今月のCD2012年10月30日 22時53分06秒

毎日新聞に連載しているCD選。今月から形が変わり、「特選盤」1枚を選ぶようになりました。ちょっととまどっています。なぜなら、従来は「3選」でしたので、メジャーなもののほかに、目立たないいいものを含めることができたからです。しかし言及は可能ですから、少ない字数ではありますが、なるべく目を向けてゆくつもりです。

今月はたくさんの新譜がありましたが、ピアノの数が多く、いい演奏が集まっているように思えました。そこでピアノから特選盤を選び、他のいくつかにも言及する、という作戦を立てました。

アンスネス&マーラー・チェン-バー・オケによるベートーヴェンの協奏曲第1番、第3番と、シフの《平均律》第1巻、第2巻の新録音。どちらを特選盤にするか迷った末、アンスネスを選びました。彼の弾き振りで、オーケストラとのコラボレーションが、じつにみごとにできているのです。ピアノと各楽器のこのように密度高くはつらつとした連携は、指揮者を置かない演奏形態においてこそ、十全に追求できるものです。古典派のコンチェルトは、こうありたいものです。

シフの《平均律》はさすがに立派。横綱相撲ともいうべきものですね。12月の「古楽の楽しみ」で取り上げましょう。ポリーニのショパン《24の前奏曲》は熟した味わいがよく、スドビンというロシア人奏者のスカルラッティ・ソナタ集も、じつに面白いと思いました。日本人では、佐藤彦大さんの骨太な音楽に注目したいと思います。