンに、失望感が混じっていることを。どうやらお二人は、私が猛暑の中を走り、汗みどろで、息も絶え絶えに到着すると思っておられたようなのです。K嬢は強く否定されましたが、私も、感受性の強い人生を60年も送ってきた人間。人さまの思いは、手に取るようにわかります。涼しげに到着してしまい、失礼しました。

スタジオの緊張感で疲れは吹っ飛びましたが、結局は、20分の遅刻が致命傷に。3本収録の予定が、2本で時間切れになってしまったのです。たいへん申し訳なく、平身低頭です。次回、4本収録をがんばります。

今日収録したのは、8月16日から始まる週の分です。8月は、ドレスデンの宮廷音楽を年代順に特集しました。16日(月)は、シュッツの《シンフォニエ・サクレ》です。シュッツには謹厳なイメージがあると思いますが、《シンフォニエ・サクレ》は彼のもっとも派手な、表出性に富む作品ですので、聴き応えがあるはずです。第1部~第3部から、11曲の宗教コンチェルトを選びました。

17日(火)は、17世紀の4人の作曲家、ファリーナ、ベルンハルト、アダム・クリーガー、ヴェストホフを並べました。知られざる佳曲を並べた、ちょっと自慢のプログラムです。ベルンハルトの宗教コンチェルトからとても美しい曲を見つけましたし、クリーガーの歌曲、ヴェストホフの無伴奏ヴァイオリン曲も、なかなか。どうぞお聴きください。あ、時間切れになってしまった18日(水)は、ゼレンカの特集です。

渡邊順生、グレン・グールドを破る2010年07月25日 09時35分49秒

「たのくら」で開始し、放送でその縮小版を出した、「ゴルトベルク変奏曲」 聴き比べ。面白くなり、朝日カルチャー横浜校でもやってみました。今度の候補は十種類です。

用意した演奏は、ランドフスカ、ロス、渡邊順生(以上チェンバロ)、グールド旧盤、ペライア、シフ(以上ピアノ)、ラクリン/今井/マイスキー(弦楽版)、グールド新盤、バケッティ、コロリオフ(以上DVD)の、10種類。これらを変奏3つずつリレーして、全曲を完遂しようというのです。

一通り説明し、さあかけようと思ったら、ランドフスカのCDが、ケースに入っていません。またか。今日も平謝りで、講座開始です。どこかで使ったまま、戻しておかなかったのでしょう。

がっかりしてふと見ると、CDはもうプレイヤーに入っている。なあんだ。謝罪の撤回を高らかに宣言し、CDを鳴らし始めると、響いてきたのは《平均律》のハ長調。間違えてもってきたのです。平謝りを再開し、結局スコット・ロスをトップとして、鑑賞をスタートしました。放送とは、順番を入れ替えました。

弦楽版が、後半の最初(第16-18変奏)になりました。第16変奏が管弦楽組曲のスタイルを模倣していることが、よくわかりますね。ランドフスカがなくなった結果、最後の3曲が残りました。ここでひらめいたのですね。受講生の方々のリクエストで、最後を締めよう!というアイデアが。

元気になった私は、「人生で一番大事なことは、転んでもタダでは起きないことである」と力強く宣言。どの演奏で最後を聴きたいか、挙手を求めました。DVDが、やはり強いに違いない。映像を、いま見たばかりですから。おそらく、グールド新盤とバケッティの争いかな、と予想しました。

さて結果は。渡邊順生さんが7票で、トップ。グールド(新)とバケッティが5票ずつで続き、シフが4票。あとは、コロリオフが1票、他はすべて2票ずつでした。そこで渡邊さんで最後を聴きましたが、やはりすばらしいですね。解釈が理にかなっていて、すみずみまで行き届き、繊細さも抜群です。

グールドへの賛辞をたくさん書いてきた私ですが、もうグールドの時代ではないのかな、という思いが、ちらりとかすめました。グールドの評価が下がったということではありません。しかしいつまでも古いものを聴き続けるより、新しいものに注目して楽しんだ方がいいと思います。


大化け2010年07月26日 11時08分30秒

ごくらくとんぼさん、コメントありがとうございます。論旨は文化論、教育論に深く触れる問題で、一筋縄でいかないのですが、今回はいただいたご指摘をヒントに、「大化け」について考えてみたいと思います。

この人がこんなにできるようになるとは、ここまで成長するとは、という現象は、たしかに、この世に存在します。私も、経験したことがあり、教育者としては最大の喜びに属する現象だと、理解しています。昔、どんな学生も大化けする可能性をもっている、だから全員を徹底して指導せよ、と檄を飛ばす先生を見たこともあります。でも実際問題として、そんなことができるでしょうか。

教育現場における教員の負担は、重くなる一方です。しかも教員というのは、学生の指導さえしていればいい、というものではない。自分自身を向上させ、研究、演奏等の実績を上げていかなければ、本当の意味の指導はできません。また大学のような組織から見ると、少子化で収入増の望めない昨今、大化けさえ念頭に入れた徹底指導、などということに制度的保証を与えることは不可能です。少ない人数、限られた時間で多くの人数を教育するとなれば、一定の効率を追求することは、避けがたいのです。

そうなるとどうしても、選別が生じてきます。試験を受けて上に進む、いい成績をとって発表の権利を得る、という形です。試験に落ちた人の中にも磨けば光る人はいるかもしれない、という可能性はもちろんあり、そう感じられる人も多数見ていますが、そこまで手を広げる余裕はとうていない、というのが正直なところです。

ですから、教育を受けている側にも、結果を出す、少なくとも姿勢を見せる、というアピールは、必要だと思うのです。結果はすぐに出せないかもしれませんが、この人は勉強している、という印象を評価する側に抱かせることは、どんな場合にも、きわめて有効です。考えてみると、いわゆる「大化け」も、地道に努力している人にだけ、起こることのように思われます。違うでしょうか。

一定の緊張感のもとに、正当な競争をすること。それがレベルを高め、人材を育成することには欠かせない、というのは、分野を問わない真理なのではないでしょうか。本当に勉強する人を応援したい、といつも思っています。これは、その逆もある、ということです。

過去の談話から(その1)~「スーパーシート」2010年07月27日 23時29分06秒

お待たせしました。過去のホームページで書き連ねた「談話」から、還暦記念誌で読者チョイスされたものを、少しずつご紹介していきます。
今日ご紹介するのは1999年1月14日に書いた第297話で、生まれて初めて航空機の「スーパーシート」に乗った体験を綴ったものです。東北大学、沖縄県立芸大と集中講義をはしごし、その帰路に起こった出来事です。

第297話「スーパーシート」

98年12月18日、集中講義を終えた私は、那覇の空港へ。2つの集中講義が隣接するという厳しいスケジュールを乗り越えたあとで、かなりの解放感がありました。そんな私が、帰路もスーパーシートを利用しようとしたとしても、それは、あなたがとやかくおっしゃることではないはずです。

今度の座席は、2階です。気分がいい。だって、エコノミーの人たちから隔離された、心なしか品位のある空間だからです。往路には利用しなかったスリッパのサービスも、帰路には利用することにしました。元を取らなくてはなりませんからね。

飲み物サービスの時間が近づくと、私は緊張してきました。今夜は、ぜひビールを飲みたい。しかし、頼み方はどうやるのがスマートだろうか。「お飲み物は何にいたしましょうか」と来たら、ただちに「ビールお願いします!」と言うべきだろうか。それとも、「何がありますか」と、ワンクッション置くべきだろうか。いきなり「ビールお願いします」では、物欲しそうに思われるかも知れない。かと言って、「何がありますか」と聞くのでは、スーパーシートに乗った事がないと思われてしまう-.-私は、周辺で進行し始めたサービスを盗み見ながら、何度もシミュレーションをして備えました。

やってきたのは、抜きん出て華やかな印象のスチュワーデスさん。彼女は緊張する私に愛想良く、「お飲み物はなににいたしましょうか、ビールもございますが」と言いました。どうです、このスマートな勧め方は。私の懸念は氷解し、ありがたく、この申し出をお受けすることにしました。ちなみに銘柄には、キリンを指定しました。

飲んでいるうちに、私の心には、新たな心配が兆してきました。それは、「2本目を頼んでいいものか、頼むとしたらどう切り出すべきか」という問題です。私はふたたびシミュレーションにとりかかりました。するとくだんの美女がやってきて曰く、「同じ銘柄のものをもう一本お持ちしましょうか」と。スマートですねえ。お客の心労を未然に予防する勧め方をしてくれるのです。私がこの申し出を泰然自若としてお受けしたことは、いうまでもありません。

こうして豊かな解放感に包まれるうち、私の心には、いっそう大きな心配が兆してきました。まだ時間はある、3本目もありうるのではないか、と思えてきたからなのです。

しかしいくらなんでも、もう1本、とは頼みにくい。どうしたら、客としての品位を落とさずに、3本目を依頼しうるか。もちろん私としても、くだんの美女の印象を損ねることは、したくありません。こうして私が思案していると、意外にも別のスチュワーデスがあらわれて、「ビールもっとお飲みになりますか」という。意表を突かれた私は、「あまりたくさん飲むのも・・」と、口篭ってしまいました。するとその方は、「どうぞいくらでも飲んでいってください」とおっしゃるではないですか。そこで私も、しめたという表情があらわれないように骨を折りながら、このお申し出をお受けすることにしました。

しばらく待っていましたが、ビールは届きません。すると最初の華やかなスチュワーデスがやってきて、「さっぱりしたウ-ロン茶でもお持ちしましょうか」と言うのですね。私は予想外の展開にうろたえながらも、「あの、別の方が、ビールをもう1本お持ちくだきるとおっしゃったのですが」と答えました。すると美女は、やや意外そうな顔をして姿を消しました(このとき、かなり傷ついた)。

しばらくして、この美女が、ビールをもってきてくれました。私は3本目にありつき、次第に上機嫌。次もぜひ全日空で空の旅を、と思い定めました。数乗れば、この方との再会も、あるかも知れない。その時彼女は、「ああ、あのスーパーシートのお客様だ」と思ってくれるでしょう。こうして飛行機は無事、羽田に着きました。

お別れです。私は1階席への階段を降りるに先立ち、彼女にこぼれるような笑顔を見せながら、お礼を言いました。ところが、言い終わるか終わらぬかのうち、私は階段から足を滑らせ、足を上にして仰向けになった形で、階段を下まで一気に滑り落ちてしまったのです。乗客がいっせいに、驚愕の視線を向けたことはいうまでもありません。

絨毯が敷かれていますので、滑降は、それなりに気持ちがよかった。下まで落ちて止まったとき、くだんのスチュワーデスは私に駆け寄り、ここは大いに強調したいのですが、私の手を握って、「お客様っ、大丈夫ですかっ」と叫びました。いまどき、すばらしい女性です。私は何事もなかったかのように立ちあがり、大丈夫です、ありがとう、とまことに紳士的な態度で述べて、悠然とその場を立ち去りました。実は、札幌で痛めていた右半身を再び強打してしまい、しばらく、半身不随(?)の生活を強いられました。

この出来事で私がもっとも懸念するのは、以後スーパーシートのビールが、2本までと決められるのではないか、ということです。そんなに酔っていたわけではありませんよ。もしかすると視線が別の方に行っていて、足元に注意が行き届かなかったのかも知れない--といずみホールの会議で反省を示したところ、社長から、札幌の転倒もそれだったのでしょう、と言われました。濡れ衣です(憤然)。

忙しい水曜日2010年07月29日 22時48分37秒

夏雲が湧き上がると同時に夏休みに突入していたのは、昔話。今週もまだ、正規授業をやっています。というわけで昨日の水曜日は、聖心女子大の最後の授業から始まりました。

即NHKに移動し、「バロックの森」を4本(!)収録。終わると即河口湖(!)に移動し、音楽学の学生の合宿に合流しました。さすがに合宿は疲れます。あれこれハードワークとなり、今日は、疲れ休めをするのが精一杯でした。

で、収録した4本分の内容のご紹介です。既報の通り、8月16~21日の週は、ドレスデンの宮廷音楽を特集しました。18日(水)は、オール・ゼレンカ・プロ。《カプリッチョ第5番ト長調》、《トリオ・ソナタ第6番ハ短調》、《父なる神のミサ曲》から〈アニュス・デイ〉を選びました。アルト・ソロによる〈アニュス・デイ〉をバッハのそれと比べると、面白いと思います。

19日(木)は、ロッティの《ミサ・サピエンツィエ》(←バッハが楽譜を作成した曲)の〈キリエ〉と、ハイニヒェン(楽長)の管弦楽組曲ト長調と、協奏曲ヘ長調。そして、ピゼンデル(コンサートマスター)の2つのト長調協奏曲です。複数の曲で、ドレスデンのトレードマークというべきホルンが活躍します。

20日(金)は、ドレスデンのために書かれたバッハの《ロ短調ミサ曲》の〈キリエ〉と〈グローリア〉。最新の演奏という触れ込みで、ジョン・バット指揮、ダニーデン・コンソートのものを使いました。リフキン方式で、リフキン校訂のブライトコプフ版を使用しています。ちょっと雑なのが難ですが、威勢が良く面白いので、話の種に使ってみました。やはりバッハを流れの中で出すと、突出した印象になりますね。

21日(土)は新しい世代の人々で、クヴァンツのト長調協奏曲と、ハッセ(次の楽長)のニ短調トリオ・ソナタ、歌劇《クレオフィーデ》の抜粋。バッハが息子を連れて聴きに行ったことが知られている作品です。

ちょっと渋いですが、「バロックの森」というのは朝に気持ちのいいバロック音楽が鳴っていること自体を価値としていただけるように思うので、有名な曲は小出しにして、組んでいます。私にとってまことにいい勉強の機会で、バッハの伝記にも出てくる《クレオフィーデ》が何をどう扱ったオペラかということも、今回初めて認識した次第です。

8月上旬のイベント2010年07月30日 11時52分48秒

今夜、大学で、渡邊順生さんが講演。チェンバロ、リュート・チェンバロ、クラヴィコードなど楽器4台を持ち込み、演奏とお話を存分に楽しませていただきました。阿部雅子さんのソプラノ付き。渡邊さんに対する賛辞はもうずいぶん書いているのでいまさらですが、演奏に「思索」の深さがあり、それが古楽器の静謐な響きの中で探求されている様子はすばらしく、感動をもって聴きました。

私はこの会が大学の授業だとばかり思っていたのですが、なんと、音楽研究所の企画であると判明。それなら皆様にご案内すべきでした。申し訳ありません。というわけで聴衆は少なかったのですが、数がオールマイティなのは、政治の世界。音楽の世界には、少数の人で占有するという喜びも存在します。だからこその、クラヴィコードです。

それはそれとして、8月上旬のイベントをご紹介します。1日(日)はすざかバッハの会(14:00、須坂駅前のシルキーホール)。私の音楽講座第4回で、「優れた詩に曲がつくと~ドイツ・リートの魅力」というテーマです。「歌曲作品研究」の授業で長年培ってきた歌曲論をお話しします。歌曲のお好きな方、お待ちしています。

7日(土)は楽しいクラシックの会(10:00、立川市錦町地域学習館)。「宴の前はオルガンで」と題し、最近増えてきたオルガン音楽の映像を鑑賞しますが(終了後恒例のビヤパーティがありますので)、それに先だって、「ミニミニコンサート」を開催します。ここ2年間はドクターコースの学生さんをご紹介していますが、今年もその流れで、川辺茜さん(ソプラノ)、高橋幸恵さん(メゾソプラノ)にご出演いただきます。歌曲のコーナーではシューマンの二重唱と、それぞれ専攻されているシューベルト、シェーンベルク。そのあとはオペラのコーナーで、パーセルの《ディドとエネアス》から2つの場面を取り上げた後、ワーグナーの《エルザの夢》で締めくくります。ピアノは三好優美子さん。飛び入り歓迎です。