思い出のソプラノ2009年08月19日 22時14分21秒

ヒルデガルト・ベーレンスさん、草津で亡くなったんですね。夕刊で知りました。レヴァインとメトロポリタン歌劇場の記念碑的な《リング》は、彼女のブリュンヒルデなくしてはありませんでした。巨人的なブリュンヒルデでなく、女らしさのいきわたる役作りが印象的でした。

今、持っているだけだったDVDに少しずつ目を通しているので、一世代前の歌い手たちと再会します。ベーレンスさんと別の意味でいいソプラノだったなあ、と思うのは、チェコ(スロヴァキア)のガブリエラ・ベニャチコヴァーさん。ジョルダーノの《アンドレア・シェニエ》を見たのですが、全盛期のドミンゴ、カプッチッリにはさまれて、じつにしっとりとした、やさしいマッダレーナを歌っています。

サイトウ・キネン・フェルティバルでヤナーチェクの《イェヌーファ》が上演されたとき、主演した彼女のステージが「イェヌーファ千回目」とアナウンスされ、度肝を抜かれたことを憶えています(百回の間違いじゃないか、と思いました)。千回と言えば、1週間に1回歌っても20年近くかかるわけですよね。世界中の《イェヌーファ》上演に呼ばれていた、ということでしょう。ポップ、グルベローヴァといった後輩に比べると地味な存在かもしれませんが、心のある、いい歌い手でした。