髪型2012年10月21日 13時20分48秒

NHKの「古楽の楽しみ」には、アシスタントが2人ついています。たいへん綿密な作業をしてくださり、うっかり間違いを救われたことが、何度もあります。先週録音に行ったところ、担当者の印象がとても変わっていました。そこで「あれ、髪型を変えられたんですか」とつい言ってしまい、しまったと思いました。

それには、古い記憶があります。大学に勤めたばかりの頃のことですからもう時効としていただきたいのですが、研究室の助手ががらっと髪型を変えてきたときに、「前の方が良かった」と言ってしまったことがあるのです。助手の笑顔が一瞬硬直したかどうかは気づきませんでしたが、多くの人から「それはまずいよ」と言われ、私もずっと気にしたまま、日を送ってきました。

時は過ぎ、世間でも、その手のことで女性が不快に思う話がしばしば語られるようになりました。ですから私も、気がついても気づかぬふりをする、たとえ驚いてもぐっと呑み込む、という人生を続けてきたのです。そうしておられる男性、多いのではありませんか?

こうした反応を身につけて死んでいくつもりでしたが、今回は、うっかり口をついて出てしまいました。ちなみにアシスタントの返答は、私の想定外のものでした。「気がついていただいてありがとうございます」--と彼女は言ったのですが、これって、ひとつの定番なのでしょうか。

巨中戦素人談義2012年10月22日 12時41分32秒

中日の善戦で、クライマックス・シリーズが盛り上がっていますね。でも昨日、第5戦の戦いは、素人目にもまずかったような。阿佐田哲也さん直伝の「ツキの理論」で考えてみたいと思います。

8回裏。4番阿部、5番高橋と左打者の続く巨人のチャンスで中日は左腕の高橋(若手)を投入し、結局2死満塁となって、村田を迎えました。村田は右打者で、しかも高橋に過去5打数4安打。当然右投手に代わると思ったら、権藤コーチは高橋に続投させたのです。私は、とうてい考えられない采配だが、よほど深い考えがあるのだろうか、と思って見ていました。

結局右翼手の美技で事なきを得たのですが、ここで私は、阿佐田さんの教えをありありと思い出したわけです。麻雀で相手がリーチをかけてきた場合、危険牌を切ってそれが通り、「ああ良かった」というのは運が良かったのではない。それは貴重な運を使っているのだ、と。つまり中日は右の力のある投手に手堅く継投すべきで、結果オーライの続投は、貴重なツキを消費したことになる、というのです。

9回表はその高橋からで、代打。なーんだ、それか。9回裏の岩瀬の登板も、理解できませんでしたね。やはり緊迫した大勝負では最善を尽くすべきで、そうして初めて、フォルトゥーナを味方にすることができます。試合後権藤コーチと高木監督がケンカをしたそうですが、命令系統は一本化するのが当然ではないでしょうか。ともあれ、最終戦を楽しみたいと思います。

WINDOWS「8」発売迫る2012年10月23日 23時39分19秒

WINDOWSの新バージョンは、発売されるたびに大きな注目を集めてきました。でも今回は静かですね。「7」が安定した機能を実現しているので、その分、期待感が少ないのでしょうか。

私としても、「7」搭載のエイサーのマシンが十分な性能をもっているので、不自由は感じていません。しかし、「95」の行列に参加して以来、新バージョンを極力その日のうちにゲットする生活を貫いてきましたので、このままやりすごしてしまってはいけないような気がするのです。そこで、「8」プリインストールのマシンの購入を計画しています。

とはいえ、わくわく感が全然ないこともたしか。今までは、新しいマシンを買うたびに、それまで使っていたのを大学の研究室に運んでいました。しかし、複数のマシンをもつ環境にはすでになく、その意味でも、背中を押してくれる理由がありません。パソコン関連雑誌も、めったに買わない最近ですし。これはある意味市場の成熟であろうと思いますが、寂しい気がすることも事実。それだけの進歩はやっぱりあるのか、あまり実感できないのか。正解はどちらなのでしょうか。

ウィーン音楽祭開幕!2012年10月25日 12時22分36秒

24 日、「ウィーン音楽祭 in Osaka」が開幕。今回は新幹線で向かう段階で不思議なほどの気持ちの高ぶりを覚えていたのですが、満員のお客様の拍手が鳴り止まない、すばらしいスタートになりました。おかげさまです。

再招聘したウィーン楽友協会合唱団。メインの曲目はベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》と決め、もう一つ、コンサートを作りたいと思いました。しかしこの合唱団は、ムジークフェラインのステージで、ウィーン・フィルなどのオーケストラの後ろで名曲を担当するのが役割ですから、合唱曲ばかり集めたいかにも合唱団というコンサートは、なじまないのです。逆に合唱団の方から、モーツァルトの《レクイエム》とシューベルトの《ミサ曲第2番》をオルガン版で、という提案をいただき、オルガンを使えるのはありがたいということで、オルガニスト(ロベルト・コヴァーチュさん)の同行をお願いしました。

オルガン版でどこまでアピールできるものか、じつは自信がなかったのですが、意外にも注目が集まり、NHKの映像収録まで入ることに。チケット完売一番乗りという状況でコンサートを迎えることができました。

皆さんアマチュアなのに、ステージに勢揃いしたときの存在感は大したもの。シューベルトが始まって耳を打ったのは、熟成したやわらかい響きと、流れるような音楽性でした。あたかもウィーンという街そのものが歌っているかのようで、一朝一夕には作りようのない響きです。伝統の一部をなすのは、ウィーンがカトリックの風土だということですね。ミサ曲やレクイエムのテキストが、身体の一部になり切っているのです。

この合唱に、日本のソリストたち(半田美和子、井坂恵、望月哲也、若林勉)がすっかり溶け込んでいたのには驚き、また安堵しました。指揮者、アロイス・グラスナーさんの絶妙のご指導があったと伺いました。
大阪城の見えるレストランで歌い手の方々とワインを飲むひとときは楽しいものでしたが、ツキを使いすぎたのではないかと心配です。土曜日の《ミサ・ソレムニス》、まだチケットありますので、どうぞよろしく。

法隆寺2012年10月26日 10時46分04秒

昼間時間が空きましたので、法隆寺を訪れました。「死ぬまでに一度は見ておこう」という、最近の価値観です。奈良はいつも東大寺、若草神社の周辺で、有名な法隆寺には行ったことがなかったのです。

大阪城公園からものの30分少々で、法隆寺駅に着きます。周囲にお店のほとんどない、ひっそりとした駅であることにまずびっくり。法隆寺そのものも想像していたよりシンプルでしたが、時代を考えてみれば当然ですね。展示されている飛鳥時代の文化財など、昔の人の丹精が偲ばれて、すばらしいものでした。

境内を出て、斑鳩神社、法輪寺、法起寺のコースを回ってみました。行き交う人も少なく、じつに伸びやかな一帯。心が広々と安らぎます。いい加減疲れてきたころ、柿の直営販売のお店を発見、120円の大きいのを一つ買い、歩きながら食べました。鐘は鳴りませんでしたが、たいへんおいしく、童心に帰った気持ちになりました。

夜は音楽祭関連のディナー。格式の高いお店だったのですが、食事中気分が悪くなり(←手術の後遺症で脂濃いものがたいていダメなのです)、まことに失礼ながら、途中退席。同席の方々、申し訳ありませんでした。やはり、ツキの総量には限界があるようです。

アンギャン博士講演会2012年10月27日 10時41分50秒

「ウィーン音楽祭 in Osaka」関連の企画、26日(金)は、トーマス・アンギャン博士の講演会でした。題して「ウィーン楽友協会の200年」。通訳は岡本和子さんにお願いしました。

楽友協会のトップとして世界中を飛び回るアンギャンさんですが、音楽祭の際には多忙なスケジュールを割いて必ず数日大阪に滞在され、講演やシンポジウムにも対応してくださいます。堂々たる体格、貴族的な風貌、卓越した指導力と人当たりの良さを兼ね備えた類まれな方で、この方を芸術監督に得たことがこれまでのウィーン音楽祭にはじつに大きな力だったと、実感しています。

よく響くバスの声で行われた講演は、楽友協会の成り立ちから現状に及ぶものでしたが、年間の主催公演が4つの新ホールと合わせて(計6つ)480から500、多い時は土日だけで15、というお話に、まず圧倒されてしまいました。世界のオーケストラを招聘するが、ウィーンにしばらく住んでもらい、チクルスの形でコンサートを開くのが、相互にメリットがあるとか。この6月にはバレンボイムとベルリン・シュターツカペレが11日間をかけ、ブルックナーの交響曲全曲とモーツァルトのピアノ協奏曲5曲を演奏したのが、その一例とのことでした。う~ん、目の回るようなお話ですね。

もうひとつ興味深かったのは、未来の聴衆を育てるために、子供たちのための特別コンサートを年間150回も開いている、ということ。世代を分け、それによって内容を変えるなど、さまざまな工夫をこらしているそうです。どんなプログラムを提供しているのか興味がありましたが、たとえばモーツァルトやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を1つの楽章だけ、というやり方をするそうで、名曲への啓蒙がポリシーとなっている、と受け止めました。

イベント的性格をもつ大衆的なプログラムも提供しているが、娯楽的なプログラムとシリアスなプログラムの違いはお客様がよくわかっていることで、前者に傾きすぎないようにバランスに注意している、というお話にも共感しました。

公演後は客席からたくさんの質問が出て、時間の区切りに苦労するほど。講演者への、何よりのはなむけです。今日は4時から、期待の《ミサ・ソレムニス》。この音楽祭を継続したい気持ちが日毎に強まり、困っています。

白熱の《ミサ・ソレムニス》2012年10月29日 13時18分10秒

4日間大阪に滞在したあと、日曜日は須坂を往復。疲れの出ているこの月曜日です。

27日(土)の、ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》。この曲に接したのは大学生の頃だったと思いますが(クレンペラーのレコード)、とりつく島がないようなむずかしさを感じました。雑誌で宇野功芳先生の「わからなくてもいいから、宝としてとにかく聴くべし」というお考えに接し、なるほどと実践していたのがその頃でした。

しかし、《ロ短調ミサ曲》を身近に思える年代に達した今、《ミサ・ソレムニス》のすばらしさには、目を見張る思いがします。この曲をさまざまな指揮者のもとで歌い込み、つい十日前にウィーン交響楽団とやってきたという楽友協会合唱団が歌っただけに、なおさらです。後陣に屏風のように並んで確然とした歌声を発する合唱団を、アルミンクさんが意欲満々で指揮。響きはときに怒濤のようで、メリハリも十分でした。

先発のソリスト、櫻田亮さんの「キリエ」第一声に鳥肌。櫻田さんも、それから加納悦子さんも、いずみホール初登場だったのですね。正確な技術と楽譜の深い読みに支えられた加納さんの歌唱は芸術的な色香さえ漂って、まさに神品の趣。その〈アグヌス・デイ〉を聴きながら、1月の《ロ短調ミサ曲》の感動を、まざまざと思い起こしました。その他、語り尽くせませんが、熱演してくださった皆様、そしてお客様、ありがとうございました。

打ち上げもありませんので、白熱の盛り上がりで沸き立ったホールから、皆さん、どんどん散っていかれます。これが音楽家の日常なのですね。ウィーンとのパイプは、やはり大事にしていくつもりです。

今月のCD2012年10月30日 22時53分06秒

毎日新聞に連載しているCD選。今月から形が変わり、「特選盤」1枚を選ぶようになりました。ちょっととまどっています。なぜなら、従来は「3選」でしたので、メジャーなもののほかに、目立たないいいものを含めることができたからです。しかし言及は可能ですから、少ない字数ではありますが、なるべく目を向けてゆくつもりです。

今月はたくさんの新譜がありましたが、ピアノの数が多く、いい演奏が集まっているように思えました。そこでピアノから特選盤を選び、他のいくつかにも言及する、という作戦を立てました。

アンスネス&マーラー・チェン-バー・オケによるベートーヴェンの協奏曲第1番、第3番と、シフの《平均律》第1巻、第2巻の新録音。どちらを特選盤にするか迷った末、アンスネスを選びました。彼の弾き振りで、オーケストラとのコラボレーションが、じつにみごとにできているのです。ピアノと各楽器のこのように密度高くはつらつとした連携は、指揮者を置かない演奏形態においてこそ、十全に追求できるものです。古典派のコンチェルトは、こうありたいものです。

シフの《平均律》はさすがに立派。横綱相撲ともいうべきものですね。12月の「古楽の楽しみ」で取り上げましょう。ポリーニのショパン《24の前奏曲》は熟した味わいがよく、スドビンというロシア人奏者のスカルラッティ・ソナタ集も、じつに面白いと思いました。日本人では、佐藤彦大さんの骨太な音楽に注目したいと思います。

ウィーン音楽祭11月2012年10月31日 22時01分13秒

「ウィーン音楽祭 in Osaka」、あと5公演あります。

11月3日(土)は、スーパースターの庄司紗矢香さんが、ジャンルカ・カシオーリのピアノで、ベートーヴェンの《スプリング》、ヤナーチェクとドビュッシーのソナタ、シューベルトの幻想曲を演奏されます。チケット、残りわずかと聞いています。土曜日は普通16時からですが、この日は祭日なので14時からとなっています。お間違いなく。

6日(火)は、ラドゥ・ルプーのオール・シューベルト・プログラム(19:00から)。ルプーはアンギャンさんの一番好きなピアニストの1人だそうで、ウィーンでのリサイタルもすばらしかった、とおっしゃっていました。これも残りわずかだそうです。めったに聴けないという意味でも、お薦めのコンサートです。

10日(土)は、マーラーの《大地の歌》+ピアノ四重奏曲。ソロは藤村実穂子さん、福井敬さんという豪華版です。シェーンベルク/リームの室内オーケストラ用編曲版というのにひっかかる方もおられるかと思いますが、この編曲はすばらしいもので、大事な音は全部聞こえてきますし、声楽がよく生かされて、いずみホール程度の規模で演奏するには最適。クオリティの高いいずみシンフォニエッタが、金聖響さんの指揮で演奏します。あ、これは16時からです。

14日(水)は、ウィーンの味わいをよく伝えるウィーン弦楽四重奏団のコンサートです(19:00から)。ハイドンの《鳥》、ベートーヴェンの第16番、シューベルトの《死と乙女》というプログラム。25日(日)14:00からのラスト・コンサートは、ユベール・スダーン指揮の大阪フィルで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番と、シューベルトのグレート・シンフォニー。ソリストは若手のインゴルフ・ヴンダーです。《グレート》による締めくくりは、楽友協会200年にふさわしいと思います。

最後の日が学会と重なっているほかは、私も足を運ぶつもりです。会場でお目にかかりますので、どうぞ声をおかけください。