テキストの大切さ ― 2010年05月18日 23時34分06秒
大学院の小クラスですが、久しぶりに、正統的な音楽美学の授業をやっています。音楽美学史というと普通は流れを整理して把握することを目的としますが、それでは物足りない気がして、今年はいくつかのテキストを、きちんと見ていくことにしました。もちろん、翻訳でです。
今日の授業のためには「音楽と感情の関係」というテーマを選んでいました。音楽には感情を込めれば込めるほどいい、という通念は誤っていること、音楽で表現される感情は私情ではなく高められたイデア的な感情であるはずだということなどを述べ、感情に相当する言葉も歴史的に変遷し、多義的であることを注釈して、導入としました。
次に、バロックのアフェクテンレーレについてまとめようと思ったのですが、その理論的支柱になっているデカルトの『情念論』をきちんと読むべきだ、という思いが生じました。そこで時間のあるかぎり準備し、初めの方を節ごとに要約する形で紹介。久しぶりの読み直しですが、ああこういうことだったのか、という思いをしばしば抱きました。やはりテキストには、いつもあたっていなければいけませんね。来週は、学生に出してある課題をやります。プラトンの『饗宴』を、恋について自説を述べる6人になって議論しよう、という課題です。
大幅に遅れてきた学生が、二人。もちろん事情はあるのでしょうが、自分は学会のあとで疲れているときにこれだけ準備したんだ、時間通り来て聞いてくれ、と怒ってしまいました。こういう「私情」で怒ることは、平素はしないのですが・・・。夜のバッハ・プロジェクトでも、練習して来ない受講生を一喝。やっぱり、疲れてきているようです。
今日の授業のためには「音楽と感情の関係」というテーマを選んでいました。音楽には感情を込めれば込めるほどいい、という通念は誤っていること、音楽で表現される感情は私情ではなく高められたイデア的な感情であるはずだということなどを述べ、感情に相当する言葉も歴史的に変遷し、多義的であることを注釈して、導入としました。
次に、バロックのアフェクテンレーレについてまとめようと思ったのですが、その理論的支柱になっているデカルトの『情念論』をきちんと読むべきだ、という思いが生じました。そこで時間のあるかぎり準備し、初めの方を節ごとに要約する形で紹介。久しぶりの読み直しですが、ああこういうことだったのか、という思いをしばしば抱きました。やはりテキストには、いつもあたっていなければいけませんね。来週は、学生に出してある課題をやります。プラトンの『饗宴』を、恋について自説を述べる6人になって議論しよう、という課題です。
大幅に遅れてきた学生が、二人。もちろん事情はあるのでしょうが、自分は学会のあとで疲れているときにこれだけ準備したんだ、時間通り来て聞いてくれ、と怒ってしまいました。こういう「私情」で怒ることは、平素はしないのですが・・・。夜のバッハ・プロジェクトでも、練習して来ない受講生を一喝。やっぱり、疲れてきているようです。
コメント
_ 浦和人 ― 2010年05月19日 20時38分31秒
先日のバッハ・プロジェクトでは、先生の体調が余り良くないように見えました。先生には今後とも良質な著書を沢山書いていただきたいと存じます、どうぞご自愛下さい。
_ Dr.ミニーナ ― 2010年08月16日 18時54分52秒
礒山先生,こんにちは。この記事も以前から共感を得ておりました。常日頃から私は,ごく親しい人にだけですが,音楽の感情表現とは,自分の感情を移入することではなく,作曲家が何を訴えようとしたかを理解し,表すことであるなどと繰り返し語っていました。エルンストムズィークにおいては,たとえそれが明るい曲であっても,根底にある何か生の苦しみのようなものを読み取り,表現しなければならないというのも,根拠のない私の口癖です。
先生のこの記事を読んで,「高められたイデア的な感情」ということばに,とても惹かれました。素晴らしい授業をされていらっしゃるのですね。国立音大の大学院はとても恵まれていますが,このような講義を受けられるとは,幸せだと思います。私も,日本語訳ですが,デカルトの『情念論』とプラトンの『饗宴』をあちこち読んでいます。『饗宴』は,ドイツ文学にも直接影響を与えていますね。ところでもし差し支えなければ,たとえば『情念論』のどこを特に取り上げられたか,教えていただけますか。六つの基本情念でしょうか。
先生のこの記事を読んで,「高められたイデア的な感情」ということばに,とても惹かれました。素晴らしい授業をされていらっしゃるのですね。国立音大の大学院はとても恵まれていますが,このような講義を受けられるとは,幸せだと思います。私も,日本語訳ですが,デカルトの『情念論』とプラトンの『饗宴』をあちこち読んでいます。『饗宴』は,ドイツ文学にも直接影響を与えていますね。ところでもし差し支えなければ,たとえば『情念論』のどこを特に取り上げられたか,教えていただけますか。六つの基本情念でしょうか。
_ I教授 ― 2010年08月18日 11時31分35秒
イデア論の理解は、昔の人のものの考え方を知る意味でたいへん重要ですね。日々世界は即物的になっていますから、若い人にとって、理解は簡単ではないと感じます。その意味で、やはりプラトンがかけがえのない基礎であると思います。デカルトの『情念論』はバロックのアフェクテンレーレの理解に欠かせないので、その範囲内で取り上げています。
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