アンギャン博士講演会2012年10月27日 10時41分50秒

「ウィーン音楽祭 in Osaka」関連の企画、26日(金)は、トーマス・アンギャン博士の講演会でした。題して「ウィーン楽友協会の200年」。通訳は岡本和子さんにお願いしました。

楽友協会のトップとして世界中を飛び回るアンギャンさんですが、音楽祭の際には多忙なスケジュールを割いて必ず数日大阪に滞在され、講演やシンポジウムにも対応してくださいます。堂々たる体格、貴族的な風貌、卓越した指導力と人当たりの良さを兼ね備えた類まれな方で、この方を芸術監督に得たことがこれまでのウィーン音楽祭にはじつに大きな力だったと、実感しています。

よく響くバスの声で行われた講演は、楽友協会の成り立ちから現状に及ぶものでしたが、年間の主催公演が4つの新ホールと合わせて(計6つ)480から500、多い時は土日だけで15、というお話に、まず圧倒されてしまいました。世界のオーケストラを招聘するが、ウィーンにしばらく住んでもらい、チクルスの形でコンサートを開くのが、相互にメリットがあるとか。この6月にはバレンボイムとベルリン・シュターツカペレが11日間をかけ、ブルックナーの交響曲全曲とモーツァルトのピアノ協奏曲5曲を演奏したのが、その一例とのことでした。う~ん、目の回るようなお話ですね。

もうひとつ興味深かったのは、未来の聴衆を育てるために、子供たちのための特別コンサートを年間150回も開いている、ということ。世代を分け、それによって内容を変えるなど、さまざまな工夫をこらしているそうです。どんなプログラムを提供しているのか興味がありましたが、たとえばモーツァルトやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を1つの楽章だけ、というやり方をするそうで、名曲への啓蒙がポリシーとなっている、と受け止めました。

イベント的性格をもつ大衆的なプログラムも提供しているが、娯楽的なプログラムとシリアスなプログラムの違いはお客様がよくわかっていることで、前者に傾きすぎないようにバランスに注意している、というお話にも共感しました。

公演後は客席からたくさんの質問が出て、時間の区切りに苦労するほど。講演者への、何よりのはなむけです。今日は4時から、期待の《ミサ・ソレムニス》。この音楽祭を継続したい気持ちが日毎に強まり、困っています。