続・宮崎のキャサリン妃2012年07月23日 23時56分26秒

プログラムは《月光》ソナタ、バッハ=ブラームスの《シャコンヌ》、《展覧会の絵》というものでした。《シャコンヌ》は、最初のリサイタルで採り上げて以来、シムウェルさんのレパートリーになっています。今回、ブゾーニ編曲に挑戦しようかと思ったが、ブラームスの方がずっといいのでブラームスにした、とのお話。同感です。

《シャコンヌ》の原曲は、無伴奏ヴァイオリンです。すなわち、本来は不可能な手段で、オルガン顔負けのポリフォニーを構築しているのがこの曲。聴き手の想像力に訴える分だけ、深いわけです。これに対しブゾーニの編曲は、グランドピアノを駆使して、ヴァイオリンのできないところを全部顕在化しようとしている。華々しいが、奥行きがありません。一方ブラームスは、左手に限定しているためにヴァイオリンの譜面からあまり離れておらず、手段の制約、想像力に訴えるという本質的な部分を残しています。はるかに、バッハを聴いた気持ちがするわけです。

あまり聴く機会のないブラームス編曲ですが、よく弾き込まれていて、起伏と盛り上がりのある、見事な演奏でした。後半、《展覧会の絵》の演奏も、修士論文で取り組まれただけあって、曲想をよくとらえた、絢爛たるもの。ほっそりしたお姿からは考えられないほど思い切りがよく、めりはりが利いているのです。度胸、という言葉を使いたくなりましたが、どちらもリハーサルに比べて格段にテンポが速かったことからしますと、超ハイ・テンションであられたのかもしれません。

というわけですっかり感心し、どうしてこうしたことが可能であるのかを思い巡らせました。想像するに、次のようなことではないかなあ、と。女性は家庭を持つと時間も労力も大幅に割かれ、音楽に集中できない場合が現実には多いと思います。それは音楽にとってマイナスとしか普通には思われないのですが、その安定感がプラスとなって、音楽的に成長するということがあるのではないか。もちろんいつもそううまくはいかないでしょうが、家庭は単なるマイナスではない、という実例が、ここにあるのではないか。恩師の先生(女性)にそう申し上げたところ、自分もそう思う、とおっしゃいました。世の女性を勇気づけることではないか、と思った次第です。

コメント

_ さらさ ― 2012年07月24日 18時55分26秒

懐かしい尊敬する先輩の近況を知ることができて
とても嬉しかったです!
先輩の輝やくような笑顔を懐かしく思い出しました!

_ I招聘教授 ― 2012年07月25日 10時24分39秒

そうか、だいぶ先輩になりますね。貴女もがんばってください。

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