今月のCD選2012年09月20日 10時44分49秒

ちょっと早いですが、昨日の夕刊に掲載されましたのでCD選を。今月は3人の選者がかなり重複する結果になりました。

心から感嘆した1位があります。それは、ベルクとベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を、イザベレ・ファウストが独奏、アバド指揮のモーツァルト管が共演したHM盤。今どきこんな人がいるのか、と思うような精神性の高いヴァイオリンで、すべてが作品に集中し、1音の無駄もないのです。逆に言えば付加価値的なオーラはまったくありませんから、好き嫌いが分かれるかも。YouTubeでソナタの演奏を見ましたが、自分のパートより前に音楽の全体を考えるようなところがありますね。これから目を離せないアーチストです。

生誕150年ということで、ドビュッシーの《前奏曲集》が4つもかち合いました。当然この中から1つ、と思うわけですが、ドビュッシーのピアノ曲はこうであるべきだ、という前提が私の中にあるわけではありません。そこで、1曲か2曲ずつCDを入れ替えて、丹念に比較してゆくことにしました。それぞれに個性があっていいのですが、結果的に次の曲へのわくわく感が一番高まったのは、アレクセイ・リュビモフ(ECM)。人なつこさがあり、描写に血が通っているのです。第1巻がベヒシュタイン、第2巻がスタインウェイの同時代ピアノで弾かれ、ズーエフとの2台ピアノで、《夜想曲》(ラヴェル編)と《牧神》(作曲者編)が併録されています。これも面白く聴きました。

バーンスタインがマーラーの交響曲第9番をどんなにすばらしく指揮するかは、皆さんご存じですよね。イスラエル・フィルを指揮した1985年のライヴが、新たに発表されました(ヘリコン)。来日直前のものだそうです。皆さんが注目される新譜だと思うので、さすがにすばらしいですが、3位にとどめました。

四戸さんのファミリー・コンサート2012年09月21日 22時40分25秒

地球は回りますから、世代交代は世の常です。でも、尊敬するクラリネット奏者、四戸世紀さんが読響を辞められたと聴いたときは(去年)、まだ青年のように気高く清潔な演奏をされるこの方が後進に道を譲るとはもったいないなあ、と思ったものです。

その四戸さんがこのたび、下北沢のアレイホールで、ファミリーコンサートを開かれました(9月15日)。参加されたのはご本人と、帰国された奥様の正子さん(ヴァイオリン)、お姉様のシャンソン歌手、麻生ミエさん、ピアノ協力が岡田知子さんと加藤のりこさん。さらに義姉の四戸美津子さんが、階下のギャラリーで美術参加されました。

こうした企画はコンサートとしてのまとまりを作りにくいものですし、プログラムも軽い方向に流れることが多いものです。この日もその傾向はなしとしなかったのですが、雰囲気がとても温かで、行って良かったと思いました。私にとってとくに印象深かったのは、四戸さんのクラリネットが芸術好きの家庭にしっかりとはぐくまれたものであること、すばらしいシャンソンを歌われるお姉様を含めて、探究心の基礎が、大の音楽愛好家であるお兄様の影響で形作られていると知ったことでした。戦後早い頃からクラシックの本格的なレコードを集めて聴き、熱心に芸術を語るアマチュアの存在がこうしたプロの誕生に影響を与え得るという事実に、勇気づけられました。

ちなみにこのお兄様、四戸康一さんは、「たのくら」を長いこと支えてくださっている方のひとりです。その人間的な魅力に、いつも教えられています。

長文変換2012年09月24日 11時05分23秒

長らく使っていたATOKをGoogle日本語入力に変えた、と書いたのが、もうかなり前のことでした。そのまま、基本的には満足して使ましたが、毎年進化するATOKのことも、長年ジャストシステムを使っていたユーザーとして、気になります。きっと良くなっているんだろうなと思い、お得意様ポイントの残りを使って、2012年版を購入しました。さて。

Google日本語入力、相当いいと思います。3点挙げるとすれば、1.高速であること 2.推測変換で、当世風の言葉や固有名詞がどんどん出ること(自分の使った言葉も強力に推測しますが、これは終了すればリセットされる) 3.無料であること となるでしょう。逆にとても気になるのは、変換候補の順序が不合理かつ固定的な傾向があること、あり得ない(=日本語とは思えない)変換候補が上位に並んでしまうことです。これは文章作成上、少なからぬマイナス要因になります。

ATOK12は、その点きれいに絞られて表示されるので、気持ちがいい。変換もさすがに優秀で、単語登録をたくさん盛り込んだ文章も、きれいに変換されます。たとえは「こらをしよお」と打つと「コラールを宗教音楽」と直してくれます(笑)。ただし、変換を変えるときに、ごくわずかのタイムラグがあります。Googleではまったく意識されない入力システムの存在が、こちらではときに意識される、という感じでしょうか。

皆様は、長文変換をどの程度お使いですか。私は、文節単位で変換することを常としていました。しかし昔のノートをパソコンに打ち込む仕事をしているものですから、行けるところまで何行もひらがなで打ち、一気に変換することを試してみました。

そうすると、舌を巻くほどみごとに変換する。ATOK12はもちろんですが、Googleもかなりよく変換し、その範囲はいっそう長い。進んでいるなあと感心する反面、長文変換を使う人ってどのぐらいいるんだろう、という疑問が湧いてきました。

手書きのときは、最初から漢字で書いていきますね。漢字のイメージが、文章作成の大きな要因になっています。漢字化を数字分遅らせるのは許容できるとしても、ずっと目先にひらがながならんでしまうのでは、文章の作成が妨げられるのではないでしょうか。清書ならともかく、文章の先を考えて書く場合には、文節変換でいくことに普通なるのではないかと、私は思うわけです。

考えてみれば、長文の方が豊富な前後関係に恵まれるわけですから、変換の正確さが高まるのは理に適っています。そうなると、ひらがなの連続を見ながら文章を書く人が、これからは増えてくるのでしょうか。ワープロの使用が文章に影響を与えるか否かは昔議論されましたが、「長文変換派」がもし増えてくるのであれば、それが再び議論されるかも知れません。

巨人をたたえる2012年09月26日 22時44分32秒

パ・リーグのペナントレースが、佳境に入っています。パ・リーグは好きなチームが多く、日本ハム、西武、ロッテ、オリックスは同じぐらい好きなので、応援に困ってしまいます。一応西武に絞ろうかと思っていますが、当初経験不足を指摘されていた日本ハム・栗山監督の手腕はたいしたものですね。ハムも、本当にいいチームだと思います。

え、セ・リーグの話をしろ、とおっしゃるんですか?CSの603チャンネルで応援していた広島東洋カープ、去年に続き、竜頭蛇尾の結末になりました。渋谷の地下鉄のごとき急下降で、ブログは、首脳陣批判の大合唱。たしかに私から見ても、硬直した采配に思えます。まあ、2割そこそこのバッターが大半を占めているのでは、ゼロが並ぶのも仕方がないでしょう。そして、つないでいかなくてはならない小粒なチームなら、守備はぜったいよくなくちゃ。12球団ダントツのエラーというのでは、話になりません。

そこへ行くと、豪打の阿部を筆頭に、巨人はすばらしい!広島では、まったく歯が立ちません(今日は勝ちましたが)。ソフトバンクから取ってきた2人の投手も、大活躍でしたね。杉内が「本当に巨人に来てよかった」と言っているのを聞くと、その喜びはいかばかりか、と思います。巨人ファンの方々、おめでとうございます(一応言っておかないと)。

テレビ画面には高揚した原監督の表情が、ひんぱんに映し出されます。ぎらぎらした感じが出てきたように思えるのは、気のせいでしょうか。極力見ないようにしていても、逃げ切れないのが昨今です。

所詮勝負は、他力本願(←本来は誤用)。選挙も面白いが、その意味では同じです。怨念や感情で投票する人が永田町には多いのだと解説されていました。でもそれは、一般の人も同じではないでしょうか。私も、政策の重要性はもちろん認識しながらも、5人の中でこの人だけはいやだな、とか思いつつ見ていましたので。今日は谷垣さんが輝いて見えました。最後のスピーチ、すばらしかったです。

ふたたび手づかみ駅弁2012年09月28日 23時28分59秒

私が大阪へ行く新幹線の車中、手づかみで駅弁を食べたという話(8月28日)は、口コミで、結構有名な話になっているようです。伝え聞き、「精神は大丈夫か」と心配された方さえいるとか。大きなお世話です。

複数の人から聞かれたのは、そんなことをして恥ずかしくなかったのか、ということ。説明不足でしたので追加しておきます。そのとき新幹線は空いていて、私が牛肉弁当を手で食べている姿を、見咎める人はいなかったのです。もちろん通りかかる人はいたわけですが、その時には手を休め、文字通り「何食わぬ」ポーズをしていました。こそこそ食べることで、駅弁のおいしさはいっそう割り引かれました。

27日(木)の、大阪行き新幹線。私はふたたび、手づかみで駅弁を食べました。しかし食べたのは「瀬戸押寿司」というものです。お寿司は手で食べる習慣の私としては、少しもおかしくないはずですので、申し上げておきます。

それにしても東京駅の駅弁、ますます充実しました。拡大された地下売り場で、いくつものお店がお弁当を売り出すようになったからです。一渡り歩き、品数の多さに決められないまま1Fの売り場に行ってみましたら、こちらも格段に品数が増えていて、百花繚乱。日本中の新開発駅弁が、東京駅に集結しているのです。目移りしてしまうのは、誰も同じ。売り場が混んでたいへんです。その中で選んだのが、上記押寿司でした。

こんな東京駅の独走を、食い倒れのメッカ、大阪が許していいのでしょうか。新大阪駅の駅弁充実を望みます。

大阪最高の味2012年09月29日 23時50分49秒

駅弁では分が悪いとしても、大阪が味の都であることは確か。20年を超える大阪通いを通じていろいろなところで食べましたが、私のささやかな体験上、ここが最高、と思えるお店がありますので、ご紹介します。穴場ですよ。

それは、「MMM」という、北新地のカジュアルなスナックです。北新地のスナックというと、飲むところ、というイメージですよね。最初私もそう思っていたのです。ところが、同行してくれるいずみホールのスタッフから、ここのママさんのカレーは最高である、との託宣をいただき、食べてみると、確かにおいしい。カレーのみならず、出てくる小料理の類がみな、すばらしいのです。それぞれに、ぴりりとアクセントの利いた味、といいましょうか。

それがわかってから、食事を終えて飲みに行くのではなく、最初から食事のコースをお願いして飲みに行くようになりました。多彩なメニューでふるまわれるお料理をワインと共に賞味する楽しみは最高です。今回は、グリーン・カレーの辛味にしびれました。興味のある方は、ぜひいらしてください。

場所は、御堂筋を大阪駅に向かって北上する途中、本通りの1つ南の通りを西に入り、すぐ左の角の地下です。平日のみ営業。

10月のイベント/講座・講演2012年09月30日 23時54分44秒

皆様、台風は無事やり過ごされましたでしょうか。10月のイベントのうち、まず講座・講演についてご案内します。前半に、たくさんあります。

10月は、カルチャーが後期に入る月。朝日の新宿校で、新しい講座を始めることに決めました。「バッハの受難曲」がオファーされましたので、《マタイ》、《ヨハネ》の順にやることにしました。「徹底研究」と銘打ち、時間を惜しまずに詳しくやります。第1部だけで、3月までかかります!時間は、隔週の水曜日、13:00~15:00。どうぞゆっくりお付き合いください。3日に開始し、17日、31日と、10月だけで3回あります。

新宿校の継続講座は、世俗カンタータです。今月は6日(土)の、10:00~12:00。前夜大阪ですので、決死的早起きで駆けつけます。どうしても地味な印象になってしまう講座ですが、ぜひ聴いていただきたい曲がたくさんあります。今月は、選帝侯妃追悼カンタータ(第198番)とコーヒー・カンタータという豪華版です。

横浜校の「エヴァンゲリスト」講座も、新しいサイクルに入ります。いつも第4土曜の13:00~15:00ですが、今月は都合で、13日(土)になります。扱うのは、「時流の外に新しさを求めて」の章。いよいよバッハの晩年に向かってゆきます。

立川の「楽しいクラシックの会」(たのくら)は最近部屋が抽選になったため、開催日が毎月移動します。今月は、7日の日曜日10:00~12:00になりました。たのくらではワーグナー・プロジェクトが進行中ですが、前回の《さまよえるオランダ人》がゼンタのバラードで終わりましたので、今月はその後半を済ませ、《タンホイザー》に入りたいと思います。

最後に、須坂です。「すざかバッハの会」の《ロ短調ミサ曲》シリーズ、今月、すなわち28日(日)の14:00~16:30は、第4部(オザンナ~ドナ・ノービス)を取り上げます。須坂の12月は楽しいコンサートになりますが、これは別途ご紹介します。