ダブルブッキングではなかったようで2010年03月31日 23時19分36秒

30日。無理矢理起床して、毎日新聞社へ。そう、大阪の記者さんに早朝来ていただくという条件で、インタビューを午前中に移すことに成功したのです。私のダブルブッキングを期待しておられる方のために、もう少し劇的な展開を用意して差し上げたかったのですが、すみませんね。なんとか切り抜けることができました。

インタビューは、ひとりの人間が20年間民間ホールの企画を続けるのは珍しい、という前提で、いずみホールの20年の意義を考える内容でした。たくさんの思い出が脳裏をよぎりましたが、ひとつだけ間違いないことは、「実践とのかかわり」という私の売りが、いずみホールでの経験で培われたものだ、ということです。その経験が、たとえば大学での仕事に、大きくフィードバックされています。

その日の午後と、今日の午前中、「バロックの森」の録音。4月最後の週の分です。30日(金)、すなわち私の誕生日の放送分に凝りました。《ブランデンブルク協奏曲》第5番を中心に、その初演の様子を想像しながら、かかわりのある作品を聴く、というものです。この曲の成立は今、ドレスデンにおける「マルシャンとの音楽試合」とかかわらせて説明されるようになっているのですが、その理由の大きなものは、第2楽章がマルシャンの作品の引用になっている、ということです。

できればその原曲を流したい、と思い、CDを探していました。そうしたら、前の日に石丸電気で見つけることができたのです。そこで、マルシャンの原曲を聴き、フルートのソリストであったと想定されるビュファルダンのコンチェルトで締める、というプログラムが完成しました。これは、聴く価値があろうかと思います。

収録後、タクシーで新国立劇場へ。《神々の黄昏》のチケットをいただいていたので(←プログラムに執筆)、疲れてはいましたが、出かけました。入場しようと思ったら、ホールが静まっている。確認すると、公演は30日だったんですね。そうか、昨日は、ダブルブッキングではなく、トリプルブッキングだったのか。

主催者には申し訳ないことをしましたが、ありがたい、半日休める、と思ったことは事実です。時間ができましたので、遅れていた松居直美さんのための原稿の下書きをすることができました。かくして、3月終了です。

ダブルブッキングで激震2010年03月30日 11時38分33秒

私がダブルブッキングをしたって、いまさら、ニュースでも何でもありません。「またか」というだけのこと。でもそのことをあえて書くのは、楽しみにしておられる方が一定数、存在するらしいからです。しばらく書かずにいると、「最近ダブルブッキングないですねえ」と物足りなそうにおっしゃる方が、まあ他人の不幸は蜜の味といいますが、おられるのですね。

私の企画構成によるモーツァルト・コンサート(立川アミュ)のリハーサルに入ったところで、NHKからメールが入りました。明日、1時にお待ちしてる、との由。思わず気が遠くなりました。私は、3日間続く録音がいずれも午前10時からという前提のもとに、2時から、新聞社を訪問することにしていたのです。大阪の記者さんとの間で再三時間調整を行い、この時間を設定しました。取材ですから、カメラマンも入る。しかしNHKの方もスタジオが確保され、技術さんも入る。さあ、どうしましょう。

すぐには結論が出ませんので、とりあえず忘れて、リハーサルに専念。ここでもツキの理論が登場します。これなら、コンサートはうまくいくだろう、という考えです。果たしてコンサートはうまくいき、同僚たちと一緒にコンサートを作る喜びを満喫しました。作品のことで言えば、この曲すごいなあ、と鳥肌ものだったのが3曲。《コシ・ファン・トゥッテ》の海辺のセレナードと大詰めの二重唱、《魔笛》のパミーナ/タミーノの二重唱です。とくに《コシ》の二重唱は、あらためて、モーツァルト最高のページの1つではないかと思いました。始まったとたんに涙が出てくるくらい、すばらしいと思います。高橋薫子さん、大間知覚さん、ありがとうございました。

終演後、プリマドンナを囲んで打ち上げ。楽しかったのですが、時間を使った分、ツケも翌日にまわりました。

眠れない夜2010年03月27日 03時02分35秒

皆さん、夜は、すぐ眠れますか?私は、仕事を終え、飲酒してから寝るという習慣なので、機嫌良くバタンキュー、というのがたいていです。このことは、飲まないと眠れない、眠るために飲む、というのと紙一重ですから、飲めなくなったときの夜が、恐ろしくもあります。

ところが、飲んでいるのに、眠れなくなってしまったのですね。昨日のギエルミ氏の話も、一応11時となっていますが、夜中の3時に、起き出して書きました。今日も同様。ふとんの中でぱっちりと目が覚めてしまい、いろいろなことを思い返して、気持ちが休まらないのです。

いまたいへんスケジュールが過密で、緊張している、というのもあると思います。でもそれはしばしばあったことなので、十分な説明ではありません。疲れているから早く寝ようと思って早い時間から飲み、ふとんに入って目がぱっちり、というのでは、不能率もいいところ。明日が思いやられます。え、あなたの目はぱっちりというにはふさわしくない目だ、とおっしゃるんですか?おっしゃる通り。もののたとえということにしてください。

しかし思ったことは、こういう夜を過ごしておられる方は、じつはたくさんいらっしゃるんじゃないか、ということです。重病で入院していたときに、夜がひじょうに恐ろしく、かつ長かったことを思い出します。

卒業式2010年03月19日 23時22分58秒

19日(金)は卒業式。湯川亜也子さんの博士号授与も併せて行われ、感慨のある式となりました。女性が9割ですから、その華やかさは、皆さん、想像されますよね。今年は洋服が皆無に近く、多数派が袴。しかし着物も、とても多かったです。不景気なのに意外に思いましたが、景気とは関係がないのでしょうかね。

しかし、知らない人が着飾っていても、それほど関心はありません。やはり、密接に指導した学生たちの最後の晴れ着姿を見たいわけです。具体的には、修士2年の声楽科14名がその対象。オペラ科9名は論文指導、歌曲科5名は、iBACHコレギウムでかかわった人たちです。

このもっとも華麗な集団は、ステージ向かって右側の一番前に布陣しています。しかるに私の席(来賓席)は左側と正対する角度になっており、該当集団を見るためには、体を左に120度ぐらいねじらないとなりません。まあ60度ぐらいなら適当に盗み見ることができますが、90度以上となるといかにも不審な行動になってしまいますので、あきらめました。「ついてないな」とも思いましたが、今月はいいこともたくさんあるので、このぐらいは許容範囲です。

夜は、お膝元の音楽学の学生たちとのお別れ会。二次会では、草食系のおとなしい男子たちを肉食系(?)の女子たちが盛大にいびる(いじる?)展開となり、いっしょになって楽しんでしまいました。これが、社会の現実です。皆さん、さようなら。

結果との向き合い方2010年03月18日 23時34分41秒

しばらく更新の余裕がありませんでした。風邪をひきかかっていましたが、瀬戸際で回避できたようです。

17日、『魂のエヴァンゲリスト』の再校を返し、あとは索引のチェックをするのみとなりました。初校と再校の間でかなりまた充実させましたので、新しい情報をかなりよく取り入れた本になったと思います。手頃な文庫サイズで新しいバッハの本はないと思うので、完成を楽しみにしてます。4月12日発売です。

博士研究コンサート第2日、および大学院修了生による「新人演奏会」が終わりました。会心の出来になった人、体調不良に悩まされた人、運良く出演できた人、惜しくも出演を逃した人などさまざまですが、やっぱり広く妥当するのは、私のツキの理論です。上記のうち、たとえば「惜しくも出演を逃した人」は、ツキがたくさん残っているので、これから必ず、いいことがあります。思うような演奏ができなかった人も、うまくいけばそのままになってしまう問題点としっかり向き合えるわけなので、大きなチャンスをもらったとも、解釈できます。私としても、この人はこういう形で指導していこう、こういうところで力をつけさせようと、考えながら聴いているわけです。結果と一番上手に向き合う人が、一番大きなものを得るのだと思います。

賛辞若干。「バッハ パルティータ第6番~C.P.E.バッハのソナタ~ベートーヴェンの第30番」というホ短調=ホ長調プログラムで第2日のトリを取った和田紘平君(ピアノ)。目先の音を一生懸命弾くピアニストはたくさんいますが、この人の演奏は、つねに全体を見渡している。さすがシェンカーの研究家で、若くして大局観が磨かれているのです。脱帽ものの、格調高い演奏でした。

《新・山手線のうた-固有名によるエチュード第1番》を作曲された、中辻小百合さん。山と並べられた打楽器を奏者が叩き回るという光景は現代曲のコンサートでよく見るものですが、みんな同じように思える、ということはないでしょうか。違うんだとわかりました。才能のある人が書くと、美しく響くものですね。たいしたものです。

より熟した博士研究コンサートに比べて、新人演奏会には若い活力があふれていました。原田佳菜子さんのセンスのいい優雅なフルートが、とくに印象に残っています。

赤ちゃん時代2010年03月14日 23時54分46秒



これ、家に来たばかりの、赤ちゃん陸の写真です。先日ご紹介したものと比べて、どうでしょう。子犬の方がかわいい、という先入観をくつがえすのではないでしょうか。なお、先日「雑種」と紹介しましたが、いまは「ミックス犬」といって、立派なジャンルなんだそうですね。

「陳麻飯」のチェーン、復活しましたね。いったん閉鎖された前の店舗で、営業を再開しています。どうなっているんでしょう。やっぱりおいしいので、ときどき行きたいと思います。私は、お店がつぶれるとそのたびに、自分に落ち度があったのではないかと反省し、気が休まりません。でも先日、あのお店がつぶれた、このお店がもうないと、まったく自分に関係づけずに話しておられる方を見て、こういう人もいるのかと、感心。皆様はいかがでしょうか。

今日は、ご案内していた博士研究コンサートの、第1日でした。声楽、ピアノ、作曲と、皆さん持ち場で全力投球し、長いコンサートになりました。それぞれ良かったので個別の論評は控えますが、ひとつだけ、賛辞を。藤川志保さんのピアノでシュトラウスの op.10と op.27を歌われた高橋織子さん、類まれな気品に熟した味わいを添えて、感動的なステージでした。《献呈》に始まり、《万霊節》をはさんで《明日の朝》で終わるという美しきシュトラウスの世界を、満喫させていただきました。

博士誕生!!2010年03月09日 11時08分32秒

今日発表があり、国立音楽大学始まって以来の、博士号をもつ学生が誕生しました。メゾソプラノ歌手の、湯川亜也子さんです。おめでとうございます。

湯川さんは、フォーレの歌曲《エヴァの歌》の研究で、博士号を取られました。コツコツと積み上げる本当に勤勉な方で、ドクターの3年目で、別人のように伸びてきました。私も驚くほどの、研究の発展でした。

私は本来、指導でできることはほんのわずかだ、と思っています。私の一番弟子はいま東大のドクターにいる堀朋平君ですが、このぐらい優秀になると、指導とは関係なく、伸びていきます。指導は、せいぜい参考程度です。

にもかからず、湯川さんの場合は、自分が育てた初めての学生だ、という感じがするのです。もしかすると失礼な感想かもしれないのですが、感動を込めて、そう思います。一緒に、いい勉強ができたということではないでしょうか。

最短距離で第一号の博士誕生というのは、論文指導した教師として、望外の喜びです。学生に恵まれることがいかに嬉しいことか、痛感しました。その意味で、今日は、最良の日でした。

同時に、博士課程の合格発表。14人が5人の椅子を争う激戦でしたが、合格は2人になりました。iBACHコレギウムのコア・メンバーである高橋幸恵さん(メゾソプラノ)が合格されましたが、さまざまな要素を兼ね備えた優秀な方なので、楽しみです。

陸のこと2010年03月08日 00時21分51秒

愚犬、陸のことでご反響をいただき、ありがとうございます。マルチーズとヨークシャー・テリアの雑種で、見かけより大きく、7キロぐらいあります。

初めて雑種を飼いましたが、雑種が絶対お薦めであることがわかりました。体が強く、健康なのです。頭も、いままで飼った内で一番いいです。たいていのことは覚えていて、先回りされてしまいます。

初めての、オスでもあります。しかし犬の性差というのが、もうひとつわからない。今までのメスに比べてキカンボの暴れん坊であることは確かで、妻は、ボール遊びをいつまでもやるとか、欲しいものを万難を排して探し出すといった特徴をとらえて、男の子ってこうなのかなあと思う、と言います。今までメス犬ばかり飼っていたので、なでられるのが好きとか、甘えて鼻を鳴らすというのはメスだからかと思っていたのですが、鼻を鳴らして甘えるという意味では、今までのメス犬以上。ただ、違うことが一点あるのです。いままでの犬は、抱かれるのが好きだったのですが、陸は、自分から飛び乗ってくるのは大好きなのに、つかまえて抱かれるのはいやがります。この能動性がオスの特徴かなと、まあ事例が少なすぎますが、想像しています。


家に来て1年経ちましたが、子犬時代より、格段にかわいくなりました。犬は、かわいがればかわいがるほどかわいい顔になると、断言できます。毎月トリミングに行くのですが、そのお店がいつも写真を撮り、大きく焼いてお土産にしてくれるので、家の中が、陸の写真だらけ。今回は「プロのカメラマンが撮ってくれる」イベントがあり、喜んで参加しました。いくらなんでも、自宅にひなまつりのセッティングをして撮影したりしませんよ(笑)。どっち似か、というご質問がありましたが、どうでしょうね。私は犬に似ている、と昔から言われていますが・・・。今後とも、ごひいきにお願いいたします。


博士研究コンサートのご案内など2010年03月04日 23時13分00秒

今日は久しぶりに在宅。まず小山由美論を仕上げ、それから音楽研究所の論文集に掲載すべく書いているモテット《イエスよ、私の喜び》論に集中しました。ほとんど完了。もう演奏が終わっていて後の祭りなのですが、いろいろなことに気づきました。やはり論文を書くことで研究者は勉強するのだと、つくづく思います。

私の一番嫌いなニュース、子供の虐待が、続けて報道されていますね。母親が何とか止められなかったのか、と思っていたら、いま見たニュースでは、虐待の6割が実母なのだそうです。お腹を空かせている子供に食事を与えないという一点が、すでにして、とうてい信じられません。世の中には、本当にいろいろなことがあるものですね。かわいがれば、犬だってかわいくなるのに・・・。

金曜日のオペラのチケットがもうないそうで、案内が遅すぎる!とお叱りをいただきました。ごめんなさい。そこで、「大学院博士後期課程研究コンサート」の、ご案内第一弾です。14日(日)、16:00から国立音大講堂小ホールで、1年次5人のコンサートがあります。紙面の都合上、私の弟子のみのご案内で申し訳ありません。ソプラノが3人です。

トップバッターは阿部雅子さんで、『雅歌』にこだわるバロック音楽のプログラム。グレゴリオ聖歌に始まり、グランディ、モンテヴェルディ、メールラ、そしてバッハのカンタータBWV49と140からです。

次は高橋織子さん。専門とするシュトラウスの歌曲で、 op.10とop.27から。 op.10には、有名な《献呈》や《万霊節》が含まれています。須坂の方、お出でになれませんか?

最後が川辺茜さんで、シェーンベルクとベルクの歌曲です。3人とも実力がありますから、ぜひいらしてください。直弟子ではないですが昵懇の今野哲也君の作品発表もありますよ。

【付記】今日のオペラ、当日券が若干出るようです。16:45から発売とのことでした。よろしく。

今日のNHK2010年03月02日 23時23分24秒

今日のNHK収録は、「バロックの森」の3/31、4/1分でした。3/31は、私の好きなコラール《心からあなたを愛します、おお主よ》の特集。プレトーリウスのモテットを導入とし、スウェーリンクのオルガン変奏曲、トゥンダーとブクステフーデのカンタータとつなげ、最後を、バッハのオルガン・コラール(BWV1115)と、《ヨハネ受難曲》の最終コラールで構成しました。以前iBACHのコンサートでやった企画の、拡大版です。

このコラールとその編曲については、私の弟子でいま研究室の助手をしている佐藤麻衣さんが修士論文で研究しており、今回も、相談に乗ってもらいました。4/1分は、ヘンデル特集。桐山建志さん、大塚直哉さんのソナタ集から3曲使い、大塚さんのパーソナリティ登場の宣伝も添えておきました。他は、ゼフィロの二重協奏曲と、《シバの女王》です。2人の女性スタッフが本当にきめ細かいサポートをしてくれますので、安心して仕事ができます。いまは客観的な解説スタイルでやっていますが、慣れてきたら、いっしょに楽しむような砕けたスタイルを研究してみたいと思います。できるかどうか、わかりませんが・・・。

いくら慣れていても、収録は緊張します。終わった後渋谷をぶらつき、遅い昼食を摂るのが楽しみ。渋谷のぶらつきは、駒場時代から重ねてきたことで、なつかしい感じがあります。

夜は、尊敬するメソ・ソプラノ歌手、小山由美さんに捧げる文章の準備。《パルジファル》のすばらしい映像を見て、アイデアが湧いてきました。サントリー音楽賞の記念ですから、心をこめて書きたいと思います。