「バロックの森」9月の予告2010年08月17日 23時54分47秒

今週収録のある「バロックの森」9月放送分の原稿を、今日準備しました。ご案内しましょう。

9月は、全部の日を1人の作曲家でまとめました。13日(月)は、ブクステフーデ。14日(火)は、ケルル。15日(水)はパーセル。16日(木)は、グラウプナー。17日(金)と18日(土)が、バッハです。

売りの曲を紹介すると、ブクステフーデでは、カンタータ《イエスよ、私の喜び》。バッハのモテットと比較すると面白いと思います。ケルルは、1683年のオスマン・トルコによるウィーン包囲のさい書かれた《ウィーン包囲の嘆きを慰めるミサ曲》が歴史のひとこまを伝え、感情のこもった作品になっています。パーセルは、《メアリー女王の誕生日のためのオード》2曲で構成しました。第1作と、第6(最終)作です。第6作の《来たれ、学芸の子ら》は、いい曲ですね。セシリアのオードと同じように、楽器が主役を演じます。

180年前の9月17日に、ソプラノ独唱用のカンタータ第51番が、聖ニコライ教会で演奏されました。これにちなんで、金曜日は51番を、ハルテリウス/ガーディナーの演奏で出します。抱き合わせは、同じ主日のための第138番《なぜ憂えるのか、私の心よ》。これも、いい曲ですね。余白には、《フーガの技法》の4つのカノンを入れました。土曜日に入れられなかった曲のフォローです。

というわけで、18日(土)は、バッハの《フーガの技法》を、ギエルミ氏が送ってくれた新しい録音で放送します。ギエルミがチェンバロとジルバーマン・フォルテピアノを演奏し、息子さんのガンバ合奏と交互に、ときには一緒に演奏していくのですが、例の未完の三重フーガに、新しい補完稿が使われているのです。

三重フーガを編成の工夫でとてもわかりやすく演奏したあと、有名な中断部分のあとに、ギエルミはフォルテピアノのソロで、補完部分を演奏しています。38小節のものですが、主要主題の反行形、その後基本形が登場し、既出の3主題といっしょに4重フーガを形成する構想は、まことにお見事。彼なりに三重フーガの和声を分析した上で行った復元だそうで、イタリア語の論文が出るとのことでした。これは、お聴きくださいね。

コメント

_ NAK-G ― 2010年08月20日 06時27分14秒

お邪魔いたします。
バッハのフーガの技法を取り上げられるとのこと、とても楽しみです。次第に演奏会で取り上げられることも多くなってきましたが、まだまだ学術的作品という印象が残っており、聞く人に敷居の高さを感じさせているかと思います。
Contrapunctus11の狂おしいまでのファンタジーや、10度のカノンの愛らしさなど、作品の芸術性の高さを多くの方に知っていただくいい機会かと思います。私も是非拝聴させていただきます。

_ NAK-G ― 2010年09月17日 22時48分09秒

バッハのカンタータと4つのカノン、拝聴いたしました。
ガーディナーの荘厳さの中に瑞々しさのある演奏は、どこかオペラ風のカンタータの曲調にしっくり来て、280年前の音楽を鮮やかに蘇らせてくれていると思います。
4つのカノンにおいては「幾何学的相似」と「旋律の戯れ」の妙、楽しませていただきました。フォルテピアノの響きも、過渡期の楽器ながら味わい深くてよかったです。
カノンといえば、今回の曲とは関係の無い話で恐縮ですが、先生は「アルゴリズム行進」をご存知でしょうか?NHKの子供向け番組の1コーナーで、二人の男性が歌と体操でカノンを行うのですが、この二人の動きが対位法的に絡み合い、実に軽妙で面白いのです。you tubeなどでもご覧いただけると思いますので、もしご存じないようでしたら、一度ご覧いただければ幸いです。

_ NAK-G ― 2010年09月18日 23時02分04秒

昨日は失礼いたしました。今朝も拝聴いたしました。
難解な対位法の数々をわかりやすくご説明いただき、フーガの技法の面白さを再認識した次第です。
11-12-13の3曲を続けて聴くと、急-緩-急の組み合わせになっていて、トリオソナタを思わせるものがありました。曲の配列にどのような意図があったのかは明確ではありませんが、バッハはこうした緩急のバランスにも配慮していたのかも?と感じた次第です。
来月の放送も楽しみにしています。

_ I教授 ― 2010年09月20日 19時03分31秒

NAK-Gさん、いつもありがとうございます。アルゴリズム体操というのをyou tubeで見ました。どちらも普遍的な原理に基づいているのでしょうね、きっと。

_ NAK-G ― 2010年09月21日 14時07分22秒

こちらこそ、アルゴリズム行進にまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
(この放送が結構長続きしているようで、かつでイギリスでラウンドやキャッチが流行ったように、この手の対位法的遊戯は、何か人をひきつけるものがあるようです)

_ 撫子 ― 2010年10月03日 00時29分49秒

磯山先生、毎回、素敵な放送を、ありがとうございます。

今週の「バロックの森」(一度では感想が書けず、何度も聴いておりましたら、こんなに日にちが過ぎてしまいました。)先生が是非とおっしゃった、お勧めの「ロレンツ」氏の「フーガの技法」を楽しみにしておりました。


「フーガの技法」は、私には、複雑なのに美しい、本当に難しい音楽です。
今回、先生のお話で、「フーガの技法」の、旋律一つ一つを辿りながら、拝聴出来ました。美しいです。
先生がおっしゃった【見事な設計図】

その言葉で、バッハが、楽しそうに楽譜に音符をお喋りさせている姿を思い浮かべてしまいました。

バッハの最期の口述のコラールがつけられて、これで、未完の「フーガの技法」は完成したのでしょうか?。

「ギエルミ」氏 の「フーガの技法」を聴いたバッハは、
「正解だよ。ありがとう。」
と、おっしゃっているかも。

それとも・・・・。

未完の「フーガの技法」は、答が無数にある
神様が、研究者の方達にくださった、楽しい宿題かもしれませんね。

先生のお話をお聞きしながら、そんなことを考えました。


先生のお話を、一回聞いて、なるほど!と、理解できるほどの知識がないために、まだまだ、放送を聞き直します。

バッハの音楽の美しさが分かるのは、本当に楽しいです。

カンタータ138番も、美しかったです。

今年の気候は、気温差が激しいです。
お身体には、お気をつけてください。

来週の放送も楽しみにしております。

ありがとうございました。

_ I 教授 ― 2010年10月03日 11時42分24秒

撫子さん、詳しいご感想ありがとうございました。励みになります。もうじき長野に着くところです。

_ I 教授 ― 2010年10月03日 11時42分25秒

撫子さん、詳しいご感想ありがとうございました。励みになります。もうじき長野に着くところです。

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