カウントダウン1--清くやさしい乙女から2009年06月13日 23時17分06秒

武蔵野音大での学会。今野哲也君、落ち着いた立派な発表でした。高度に専門的な内容のプレゼンテーションがよく整理されていて、国立音大の評価にも貢献してくれたと思います。

ピアノで試奏される《トリスタン》の和音を聴きながら、ワーグナーの和声はなんと美しいのだろうと瞑想。昔柴田南雄先生のところで和声を習っていたとき、よくワーグナーの分析の課題が出たのですが、この1音がなければ説明できるのに、というようなところが多かったのを思い出します。響きはまったく明瞭で表情に富んでいるのに、理屈で説明しようとするとうまくいかず、学者がいろいろな説を出して100年以上も論争している。芸術と学問の関係の、ひとつの典型でしょう。

学会を途中で抜け出して、橋本へ。すっかり準備のできた、しかし音楽家は誰もいない杜のホールで、字幕の確認と手直しをしました。第1部の最後のコラール合唱曲の「清くやさしい乙女から 私たちのために誕生された」のところへ来ると、私はいつも感動を覚えます。明日、この箇所をどんな気持ちで聴くことになるのでしょうか。

今回は2つのグループの峻別が重要なコンセプトなので、第1グループ、第2グループ、両グループ合同の3つを、3種のフォントで区別するように工夫してみました。字幕の操作をしてくださるのは、国音の卒業生で、私の「歌曲作品研究」を受講していた方だそうです。さあ明日。出演者の皆さん、がんばりましょう。