今月のCD選2012年07月19日 23時54分37秒

6月のCD選はドイツ旅行が入ったため事前に少ない候補から選定せざるを得ず、ここでも採り上げないままになりました。7月はボーナス期の新譜が来て、選択肢は豊富です。それでも3選ですから、少ない月は有利、ということですね。

庄司紗矢香さんがウラル・フィルとの共演で弾いたショスタコーヴィチ のヴァイオリン協奏曲第1番、第2番(MIRARE)を、1位にしました。この演奏、たいへんな密度で進められますが、ショスタコーヴィチにふつう連想する冷たい触感とか、シニカルなユーモアとかとはかけ離れています。それをどう評価するべきかかなり考えたのですが、「熱を帯びつつも慰めに満ちた」ソロに耳を傾けるうち、これは閉鎖的な風土で呻吟するショスタコーヴィチを救済する天からの音楽ではないか、と思うに至りました。たいしたものです。

2位にしたのは、この時期恒例の「アルゲリッチ&フレンズ ルガーノ・フェスティヴァル・ライヴ2011」です(EMI)。今年はアルゲリッチの出番が多く、ラヴェルのコンチェルトのソロのみならず、ザレンプスキの五重奏のような知られざる佳作にも力量を発揮しています。後光のようなオーラがだんだん出てきましたね。これは3人全員の推薦でした。

デノンが出しているOpusArte系のオペラのDVDを、数点見ました。良かったのが、パッパーノが英国ロイヤル・オペラを指揮したヴェルディ《マクベス》 の2011年ライヴ。パパゲーノで有名なキーンリーサイドがヴェルディの主役を立派に、内面を掘り下げつつ歌うことにも感心しましたが、対峙するマクベス夫人に扮したウクライナの新進ソプラノ、モナスティルスカの美声と表現力には驚嘆。大器の出現です。