最近のコンサートいくつか2012年10月05日 10時27分15秒

いくつかよいものがありましたので、簡単にご紹介します。

《パルジファル》があまりに良かったので、読売日響の定期を聴きに行きました。9月25日(火)、オペラシティ。曲がベートーヴェンの第2番、第3番で、指揮がスクロヴァチェフスキー、ときたら、悪いはずないですよね。

スクロヴァチェフスキーの特徴として、よく、スコアの読みの深さが指摘されます。その通りなのですが、その読みが直線的なものではなく、何層にもわたる立体的かつ複合的なもので、それがオーケストラの響きにたえず還元されていることがよくわかりました。しかも、思いのほか柔軟。たえず新鮮で、爽やかな印象さえあるのです。こんなにいい《英雄》、ひさしぶり。

10月2日(火)は新国立劇場で、ブリテンの《ピーター・グライムズ》。精緻な20世紀オペラのすみずみまで行き届いた公演で、たいへん感心しました(オケは東フィル、指揮はリチャード・アームストロング)。ここでは顕著な印象を2点だけ述べておきます。1つは合唱のすばらしさ。むずかしいテクスチャーを英語で、これだけ堂に入って歌いきるのはたいしたものです。さすが、三澤洋史さん。もう1つは、この作品の人気の高さ。会場には知人があふれ、学会の方々にも大勢お会いしました。この渋い作品にこれだけ人が集まるということは、日本のオペラ文化の成熟を物語るものですね。

4日(木)は、「スーパー・コーラス・トーキョー特別公演」のご案内をいただき、オリンパスホール八王子に行ってみました。そうしたら、JR南口に接続して立派なホールができていて、向かいにビックカメラまであるのを見てびっくり。家から近く、便利でありがたいです。メインはマーラーの《嘆きの歌》、オケは都響、指揮はエリアフ・インバルでした。

この初期作品、演奏効果も高くファンにはたまらないのかもしれませんが、私には1つ、どうしても気になるところがあります。それは、森の花、眠る若者、不思議な笛といった童話の素材が、大編成の管弦楽と合唱、独唱によって、一貫して壮大に描かれていくことそれ自体です。後期ロマン派という時代に若い作曲家が高い意気込みで取り組むとこうなることはいくつかの類例が物語る通りですが、字幕で出るメルヒェンチックなテキストと音楽が、どうしても結びつきません。演奏する方も、所狭しとステージに並ぶと、相乗効果によって力演に傾きます。都響のマーラー・サウンドはさすがに華麗なものでしたが、上記の疑問はたえずつきまとったというのが、正直なところです。