白熱の《ミサ・ソレムニス》2012年10月29日 13時18分10秒

4日間大阪に滞在したあと、日曜日は須坂を往復。疲れの出ているこの月曜日です。

27日(土)の、ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》。この曲に接したのは大学生の頃だったと思いますが(クレンペラーのレコード)、とりつく島がないようなむずかしさを感じました。雑誌で宇野功芳先生の「わからなくてもいいから、宝としてとにかく聴くべし」というお考えに接し、なるほどと実践していたのがその頃でした。

しかし、《ロ短調ミサ曲》を身近に思える年代に達した今、《ミサ・ソレムニス》のすばらしさには、目を見張る思いがします。この曲をさまざまな指揮者のもとで歌い込み、つい十日前にウィーン交響楽団とやってきたという楽友協会合唱団が歌っただけに、なおさらです。後陣に屏風のように並んで確然とした歌声を発する合唱団を、アルミンクさんが意欲満々で指揮。響きはときに怒濤のようで、メリハリも十分でした。

先発のソリスト、櫻田亮さんの「キリエ」第一声に鳥肌。櫻田さんも、それから加納悦子さんも、いずみホール初登場だったのですね。正確な技術と楽譜の深い読みに支えられた加納さんの歌唱は芸術的な色香さえ漂って、まさに神品の趣。その〈アグヌス・デイ〉を聴きながら、1月の《ロ短調ミサ曲》の感動を、まざまざと思い起こしました。その他、語り尽くせませんが、熱演してくださった皆様、そしてお客様、ありがとうございました。

打ち上げもありませんので、白熱の盛り上がりで沸き立ったホールから、皆さん、どんどん散っていかれます。これが音楽家の日常なのですね。ウィーンとのパイプは、やはり大事にしていくつもりです。