6月のイベント2012年06月01日 23時30分23秒

いよいよ6月ですね。今月は10日間のドイツ旅行がありますので、予定にだいぶしわ寄せが来ています。

2日(土)の10:00から、朝日カルチャー新宿校で仕事始め。世俗カンタータ講座の2回目で、ケーテン時代の祝賀カンタータを取り上げます。具体的には、173番の世俗稿と教会稿をじっくり比較して、パロディを考える一助とします。

9日(土)に予定していた東京バロック・スコラーズの《マタイ受難曲》講演会は、申し訳ないですがキャンセルさせていただきました。しかしビデオで出演します。合唱団のご協力で30分の「番組」を作成してあり、聖書研究の佐藤研先生と指揮者の三澤洋史先生があとをフォローしてくださるようです。16日(土)の「たのくら」例会は、演出の中村敬一先生にピンチヒッターをお願いしました。とてもお話の上手な先生です。

帰国後。23日(土)は朝日カルチャー横浜校のエヴァンゲリスト講座で、今回は「妻に贈る第2の楽譜帳」がテーマとなります。13:00から。翌24日は、14:00からすざかバッハの会の、《ロ短調ミサ曲》講座です。前回から場所が須坂駅前のシルキーホールとなり、電車の方はずっと便利になりました。いよいよ《ニカイア信条》に入ります。

最後30日(土)の10:00からは、朝日カルチャー新宿校の世俗カンタータ講座の次の回。「トーマス学校、ライプツィヒ大学講師のための祝賀カンタータ」3曲を予定しています。以上、どうぞよろしく。

今月の「古楽の楽しみ」2012年05月09日 22時15分44秒

今月は5月21日(月)~24日(木)の4日間です。比較的珍しい領域に目を向けてみました。

バッハのカンタータを少しずつ、時期に合わせて紹介したいと思っており、いつも、放送の当日に初演された作品がないかどうか、調べています。すると、5月21日に、2曲あるのですね。第44番《彼らはあなたがたを追放するだろう》(1723年)と、狩のカンタータからのパロディで知られる第68番《神はかく世を愛された》(1724年)。加えて1747年には、フリーデマンがハレで第34番《おお、永遠の火よ》を演奏しているのです。この第34番は、サンクトペテルブルクでの資料発見によって、1727年の初演であることが判明した作品。そこでそのことに触れながら、3曲でプログラムを組んでみました。演奏はガーディナーのライヴです。

22日(火)は、音楽理論家として知られるティンクトーリスの作品。30歳前後の頃、皆川達夫先生の主宰する中世ルネサンス音楽史研究会に入っていて、皆川、金澤、高野といった先生方とご一緒に、『音楽用語定義集』の翻訳にたずさわりました(1979年出版)。そこに収録されている「ヨハネス・ティンクトリスとルネサンスの音楽理念」という論文は、私のごく初期の仕事の1つです。

そのティンクトーリスの作品を収めたCDを、最近入手しました。恥ずかしながら、聴いたのは初めてです。でも予想を超えて美しかったので、放送することにしました。《エレミヤ哀歌》からの抜粋と3つのモテットです。ハンガリーで活動したストーケムの作品をこれに組み合わせ、デュファイ、ジョスカンもちらっと。

23日(水)はハンガリーからチェコに視点を移し、ルドルフ2世時代のプラハの宮廷音楽を特集しました。フィリップ・デ・モンテ、ルニャール、ライトンによる、後期ルネサンス様式の音楽です。

24日(木)は、17世紀から18世紀始めにかけてのウィーン宮廷の音楽を特集。いつぞやCDコーナーで紹介した『ウィーン流儀で』のCD(ル・ジャルダン・スクレ演奏)を使って、憂いに満ちた諸作品を並べました。短調の曲ばかりです。登場する作曲家は、レオポルト1世、シュメルツァー、フローベルガー、シェンク、ドラーギ、サルトーリオ、フックスです。

というわけで地味なのですが、知られざる曲の発見があるかもしれません。どうぞよろしく。

5月のイベント2012年05月02日 22時27分26秒

まず連休中の5日(土)に、松本バッハ祝祭アンサンブルによるバッハ《ブランデンブルク協奏曲》全曲演奏会が、東京文化会館小ホールであります。松本の人たちが上京するのではありません。談話室でもかつて報告したとおり、小林道夫先生の指揮、器楽は桐山建志さん以下第一級の顔ぶれで構成されています。コンサートは18:00から、私が17:15からプレトークを行います。

11日(金)の17:10~18:20には、国際基督教大学大学の宗教音楽センターで、「バッハの《ロ短調ミサ曲》~宗教音楽の普遍性をめぐって》という講演を行います。公開、入場無料のようです。《ロ短調ミサ曲》の紹介ではなく、その普遍性をどう考えるかに絞って提言したいと思っています。

19日(土)10:00の「楽しいクラシックの会」例会は、ワーグナー・シリーズの第2回。「若きワーグナー」と題して、初期を論じます。立川錦町の学習館です。

23日(水)と25日(金)はいずみホールでの公演があります。これについて、および「古楽の楽しみ」については、次のご案内で。26日のアサヒカルチャーセンター横浜校の「エヴァンゲリスト」講座(13:00から)は、ライプツィヒ第3年巻のカンタータがテーマとなります。以上、どうぞよろしく。

広島 3-0 巨人。関係ないか(笑)。

今月の「古楽の楽しみ」2012年04月07日 23時39分33秒

一ヶ月間違え、大慌てで作りなおした、今月の「古楽の楽しみ」。本当は、ドイツ・バロックの受難曲特集を計画していました。期日を合わせられれば一番良かったのですが、今年の聖金曜日は昨日。復活祭もいいかげん過ぎたタイミングの放送になってしまいますが、待ちきれず、計画通りやらせていただだきました。

今年度から、放送が週4日になっています。23日(月)は、17世紀後半の受難曲の急速な発展を、シュッツの《ルカ》、ウプサラ筆写譜(作曲者不詳)の《マタイ》、ローテの《マタイ》、ブラウンス(伝カイザー)の《マルコ》という、4つの作品でたどりました。もちろん抜粋せざるを得ませんので、冒頭と最後は全作品を聴き比べ、他に、聖書場面から、特色のある部分を1つずつ選ぶ、という形にしました。ちなみにブラウンスの《マルコ》は、バッハが筆写譜を作成し、ライプツィヒでも演奏した作品です。ですから、バッハが影響を与えられた既存の受難曲を、代表しているわけです。

24日(火)は、ブクステフーデの7部から成る連作受難カンタータ《われらがイエスの身体》を、第2部省略で。演奏は、ヤーコプスのものを選びました。25日(水)、26日(木)は、バッハの《ヨハネ受難曲》です。第2部の前半を少しはしょったぐらいで収録することができました。それ以前の作品もそれなりに味わいがありますが、やはりバッハは桁外れですね。歴史をたどればその先に自然にバッハがある、というわけではないことがわかります。歴史を受容しながら歴史を断ち切ったのが、バッハの《ヨハネ受難曲》なのです。

演奏には、ガーディナーの2003年のライヴ録音(独ケーニヒスルッターでの録音、最近市場に出たもの)を選びました。ほとばしる勢いと熱い盛り上がりのある、すばらしい演奏です。その後、アーノンクールのDVDを見ました。これも迫力のある演奏で、テルツ少年合唱団のソリスト(ボーイ・アルト、ボーイ・ソプラノ)が大健闘しています。しかし壮年時代のアーノンクールの劇的・刺激的なスタイルが作品の宗教性を減殺しており、本当の感銘には至っていないように思われました。

《ヨハネ受難曲》の本を、というお勧めを、以前からいただいています。新バッハ全集の再校訂版をヴォルフ先生が担当されることになりましたので、先生のお仕事を拝見しながら考えてみようかな、と思っています。

新著が出版されました2012年04月05日 22時15分42秒

3月31日付けで、共著の新刊が出版されました。来週のうちには、本屋さんに並ぶそうです。とりあえず、ご紹介を。

昨年の後期に、新しい大学教養教育のモデルケースたることを目指して、「バッハとその時代」というオムニバス授業をしました。全14回の講義を、音楽学、語学、教養、ピアノなどなど、本籍様々な9人の先生方によって分担し、たいへん盛り上がりのある授業になりました。

普通はこれで終わりです。しかしスタッフの1人、久保田慶一先生の手腕で、これがたちまち本としてまとまり、アルテスパブリッシングから出版されるに至ったのです。各章と、そのタイトルを記しておきます。

第1講 バッハの生涯 -- 礒山 雅
第2講 バッハ時代のザクセン選帝侯国 -- 佐藤真一
第3講 ルターとコラール -- 宮谷尚実
第4講 バッハと神 -- 礒山 雅
第5講 バッハのクラヴィーア音楽 --加藤一郎
第6講 音響学からみたバッハの時代 -- 森 太郎
第7講 バッハ時代の楽器 -- 中溝一恵
第8講 バッハと流行 -- 礒山 雅
第9講 バッハの家庭、生活、教育 -- 久保田慶一
第10講 18世紀ドイツの言語と文化 -- 末松淑美
第11講 バッハの音楽頭脳 -- 礒山 雅
第12講 父ゼバスティアンと次男エマーヌエル -- 久保田慶一
第13講 19世紀におけるバッハ -- 吉成順
第14講 《ロ短調ミサ曲》~宗派の対立を超えて -- 礒山 雅

定価2,200円(税別)です。最後にこんな形で同僚の先生方と仕事をすることができ、いい記念になりました。幅広い角度から書かれた入門書というイメージだと思います。どうぞよろしく。

4月のイベント2012年04月04日 22時12分01秒

恒例のご案内です。

第1週の土曜日(今月は7日)には、朝日カルチャー新宿校で、新しい講座を始めます。10:00から。「バッハの世俗カンタータを聴く」というものです。今季は、ザクセン選帝侯家のためのカンタータ以外のものを集めてみました。《狩のカンタータ》から始めます。世俗カンタータの重要性は以前よりずっと強く認識しているのですが、世間の人気はあまりないようで、担当者が危機感を募らせています。よろしければ、どうぞ。

15日(日)14:00からは、すざかバッハの会の《ロ短調ミサ曲》講座。今回から、須坂駅前のシルキーホールになるので便利です。今月は、〈グローリア〉を中心に取り上げます。終了後、私の退職と会の10周年を記念して、会員の方々とのお茶会があるようです。

21日(土)14:00からは、東京バロック・スコラーズの提供する《マタイ受難曲》講座の第4回。第2部の音楽を中心にお話しします。このシリーズは妙にハイになってしまうのですが、なぜでしょうね。場所は文京区福祉センター6階の視聴覚室。江戸川橋か護国寺からおいでになれます。

28日(土)13:00からの朝日カルチャー横浜校「魂のエヴァンゲリスト」講座も、新サイクルに入ります。今まで半期に2章ずつ進んでいたのですが、ライプツィヒ時代のⅡに入り重要作品が目白押し、ということで、半期1章にスローダウンしました。今月はコラール・カンタータ年巻を取り上げます。以上、とりあえず。

【付記】大事なものを抜かしました。「楽しいクラシックの会」(通称たのくら)が、4月から、新しいサイクルに入ります。会員からのリクエストで、ワーグナーをやることになりました。最初は21日(土)の10:00~12:00で、ワーグナー・プロジェクトI「習作から《さまよえるオランダ人》まで」と銘打っています。立川市錦町の学習館です。どうぞよろしく。

あらためてご挨拶2012年04月03日 23時42分19秒

すごい風でしたね。皆様、大丈夫でしたか。私はコンサートにいくのをやめてしまいました。福田進一さん、ごめんなさい。

さてさて、あらためてご挨拶申し上げます。定年を楽しみにする日々でしたが、新年度の肩書がどうなるか見当がつかず、われながら興味をもっていました。「原稿の肩書は?」という問い合わせもあって、結構困ったりもしていました。

最初にいただいた肩書は、「大阪音楽大学客員教授」というものでした。大阪はいずみホールとの関連がありますし、市の名誉市民表彰もいただいています。そこで、ありがたくお受けすることにしました。節目節目に講演をするのが仕事のようです。関西の比重が重くなりました。

それから大分経ち、かなり押し詰まった時期に、国立音楽大学から「招聘教授」として協力して欲しいという打診をいただきました。招聘教授というのは国立音大独特の制度で、スタッフとして大学に名前を残し、なにかの折にお役に立つ、というものです。著名な長老の先生方が、名を連ねておられます。

この話をいただいた時には相当嬉しい思いがあり、いいワインを開けたりしました。しかし同時に思ったのは、定年だ定年だと大騒ぎをしてしまったのに恥ずかしいなあ、ということでした。青空のもと、広々と自由な空間に(鳴り物入りで)歩みだしたところが、上を見ると、いままでと同じ天井が続いているからです。

4月2日、毎年入学式の日に行われる教員懇親会では、乾杯の音頭をとる役になりました。まあそんなわけで、肩書が2つになり、「招聘教授の談話室」という、代わり映えのしないネーミングを使わせていただくことになった次第です。どうぞよろしくお願いします。

ご挨拶2012年03月31日 23時59分06秒

不詳私、この3月末で、第一の人生を終えることになりました。お世話になった方々にはお礼を、ご迷惑をおかけした方々にはお詫びを申し上げます。もう教授ではなくなりますので、「I教授の談話室」はこれで打ち切りとさせていただきます。ご愛顧、ありがとうございました。

しかし第二の人生が、シームレスに続いているようです。ご縁のある方々は、あらためて、よろしくお願いします。次の更新は、タイトルを改めて行うつもりです。さて、どんな人生になりますでしょうか。

【付記】感情が顔に出る人って、いいですね。原辰徳監督。

モーツァルト・コンサート復活2012年03月13日 11時08分48秒

11日(日)。大震災一周年。復興に向けて、まだまだ課題山積のようですね。解決が少しでも早くからんことをお祈りします。それにしても、手術直後のお体で追悼式でスピーチされた天皇陛下は、本当にご立派です。私心なく励まれる御姿を拝見していると、皇室のある国に生きることの価値を思います。

昨年3月に中止になった立川アミューにおける国立音大コンサート「モーツァルト 晩年の境地を探る」を、3月25日(日)の15:00から実施できることになりました。1,000円という破格の入場料で、一流の出演者による演奏をお楽しみいただけます。私として最後の、大学イベントへの公式出演です。

栗田博文指揮、くにたちフィルハーモニカー(教員や卒業生によるフル・オケ)の出演で、まず《魔笛》の序曲。次に武田忠善さんの極めつけのソロで、クラリネット協奏曲。後半は、《魔笛》第1幕からの抜粋です。

《魔笛》の第1幕には、パパゲーノ、タミーノ、夜の女王のアリアが、2曲目から4曲目まで並んでいます。抜粋になるとこうした曲が必ず入ってくるのですが、アリアを選ばず、次の五重唱からはじめるのが、私流。アンサンブルこそ《魔笛》の聴きどころだと思いますし、この曲は音楽としてすばらしい上に、魔法の笛と鈴が紹介されるというポイントになっているからです。「愛」がテーマとなるパミーナとパパゲーノの二重唱を経て、タミーノが3人の童子に導かれてザラストロの神殿にたどりつくフィナーレを、全曲演奏します。タミーノと弁者の含蓄深い対話と、パパゲーノの鈴で奴隷たちが踊る、感動的な場面があります。
 
出演は経種廉彦(タミーノ)、松原有奈(パミーナ)、太田直樹(パパゲーナ)、田辺とおる(弁者)、若林勉(ザラストロ)、今尾滋(モノスタトス)、悦田比呂子/小林菜美/与田朝子(3人の侍女)、山崎法子/高橋織子/鈴木望(3人の童子)。どうぞお出かけください。

前後しますが、24日(土)と31日(土)の13:00から、朝日カルチャー横浜校の「エヴァンゲリスト」講座の今季最後の2回を、駆け込みで行います。テーマは「ライプツィヒ初年度のカンタータ創作」と「ヨハネ受難曲」です。

わが家の近く、好きだったラーメン屋が閉店しました。自分が福の神か貧乏神か、またわからなくなりました。

3月のイベント2012年03月02日 08時49分14秒

いよいよ3月。現職として最後の月になりました。いくつか、ご紹介します。

10日(土)は、楽しいクラシックの会が恒例で提供している、錦まつりコンサートです。立川市錦町学習館で14:00から。断続的に続けてきた楽器シリーズ、今年は「トロンボーンっておもしろい!」になりました。箱山芳樹さんとそのお弟子さんたちによる四重奏。楽しい会になりそうです。これに先行して10:00から開く例会では、バッハのオルガン音楽を、新しい映像を中心に取り上げます。

15日(木)はいずみホールのバッハ・オルガン作品連続演奏会の最終回。最終回なので誰かをリピートしようということになり、やはりギエルミさんだろうと衆議一決しました。タイトルは、「オルガンを超えるオルガン音楽」。無伴奏ヴァイオリンからの編曲(BWV539)、トリオ・ソナタの第3番、ヴィヴァルディのコンチェルト編曲(BWV596)、シュープラー・コラール集(カンタータからの編曲)、最後にイ短調のプレリュードとフーガ(BWV543)という親しみやすいプログラムです。私はトリオ・ソナタとシュープラーを楽しみにしていますが、コンチェルトも、最近すばらしいCDをリリースしたギエルミ氏ですので聴き逃せません。

大成功していたオルガン・シリーズを閉じるのは、秋から「バッハ・オルガン作品全曲演奏会」として発展的に再スタートするからです。今回はその節目ですので、芸術監督のクリストフ・ヴォルフ先生が来日し、14日(水)に講演されます。題して「オルガンが中心--バッハの音楽生活を決定づけたあのこと、このこと」。ギエルミ氏も演奏出演される豪華版です(ただし、15日のチケットをお持ちの方以外は申し込み制となります。いずみホールのHPをご覧下さい)。19:00から。ヴォルフ先生、今回は大阪のみの短期滞在となります。

その結果として、私、14日(水)18:00から国立音大小ホールで行われる後期博士課程研究コンサートを聴くことができません。大武彩子さん(ソプラノ)、今野哲也君(作曲)が出演されますので、応援していただければ幸いです。16日(金)の18:30からは、大学院修了者による「新人演奏会」。私の最後の論文指導クラス(オペラ専攻)から、4人出演します。しかしこの日はいずみホールで白井光子さんの日本歌曲コンサートがあり、本当ならばこちらも聴きたいところです。

17日(土)は、都内某所で「卒業生の企画する最終講義」。詳細は2月22日のお知らせをご覧下さい。長くなりました。25日(日)に立川アミューで開かれるモーツァルトのコンサートと月末の朝日カルチャー関連については、別途ご案内します。