言われてみれば・・・2009年08月29日 21時40分01秒

目からうろこが落ちるといいますか、根本から認識の修正を迫るとてもいい本を最近読みましたので、ご紹介します。小林標著『ラテン語の世界~ローマが残した無限の遺産』という本で、中公新書の一冊、2006年初版です。

ラテン語を学ばれた方は、どなたも、むずかしい、複雑だ、という印象をお持ちではないでしょうか。私もそうで、合理化された近代語に比べると古典語はまことに複雑、じつにむずかしい、と思っていました。

ところが著者は、そうではない、というのですね。ラテン語というのは形式と意味がぴったり符合した言葉で、少しのあいまいさもなく論理的にできている、というのです。たしかに名詞の格や性、動詞の時制の数は多いが、それをいったん憶えてしまえば例外がほとんどなく(たとえば不規則変化の動詞がないので、辞書の巻末にも載っていない)、すべて明確に読める、というのです。

言われてみるとたしかにその通りで、それは気がつかなかったと、脱帽しました。ラテン語は、少ない言葉できちんとした意味を伝えられるということです。シーザーの”veni, vidi, vici.”(来た、見た、勝った)は文中でも引かれている有名な例ですが、「veni」を日本語にきちんと訳すなら、「私は来た」とせざるを得ません。ラテン語の簡潔さ、無駄のなさがきわだっています。そうか、ラテン語の聖書も薄いですもんね。

基礎をきちんと勉強することが大事だとわかり、またやってみようか、という気になってきました。蛇足ですが、CDの解説等に、ラテン語聖書の歌詞の対訳に新共同訳など新しい聖書訳をそのまま当てているものが多いのは、感心しません。ラテン語訳とヘブライ語/ギリシャ語原文は大きく相違していますので、やはりラテン語から直訳すべきだと思います。

(私が読んだ新書、2007年の第4版でした。読む人、多いんですね!)